コレクターが作品を買う場合、一般的にはその購入金額の50%程度がギャラリーから作家に支払われることとなる。
例えば、10万円の作品を購入すると、その50%の5万円が作家の方にいくことになるのだ。
作家はギャラリー経由で受け取ったお金をどのように使っても自由だろう。
しかしコレクター心理としてはそのお金を通じて作家が生活をし、アーティストとして成長してほしいと願うのだ。
作品購入はある意味でアーティストに対する投資や社会貢献に近いものであり、お金の一部が作家の将来のために役だっていると思いたいものだ。
作品を購入後もアーティストが成長して売れ続けるようになると、当然作品の価値は上がってくる。
つまり、将来的に稼げるアーティストに投資をする気持ちで作品を買うというのはコレクター心理としては理にかなっているのだ。
さて、アーティストが稼げるようになるということは一般的にはかなりハードルが高いと言えよう。
日本だと自称アーティストも含めると、作品を販売するだけで十分食べていける作家は千人に1人くらいだ。
これはつまり、よい作品を作っているだけでは売れるわけではないということを意味する。
トップクラスの美術大学に入学して優秀な成績で卒業した後大学院まで進みながら、各種の公募展で入賞したとしても、「食べていける人」であるかどうかはまったくの別問題だ。
作品を制作するだけでなく、アーティストがもつ知識、ノウハウ、あるいは人の繋がりといったことを総動員して作品がを売れる状態を作れなければ稼げるアーティストになるのは難しい。
作るだけで販売に興味がないアーティストの稼ぎ出す力はかなり弱いと言ってよいだろう。
いくら作品がよくても、所属するギャラリーのプロモーション力やギャラリーの持つ顧客層が作品に合致しなければ売れる可能性は制限されてしまう。
作品を好んで買ってくれる顧客を多く持つギャラリーに所属することがなければ、ずっと売れることがないということだ。
そうなってくると、運命を取り扱いギャラリーの販売力だけに任せることなく、自らの力で切り開く、起業家的な精神を持たなければならない。
では、そのような起業家的なアーティストとして稼げるようになるためにはどうしたらよいのだろう。
その方法を以下のとおり考えてみよう。
作家自身が作りたい作品のうち顧客が欲しいものとが一致してはじめて売り上げにつながるのだ。
つまり、作家がいくら独自の世界観で作品を作ってもそこに需要がなければ、それは趣味で作品を作っているのと変わらない。
両者が交わる部分、つまり売り上げを増やすためには2つの方法がある。
1)あえて顧客の望む作品を作る
2)なるべく多くの顧客に作品を見せて交わる部分を増やす
顧客の望む作品を作るのはデザインやイラストレーションであり、アート作品とは違うのではないかと反論する人もいるだろう。
しかしながら、多くの稼げるアーティストは顧客からのコミッションワーク(受注制作)を請け負っている場合が多いのは事実だ。
また、顧客が欲しがる作品と自分が作りたい作品を熟考したうえで、ある程度の妥協点を見つけながら作品を作るというのも一つの手だ。
この作品だったら多くの顧客に受け入れられるという「鉄板作品」で日銭を稼ぐ一方、そのお金で自分が本当に作りたいチャレンジングな作品を作るというのはアーティストとして賢明な生き方だ。
とは言いながらも、その日銭を稼ぐための「鉄板作品」がない場合はどうしたらよいだろう。
そのためにはたくさんの作品でチャレンジし、たくさん失敗しないといけない。
売れる作品を掘り当てるまで掘り続けるのだ。
ここで必要なのは圧倒的な行動量である。
壁にぶつかっても、次こそは売れる作品へと変化させ続けなければ、作品が売れる勘所さえも分からないままだ。
アーティストは考えながら制作すべきであり、考えてからで動くのでは遅い。
なるべく早く顧客の望む鉄板作品を見つけ、それを売る一方で自分の作りたい作品をも作る、そういったプロフェッショナルな考え方が稼げるアーティストとなるのだろう。