東京のアートウィークが終わって10日が経った。
各地でアートフェアの宴は盛大に行われ、マーケットは活況であったと言ってよいだろう。
まん防という行動規制があった時期ではあるものの、結果として多くのアートファンが一堂に集まることに何ら問題は発生しなかったようだ。
いま欧米では新型コロナウィルスに対する見方は変化し、行動規制やマスク規制が解除されただけでなく、イギリスやスウェーデンでは日毎の感染者数のカウントさえやらなくなっている。
そのような情勢の中で、いまだに鎖国政策をとる日本の経済も周回遅れに気付いてから挽回策を考え始めるのかもしれない。
さて、将来が不安視される日本経済ではあるが、アート市場の中で確実に進んでいる変化のきざしがある。
アフターコロナにおいては、以下の二つの潮流は確実に進んでいくだろうと予想される。
1.NFTを含めてアートの購入方法が多岐に広がる
2.アートのエンタテインメント化、イベント化が進む
1.NFTを含めてアートの購入方法が多岐に広がる
今回、タグボートではアートフェアの会場に来られた方全員がネットを通じて作品を購入することとなった。
ネットでアートを買うことが初めての人も多くいたと思われるが、現物の作品を見た後は通常の通販手続きと変わるところはないので、特に混乱もなく進めることができた。
もちろんネットでアートを購入することに慣れていない顧客には個別対応をとったのだが、ネット通販の常態化が進めば誰もが問題なく買えるようになるだろう。
顧客からしても遠方から足を運んで作品を見て買う必要がなくなり、空いた時間をうまく活用してアートコレクションをすることがあたりまえの時代になりつつあると思われる。
もちろん、デジタルで作られたアート作品を買うときには、NFTという購入方法が常識的になっていくだろう。
これまでは、コピーガードの付いたDVD等で販売するしかなかったデジタルアートであるが、NFTの技術が進むにつれて、デジタル作品を作るアーティストも増えるだろうし、それを購入する層も拡大するだろう。
一方で、販売するギャラリーもオンラインでの販売を増やすことで、様々な顧客のデータを収集することができるようになる。
顧客別の嗜好をデータ分析することで、市場の変化に対し柔軟な作品提供が可能になるということだ。
いずれにしてもアート販売がオンライン、オフラインの境なく多方面に広がるトレンドは間違いない。
2.アートのエンタテインメント化、イベント化が進む
アートフェアには行くが、ギャラリー巡りはしないという人が増えている。
これはコレクターにとって作品を効率的に購入するという目的があれば理にかなったやり方だ。
アートフェアに出展するギャラリーは最も推したいアーティストの作品を出品するので、最初から価値が上がりやすいアーティストの作品を買うことができるメリットもあるのだ。
また、アートフェアにはトークショーやインパクトの高い作品を見せる場としてのエンタテインメント的な魅力もあり、そこで集まってくるアート関係者、コレクターとの横のつながりの獲得や情報交換的なメリットもある。
個別にギャラリーを訪問することで得られるコツコツとした情報の積み重ねが、アートフェアで短時間に実現できることは魅力的だ。
また、ギャラリー側としてもなかなかギャラリーには来てくれない新規顧客に会えるのでアートフェアのようなイベントに売り上げも偏りがちになるだろう。
この傾向はこれからも広がるであろうし、エンタテインメント性を兼ねたイベント的な盛り上がりにコレクターが移っていくと考えられる。
アートは高尚なもので専門的な知識がないと買いづらい商品というイメージから、だれもが楽しめる商品へと変わっていく段階でその傾向は強くなるだろう。
このようにアフターコロナを見据えたギャラリーやアートフェア主催者のこれからの動きは要注目であり、将来の日本のアート市場が継続して活気づけられるかどうかの試金石にもなると思われる。