米国最大のアートフェアがアートバーゼル・マイアミビーチである。
スイスのアートバーゼルが米国のマーケットへ拡大するために2002年に始まったアートフェアだ。
厳選された250ギャラリーが出展しており、約70,000人が来場する一大イベントとなっている。
会期中には、サテライトとなるアートフェアとしてArt Miami、VOLTA、SCOPE、NADAも開催されている。
毎日あちこちでパーティーが開催されており、アートファンはマイアミにこの時期に来れば色んなことが楽しめる。
ただ少し気になったのが、来場者数だ。
今年のアートバーゼル香港が88,000人の来場者があり入場ゲートは長蛇の列だったのだが、それと比べるとマイアミは半分もいないように感じた。
成長するアジアのほうが圧倒的に熱気があり、展示している作品のクオリティも香港とマイアミではほぼ差がない現状を目の当たりにした。
わざわざ米国までアートを買いに来ている中国人をあまり見なかったので、おそらく彼らは香港で買っているのだろう。
米国で買っても置いておく保税倉庫がなく、直接中国に持ち込むときの税金が高いこともあると思われる。
いずれにしても、アートフェアを見るだけならわざわざマイアミまで行くまでもなく、香港だけでも十分かもしれない。
しかしながら、香港とマイアミの最も大きな違いは個人コレクターの展示スペースにある。
Marglies コレクション、De la Cruzコレクション、最後にRubell Family コレクションをみたが、これが圧巻のサイズと品揃えで、完全に美術館クラスであった。
サイズは5メートルをはるかに超えるペインティングや、インスタレーションが多く、自宅には入らないため、個人が倉庫を一棟丸ごと借りたり、そのための美術館を作ってコレクションの一部を展示している。
マイアミはアートフェアよりもコレクション展を見る方が断然面白い。
コレクターは優秀なアドバイザリーとキュレーターを使って素晴らしい作品を蒐集しており、それを一般の人にも公開しているところに米国の懐の深さを感じる。
せっかくコレクションした作品を倉庫の中に眠らせるのではなく、多くの目に触れさせることの重要性を米国のコレクターは知っているのだ。
さて、展示されているコレクションに対して、誰が何を買ったのかといった興味本位で見ている鑑賞者は少ない印象だった。
ほとんどのコレクションは、立体、写真、映像、インスタレーションと多岐にわたっており、現代アート史を俯瞰的に見れる美術館的な役割だ。
Rubell Family コレクションはその質と量において完全にミュージアム仕様となっており、一般の美術館よりもはるかに見ごたえがある。
例えば草間彌生のミラールームなど普通であれば購入をするという考えに至らなさそうな作品もコレクションとして2つも入っており、一般に開放して見てもらうことを前提として買っているのだ。
購入した作品を自宅に飾って家族だけで楽しむのではなく、公に出すことで評価を得ようと考えているのであろう。
これ見よがしにお金があることの自慢を目的としておらず、歴史的に重要となるアートを一般にも開放することが彼らにとっては重要な責務なのだ。
つまりアートは世間に見せたほうが価値が上がることをも知っているということであり、多くの目にさらされることで作品の評価が出来上がっていくという本質を理解しているコレクターが多いことがわかる。
やはりアートはなるべく多くの大衆に見せることが大切であり、それなしには文化形成も対外的な価値も得ることがない。
オンラインとオフラインの両軸で作品を徹底的に見せることで対外的な評価を実現していくというのがこれからの我々にとっても重要な戦略となることを改めて痛感させられた。
さて今回の出張を経て、どのようなことが現地での成功に必要なことであるかを考えてみた。
ご興味ある方は以下の「ニューヨークとマイアミで学んだこと ーその3-を見ていただきたいと思う。