豊田涼介は2001 年神奈川県生まれ。多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻に在学中。Independent Tokyo 2021にて準グランプリを受賞し、シェル美術賞2021に入選するなど、若手ながらも既に確立され始めた独自の表現に着実に評価が高まっています。
身体と精神の関係性から、アナログとデジタル、意識と無意識、自然と人工、実像と虚像、創造と破壊、主観と客観など二元性のあるものをその両方の視点で捉え、それらが溶け合うような作品を目指しています。
豊田涼介 Ryosuke Toyoda |
相反するふたつの視点
木材、セメント、補修用パテなど、様々性質を持つものを組み合わせる豊田涼介。
そこで表現されているものは 「対立するものの融合」だといいます。
2次元の絵画と、3次元の物質。
自然と人工。創造と破壊。実像と虚像。
異なる素材の組み合わせが、相反する要素の不協和音に重なります。
過去への憧れを抱く写真
シェル美術賞2021 入選作品 「Damaged canvas -陳列棚-」
素材にプロジェクターで写真や映像を映し出し、その光を捉えて描いたり、掘ったりする手法で制作しています。
作品に使われる写真は、主に作家自身が行った先で撮影したもの。
昔らしさを感じさせる写真が好きだといい、黒やセピア色に写真を変換して作品に取り入れています。
現在の時間を写した写真を過去の写真のように加工して捉えなおすことで、
「今」の景色でありながらも「遠い昔」であるかのように錯覚させる、不思議な視覚的効果を生みます。
そして、写真を「描く」という行為を通して、
キャンバスを鉛筆で傷つけている作家自身、そして人工物であるモチーフや、その犠牲になっている地球上の自然などの上を、主観と客観が行き来します。
それによって作家は全く異なるそれぞれの視点をひとつの作品に取り入れたいと考えているのです。
人工的な素材は人間の欲望の塊
廃材を使った2つのシリーズ「Disruption」と「Plain Conposition」。
作家は、自然から生まれた木でありながら、人間の手を加えられた合板という素材に「人間の欲望と残酷さを感じる」といいます。
合板を作品の中で削ったり傷つけたりしながら、再びその素材の中に人間の都合によって同居させられた「破壊」と「創造」について問い直します。
「Plain Conposition」では、支持体である合板に写真を投影して絵を描き、ノミで彫り、パテやセメントで埋めてその上から研磨しています。
「Disruption」では、更にその上から彫刻刀などで破壊する行為を加えています。
写真を合板に投影して描いている間は、それが「木」であることを忘れ、そこに「彫る」作業を加えることで再び「木」の存在を思い出しているといいます。
画面の中に破壊と創造が同時に存在した作品は、見るたびに、現代の生活の中で奇妙に混在している物事について思い起こさせます。
豊田涼介 Ryosuke Toyoda |
2001 年神奈川県生まれ。
多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻3年在学中
平面的な写真と立体的な素材本来の性質をあわせ持つ。対立するものの両方の視点で物事を捉え、それらが溶け合う世界を作っている。物事の本質、核とは何かを探っている。
展示
2021 Independent Tokyo 2021
受賞歴
Independent Tokyo 2021 準グランプリ
シェル美術賞展2021 入選