豊田涼介は2001 年神奈川県生まれ。多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻3年在学中。
平面的な写真をプロジェクターに移して支持体に写し取り、様々な素材を組み合わせたり削り取ったりする作品を制作しています。
それぞれの素材を使うことに込められた意味や、自然と人工の世界を対比する鋭い着眼点。
独自の制作方法の秘密について迫ります。
豊田涼介 Ryosuke Toyoda |
ー絵を描き始めたのはいつ頃ですか?きっかけはありましたか?
幼い頃から絵は好きで描いていましたが、小中学校時代は漫画のキャラクターなどイラストが多かったです。
小学生の頃は絵以外にも粘土で遊ぶのが好きで毎日やっていました。
大学の専攻である油絵を初めて描いたのは高校1年生の美術の授業で、すごく楽しかったのを覚えています。
ーアーティストを目指そうと思ったのはいつ頃ですか?きっかけはなんですか?
小学校時代から絵を描くことを仕事にしようとは思っていました。そのころは漫画家やイラストレーターに興味があって、あまりアートには関心がありませんでした。
美術大学の進学を考えた時、一番自由だと聞いていたので専攻を油画にしました。それがきっかけで現代美術に触れることができ、その世界の素晴らしさと生きる上でどれだけ大切な分野なのかを知ることができました。
現代美術について知れば知るほど日常の些細な美しいものに目がいくようになり、人生が豊かになるような気がしました。そんな経験をもっとたくさんの人に共有したいと思いアーティストで生きていくと決めました。
ー作風が確立するまでの経緯を教えてください。
大学一年の頃はずっと具象的な油絵を描いていました。そこからだんだん油絵具の素材感に着目するようになり、違う素材で絵画を描きたいという思いから木材を使い出したのが今に繋がっています。
ですが、作風が確立したとは思っていません。もっと色々な素材に挑戦したいですし、まだまだ吸収するべきことが多すぎるのでこれからも変化していきたいと思います。
自分が表現したいことの一貫性はあるのでそこはブレずに制作したいです。
ー作品を発表し始めたのは何時頃ですか?発表するまでにどういった経緯がありましたか?
初めて発表したのは2021年8月に行われたIndependent Tokyo 2021です。
それまでの制作では実験的な作品が多く、あまり人に見せるものではないと思っていました。
ですがこの頃から少しずつ自分の表現したいことが見えてきたので、たくさんのアーティストと並列して自分を見れる良い機会だと思い挑戦しました。
とても刺激になる2日間でした。
ーアーティストステートメントについて語ってください。
プロジェクターを使って画像を素材に映し出し転写しています。そこには絵画を描いている意識はなく、ただ与えられた場所をなぞっています。
塗る、掘る、擦る。人間の身体を効率の悪い印刷機として扱い、自らをそのほかの素材や道具と同等の位置に置いています。ものを使い、ものに使われながら制作しているのです。
「もの」としての「人間」とは何か、ということを常に問いかけています。
絵画を描く時、個人的な感覚や思考を排除し、個性を必要としない労働の中に身を置くことで、人間の共通項や人間の中の自然を確認しています。
人間だけに与えられた想像力によって出現する写真や映像などの精神世界を、自然が作り出したロボットの視点で身体世界に投影しています。
もの(身体)とイメージ(精神)の関係性から、アナログとデジタル、意識と無意識、自然と人工、実像と虚像、創造と破壊、主観と客観など二元性のあるものをその両方の視点で捉え、それらが溶け合うような作品を目指しています。
ー作品はどうやって作っていますか?技法について教えてください。
素材にプロジェクターで写真や映像を映し出し、その光を捉えて描いたり、掘ったりする手法を用いています。
木材、セメント、補修用パテなど様々な素材を使い、素材の性質に多くを委ねています。
最近では素材に油絵具など他の描画材を取り入れたり、実験的に制作しています。
ー作品制作で困難な点や苦労する点を教えてください。
根気のいる仕事なので、途中で集中力が切れないように一気に仕上げることが多いです。
また木を掘るときはそれなりの力が必要なので、後半になると疲れてきて最初の方とは違う表情が出ます。
その時に本当の自分の人間性が出たような気がして嬉しい気持ちになります。
不本意な部分が出ないと納得のいく作品にならないような気がします。
ー今後の制作において挑戦したいことや意識していきたいことを教えてください。
まだまだやるべき事も、やりたい事も沢山あるので日々奮闘していきます。
作品に関してはもっといろいろな素材を使ったり、違う表現媒体にも挑戦したいです。
自分の周りの自然や日常に目を向けて、もっと柔軟に自由に制作していきたいです。
豊田涼介 Ryosuke Toyoda |
2001 年神奈川県生まれ。
多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻3年在学中
平面的な写真と立体的な素材本来の性質をあわせ持つ。対立するものの両方の視点で物事を捉え、それらが溶け合う世界を作っている。物事の本質、核とは何かを探っている。
展示
2021 Independent Tokyo 2021
受賞歴
Independent Tokyo 2021 準グランプリ
シェル美術賞展2021 入選