サイトウユウヤは1982年宮城県生まれ。米国オクラホマ州立セントラルオクラホマ大学を卒業後、現在は横浜を拠点に制作活動しています。
湾曲した支持体を彩るポップなグラフィティ。平面や垂直に逆らうように躍動する面が力強い印象を与えながらも、軽やかな蛍光色やスプレーの明るい色合いが瞬発力を感じさせます。
静と動が同居したような独特な作品のテーマとなるのは「都市」。そこにはどんな意図が込められているのでしょうか。
ⒸPepper
サイトウユウヤ Yuya Saito |
Drop_Model_CLB_Model_Yuya Saito× Masaki Adachi
Drop_CLB_Model_Yuya Saito× Tomoya Kato
ストリートから受けた影響
14歳の時に始めたスケートボードは、サイトウユウヤ作品のルーツ。
ストリートやスケートボードに貼られたステッカーなど印刷物からインスピレーションを受け、作品の支持体である木材に自身が描いた絵を印刷する「ラッププリント」という技法で制作されています。
そこに描かれているのは、グラフィティ、街に点在する看板や監視カメラ、日本語のオノマトペなど。
道を滑り抜けていく時の五感を揺さぶる動的な感覚と、日々あらゆる物事が発生しては消えていく都市の混沌とした様相が、平面的な画面の中に落とし込まれています。
伝統的な「曲木」の上で、2Dと3Dが交錯する
最初は作品に平面の木材を使用していましたが、ストリートスポーツの要素を反映しながらも、伝統的な技法である「曲木」を取り入れるようになります。
当初から描かれているグラフィティに加え、金箔や3Dモデリングを取り入れたり、ほかのアーティストとのコラボレーションも展開するなど、更なる進化を遂げています。
流動的な都市という土台の上で、伝統が継承されつつ時代に合わせて形を変えていくように、
2Dと3Dの入り混じる作品は、次に起こりうる新しい何かの気配が表現されているのです。
都市が内包する予測不可能なもの
2011年の東日本大震災では、サイトウの故郷である宮城県で津波によって被災したことで、人と都市の関わりについて考えなおす契機となりました。
スケートボードの上から見える都市の姿は混沌とし、破壊と創造が繰り返されて常に混乱しています。
しかしサイトウユウヤは、過密で、不安定で、常に問題が発生する都市が、人間の文化創造に対する欲求を掻き立てる一面もあると考えています。
都市はこれまで幾度も天災に直面し、今もまた「感染症」という新たな天災が起こっています。
人間の暮らしとは切り離せない「都市」をテーマに据え、災害と共存する中で、人々が共に生き、文化を創造し、試行錯誤し続ける力を信じて制作しています。
2022年4月12日(火)-5月2日(月)
営業時間:11:00-20:00
*最終日は17時close、他,館の営業時間に準ずる
入場無料
会場:阪急MEN’S TOKYO タグボート
〒100-8488 東京都千代田区有楽町2-5-1 阪急MEN’S TOKYO 7F
これから米国に拠点を移すサイトウユウヤにとって、個展「Curving City」は渡米前最後の日本での個展となります。是非ご高覧ください。
サイトウユウヤ Yuya Saito |