前回はアートの購入時における節税対策についてお話をした。
今回も船山会計事務所の船山雅史氏の監修を頂き、その購入したアートを売却するときにどのような節税メリットがあるかについて見てみよう。
アートの売却で出た利益への課税
アートを買ったときの価格に比べて売却して利益が出た場合に、法人と個人では利益(=所得)に対する税率は違う。
課税される税率は「所得」つまり「収入-経費」から計算されるのだが、中小企業の法人であれば所得に対し最大34%程度の法人税その他の税金を払わなければならない。
これは所得が800万円を超えた中小企業の場合であり、所得が少ない企業の税率は少し低い。
これに対し、個人が持っている作品を売却した場合は、法人税ではなく所得税となる。
個人の場合は、所得に対して5%~45%と7段階の累進課税制度をとっているため、税率の幅は法人より大きいこととなる。
より所得の多い人はその分課税率も高くなるのだ。これ以外に所得の約10%の住民税もある。
なお、個人が30万円 を超えた作品を売却した場合には課税されるが、30万円未満で作品を売却する場合は非課税となるのだ。
アートは総合課税
せっかくアートが高く売れたとしても、こんなに税金を取られるのであればあまり嬉しくはないだろう。
しかしながら、1点30万円を超えるアートは、生活に通常必要でない資産としてとらえられて、ゴルフ会員権、競走馬、貴金属等と同じく「総合課税」の対象となる。
給与所得など、他の所得と合算した課税所得に、所得税の税率をかけて所得税額を算出する課税方式で、原則として確定申告が必要である。
税率は課税所得が多いほど高くなる累進課税方式が採用されているので、合計した所得が多ければそれだけ税額も高くなるのだ。
一方、株式、投資信託、債券や土地、建物などの資産を売却して得た利益は、他の所得とは分離して独自の税率で課税する分離課税となり、アート作品の総合課税とは違う。
総合課税の特別控除をうまく使う
総合課税には、特別控除額50万円がある。
購入してから5年以内であれば、アートを売って得た利益から最大50万円までが特別控除として引かれ、残った金額に課税される。
つまり売却益が50万円ちょうどであれば、一切課税されることがないのだ。
さらにアートの購入から5年超で売却した場合、特別控除の50万円を差し引いた金額のさらに半分の金額に課税されるので、利益が多い場合は5年を超えたところで売却した方がよい。
例えば、50万円で購入した作品を5年以内に160万円で売った場合、売却益は110万円であるが、そこから50万円の特別控除を差し引いた60万円に課税される。
しかし5年を超えると60万円の半分の30万円へと課税所得が減るということだ。
ただし、この購入時の価格も前回のように、30万円未満の作品で少額減価償却資産の特例で一括償却したり、100万円未満の作品を8年で減価償却する場合には、償却後の帳簿価額を取得原価とされるので、売却益は大きくなってしまう。
例えば、個人の青色申告事業主が事業用に25万円で買った作品を少額減価償却資産の特例で一括償却して必要経費として費用計上すれば、経理上の帳簿価額はゼロになる。
これを75万円で売った場合の利益は見かけでは75万円-25万円=50万円なのだが、購入後に一括償却して価値がゼロになってるので75万円-0円=75万円が売却益となり、そこから特別控除50万円が引かれて25万円が課税されることになる。
このようにアート作品は総合課税となり、給与などの収入と合算されて税金を払うのだが、50万円を上限とした特別控除を使うメリットがあるし、購入後5年を経過すれば、特別控除後の課税額も半分となるのだ。
なお、一定の課税価格を超えると、この他に償却資産税が課税されることにも留意しておく必要がある。
このように、アートをコレクションする場合には購入時にも売却時にも節税対策が可能だ。
上手に節税しながらアートを買うのは非常に賢いやり方である。
3月6日、7日にはタグボートが主催するアートフェア「TAGBOAT ART FAIR」が開催される。
61名のアーティストの個展が1,530㎡の会場で開催され、トータルで1,000点以上の作品を見て購入することができる。
税制をうまく使うことで個人でも法人でも節税ができるだけでなく、価値が上がる作品を物色する楽しみもあるのだ。
是非この機会に、アートに触れてその楽しみを感じて頂きたい。
こちらのコラムを読まれた方の特典として、以下から無料招待券を獲得できるのでご応募頂ければと思う。
【タグボートアートフェア特設サイト】
http://www.tagboat.com/artevent/tagboat-art-fair2021/