ビルは取り壊しが決まると、あとは解体されるのを待つというのが一般的ですが、その解体までの期間をどのように活かしたらよいかという課題があります。
せっかくなのでその空間をアーティスト向けに解放することで、制作のアトリエ、展示空間の広さといった様々な制約からも解放されてもの作りに取り組んでほしいという願いをタグボートは持っています。
しかしながら、我々にとって重要なのは、展示スペースと場所です。
廃ビルであればどこを使ってもよいという訳ではありません。
アクセスが良く誰でも分かる場所であることが条件となります。
郊外の場所は人が来にくいので論外ですし、都心でも人りの多い一等地でないとふらっと立ち寄ってはくれないからです。
というわけで、タグボートは前回開催した代官山テノハもそうですが、展示をする場所には徹底的にこだわりたいと思ってます。
そうしないと、よく地方で開催されているなんちゃらビエンナーレ、トリエンナーレのように、国からの補助金頼みの運営とならざるをえません。
広い場所は確保できても人が来ないので、プロモーション費用がバカ高くなってしまうので自力では運営できないのでどうしても公的な費用負担が必要となるのです。
そうなると当たり前ですが、様々なめんどくさい制約に則った展示にせざるを得なくなってしまいます。
タグボートはそのような公的な制約に縛られることを避け、場所にこだわることでプロモーションコストを少なくするというハードルを越えたアート解放区を作っていってます。
1月15日に銀座髙木ビルで開催されるアート解放区は約5ヶ月の会期に展示内容が毎月ガラッと変わることが特徴となっています。
あの東京ディズニーランドでさえ、新しいアトラクションを毎回入れ替えていくことでリピート顧客を取り込んでいるのに、それと比べるとコンテンツの量で劣り、エンタテイメント性も弱いアート展示は、内容を随時変化させることで何度も来てもらう仕組みを作るしかありません。
銀座髙木ビルには50年以上前の古い写真スタジオを利用した映像ルームを3階に、5階にはテノハ代官山で展示された作品を移設したグループ展を行います。
さらに6階、7階は壁画やインスタレーション中心、というように階別に展示内容が分けられています。
さて、このような取り壊しビルにアートをコラボさせる運営にてもっとも重要なのは、ビル側の人のアートへのリスペクトです。
これがないと、ビルに絵を描いてもらうだけのデザインとしての位置づけとなってしまい、アーティストの意識が上がらずにあまり面白くない展示となってしまいます。
またアーティストに自由度と裁量を与えることで、そこから創造されるものを楽しむという余裕を持ってもらわなければなりません。
伸び伸びとした環境から素晴らしいアートは生まれるのであり、解き放たれたときにアーティストは輝くのです。
ニューヨークではアーティストに対する理解が深くリスペクトが高いので、アーティストの住む場所は人気が高くなり、地価も上がります。
以前コラムに書いたように、ニューヨークではアーティストの住む場所がソーホー、チェルシー、ロウア―・イーストサイド、ブルックリンと移動していくと、それに連らるようにギャラリーが生まれ、カフェやファッションブランドのショップができて、土地としての付加価値が高まっています。
いまだ日本でアーティストが住む場所の付加価値が高まらないのは、アーティストに対するリスペクトが低いからであり、そこが十分に啓蒙されれば状況は少しずつ変わっていくでしょう。
さて、銀座髙木ビルはアートの展示だけでなく、2月くらいから1階部分にカフェもできるそうです。
このカフェスペースはタグボートは全く関与していないので、具体的にいつどのような店が開店するのかも分かりませんが、アートを見た後にカフェでひと休みできる空間があるのは魅力的です。
あと、タグボートの今回のプロジェクト名はアート解放区ですが、髙木ビル全体の再生プロジェクト名は「CANBIRTH」といい、その大部分がアート解放区というしつらえになっています。
取り壊しが終わったあとに建設されるビルがBIRTHというコワーキングスペースとオフィスビルの両面を持つ建物となる予定なので、再生、誕生の意味のBIRTHと、アーティストが描くキャンバスとをひっかけてCANBIRTHとなったようです。
取り壊し前の建物をキャンバスに見立ててアーティストがそこに描いていくことから、CABIRTHというネーミングのようです。
さて、銀座髙木ビルでの楽しみ方の一つとして、タグボートのウェブサイトで販売している作品を直に見ることがあるというのがあります。
サイト上の画像と比べるとホンモノとは全く違う味わいがあることに改めて気づくことがあります。
逆に銀座髙木ビルで見た作品を後ほどウェブサイトから購入できるのも魅力です。
阪急メンズ東京7Fにあるタグボートのギャラリーは銀座髙木ビルから徒歩5分のところにあり、銀座をぶらぶらしながらアートのハシゴもよいかもしれません。
約5カ月間楽しめる企画を作っていきますので、是非ふらっとお立ち寄りください。
アーティストが楽園とした場所をお楽しみいただけます。