昨年あたりになってようやく日本でもアートのスタートアップ企業が動き出している。
米国で現代アートのスタートアップが始動したのが2012年くらいからなので、5年遅れで日本にもアート系のスタートアップが出始めたということだ。
ご存知のとおり、米国で最も有名なのがアートのスタートアップがArtsyという会社。
すでに上場をしているArtnet.comというアート情報会社をしのぐほどの規模にまで成長している。
本拠地はニューヨークで、これまで外部調達した金額は100億円を超える。
株主の顔ぶれがすごい。Twitter共同創業者のジャック・ドーシー、Paypal創業者のピーター・ティール、元Google CEOのエリック・シュミットなどの著名人から、世界最大のギャラリーGagosianのオーナーであるラリー・ガゴシアンなど、錚々たる面々が資本参加している。
Artsyのウェブサイトにギャラリーが登録する作品の数は30万点を超え、その中にはかなり高額な作品もあるのが特徴だ。
ただし、サイト上で直接作品を買えるECではない。ウェブ上に有料登録したギャラリーとコレクターをつなぐプラットフォームであり、ギャラリストとアートコレクター、またはArtsyを介して交渉がオンラインで可能になっている。
ただし、実際にどれだけ各ギャラリーがArtsyを通して売上となったかは定かではない。
現在は世界中で開催される著名なアートフェアをほぼネットワークのようにつないでおり、そのネットワークの中から多くのギャラリー参加者を募っている。
2017年4月には、アートに特化したアドバイスサービスの会社であるArtAdvisor.Incを買収するなどArtsyは積極的な動きを続けている。
Artsyはスマホで簡単に世界でもトップ級の作品と出会えることが他のサイトと比較した最も大きな特徴だろう。
とはいえ、以前よりも参加ギャラリーの数は減ったと言われる。
参加ギャラリーの数に比例した問合せの数が増えてはおらず、費用対効果を得られないギャラリーがあることの表しているのかもしれない。
とはいえ、Artsyは今度はSnark.artというブロックチェーンに強みを持つ技術会社とのアライアンスを行うなど強気の姿勢は崩さない。
今が旬で盛り上がっているアート × ブロックチェーンについては、Artsyのようにメガギャラリーや大手のオークションハウス、アートフェアと提携している会社にSnark.artが参入することで業界がどう変わっていくか楽しみだ。
一方、米国を始めグローバルのオンラインアート販売は市場全体ではまだ規模は小さいものの、成長分野となっている。
HISCOXのレポートによると、2018年には約5000億円と、 これまで毎年10-15%も伸びている状況だ。
ヨーロッパ美術財団(TEFAF)はオンラインアート販売の動向について、こう見解を示している。
既存のディーラーは新しいテクノロジーの導入は消極的で、保守的なギャラリーやディーラーの20%はオンラインに移行するつもりはないとのこと。対照的に若いコレクターやミレニアル世代はスマホを使いこなし、アートやラグジュアリー製品をオンラインで購入することに慣れている。
現在オンライン市場は全体として伸びてはいるものの、ビジネスモデルが上手くいかない場合は失敗する可能性も十分にあるといえる。しかし、アート事業にとってネット販売の潜在的な可能性については疑う余地はないだろう。
さて、今度は日本に目を向けてみると、現在は認識しているだけで7社のアートのスタートアップ企業がある。
7社のスタートアップにはそれぞれ特長があるが、共通している長所と課題があるように思われる。
7社のすべての紹介と、その課題については次のアートのスタートアップが動き始めた(その2)にて詳しく説明していきたいと思う。