世界大不況で株式市場も混乱するのか
先日のニュースで今年4-6月の主要国GDPの落ち込みはリーマンショックをはるかに超えており、コロナパニックによる消費行動の低下はこれまでにない酷いことになりそうだ。
この状況は数か月程度で終わりそうにもなく、7-9月で回復する兆しはまったく見えないまま不況は長引くだろう。
投資家の予測よりも経済停滞が長引いて、上場企業の資金に深刻な影響があるとすれば、いったん持ち直したように見える株式市場も状況が一変する可能性がある。
米国や日本で、3月にコロナ禍で下降した株価が4月以降に持ち直したが、それは以下の4つの状況があるからだろうと思われる。
1)国が財政出動させて休業補償(ドイツ、英国などはロックダウン期間の休業補償が手厚く長期にわたる)をすることで、収入不足を緩和できる
2)廃業せざるをえない飲食、エンタメなどは中小企業がほとんどであり、一方資金に余裕のある大企業は廃業となったお店のシェアを奪い取ることで、ある程度持ち堪えて回復できる
3)コロナ禍さえ過ぎれば黒字化が可能な大手であれば、資金不足にも銀行からの貸付が可能
4)米国のGAFAなどの巨大企業はコロナ期にITの活用が早まることで逆に売上が上がっており、シェアを広げている
以上の理由で上場企業の株価は平静を保っているが、それはコロナパニックによる需要減が半年くらいで収まると見ているからであり、これからの政府のまずい対応や消費者需要の低下が続けば株価が大きく下落する可能性がある。
特に日本はGAFAのような企業がない中でここまで株価が高いのは、日本銀行やGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が国内株を買い支えているというのもあるだろう。
今言えることは、現在の株価はいつ急降下するか分からない状況だということだ。
※GAFAとはGoogle、Apple、Facebook、Amazonの巨大IT4社のの略称
アートギャラリーのこれから
アート業界、特にギャラリーはほとんど全部といっていいくらい中小零細企業ばかりである。
不況期間が長期になった場合に資金的に厳しくなるところばかりだ。
現在の状況が半年以上続けば廃業となるギャラリーも出てくるかと思われるが、実はギャラリーは他の小売店と比較すると事業形態が違うことからしぶとく生き残れる可能性が高いのだ。
ギャラリーの事業形態は不況期にも細く長く存続できるように固定費が他の小売りより少なくてすむことにメリットがある。
ほとんどのギャラリーは作家からの委託販売なので仕入れに資金が必要ないこと、場所が通常の小売りの家賃より低く抑えられること、販売用の人件費が最小で済むということから、長期間売り上げが低くても維持可能な業態なのだ。
そもそもこれまでもギャラリーに来る人も少なかったこと、プロモーション費用もわずかで、展覧会の作家次第で毎月の売上に大きく差が出る業態だからこそ不況期にも強いということだ。
逆にギャラリーでネットの活用や効果的なITの導入がほとんどない状態で現在も持ち堪えているのであれば、今後はそこを強化することで伸び代はあるかと思われる。
とは言いながら、あまりに不況が長引くと耐えきれないギャラリーも出てくるだろう。
欧米では企業買収という形でメガギャラリーが中小企業を吸収することも出てくるかもしれない。
アートは不況期に強い投資
以下のチャートを見て頂きたい。
紫のグラフがS&P(スタンダード&プアーズ)500という米国の格付機関が選んだ500社の株価の状況である。
2008年9月にはリーマンショックを受け、そこから株価は一気に低下していることが分かるかと思う。
それに対して黄色のグラフで示している現代アートの価格(ここではオークション落札価)はリーマンショックとほぼ同じ時期に値を下げることとなったが、その後の価格の戻しが早いことがわかるだろう。
株価の動きはGAFAなどのIT株に引っ張られてやっと10年かけてアートの価格に追いつくことになっているが、ここで言えることは、アートは不況からの回復が早いということだ。
つまり、アートは株式などの投資商品と比較すると、数字で論理的に将来価値が示されるものとは違い、長期的な作家の将来性にかける視点で購入するものだ。
不況期には高い成長を示す数字が見られない事業会社に投資するよりも、長期で期待できるアートの投資が選択肢として出てくるということだ。
不動産もアート同様に株価の影響をもろに受けるのであるが、不動産は株価の追随という形で分かりやすく価格の下落や上昇が遅れてやってくるものとなっている。
以下の東京都の公示地価の価格と平均株価の推移を見れば明らかであるが、地価は株価に対して1、2年遅れでそのトレンドを追っている。
アートは不況期に株価とほぼ同時期に下がるのは土地のように売買に時間がかからないからだとも言えよう。
ということは、株価が下がるタイミングがアートの買いのタイミングであり、仕込みの時期であるということだ。
オークションなどで一喜一憂するよりも、長期的な視点でプライマリー(一次販売)から質のよい作品を早い段階で仕込む時期であると覚えておこう。
リーマンショックの真っ最中にiPhoneが生まれ、Slack、Airbnb、Uber、Pinterestといったユニコーン企業が創業したときもそのときなのだ。