VIP PREVIEW開催中は会場限定販売となりますので、
VIP PREVIEWにご参加を希望される方は、下記のGoogle Formよりお申込みをお願いいたします。
絵筆を持たなかった時間のこと
松山蒼は、絵を描く人としてはちょっと不思議な経歴を持っている。
大学で美術を学んだあと、彼は約10年間、絵から離れていた。
実家の製造業を手伝いながら、日々の忙しさの中で絵筆は遠ざかっていった。
だが、彼の中にはずっと何かが残っていた。「もう一度描いてみよう」と思ったのは2020年。
最初で最後になってもいい、そんな気持ちで筆を取ったという。
けれど、10年の空白は決して無駄ではなかった。
その間、彼はたくさんの映画を観て、漫画を読み、他の作家の作品に触れた。
映画『ディア・ハンター』の戦争と友情の物語、手塚治虫の社会派漫画、浮世絵の力強い線。
すべてが、彼の中にゆっくりと沈んで、後に出てくる作品の栄養となったのだ。
彼の絵には、まるで映画のワンシーンのような情景がある。
登場人物たちは何かの物語を背負っていて、ただ立っているだけでも、過去や未来が透けて見える。
これは、長い時間をかけて育てた目と心が描かせるものなのかもしれない。
スプレーと線で描かれる「誰かの背景」
松山の絵を見て、まず感じるのは「かっこよさ」である。
スタイリッシュな色づかい、くっきりとした輪郭、そしてどこか切迫したような空気。
彼は筆だけではなく、スプレーとマスキングテープという道具を使って絵を描く。
まるで模型を作るかのように、細かく計算して、背景や人物の影を塗り分けていく。
工業高校で学んだデザインの技術、製造業で培ったCADのスキル。
そうした現実的な「作る力」が、彼の画面の中に秩序と緊張感をもたらしている。背景に散りばめられたエンブレムは、ただの飾りではない。
それは、登場人物たちの「所属」を示している。
まるで軍隊の徽章、あるいは企業のロゴのように、それぞれが属する組織や団体を象徴しているのだ。
その背後に何があるのか? どんな指令を受け、どんな信念を持ち、どこに向かおうとしているのか?
絵を見る側は、そうした想像をかき立てられる。彼の絵は、見た目がきれいなだけではなく、観る人に「考えさせる力」を持っている。
セリフのない物語が心に響く
松山の作品には、しばしば人物の「セリフ」が題名として添えられている。
また、彼の絵は、「説明されすぎていない」。そこが魅力である。
観る人の中に、記憶や感情の引き出しがポンと開くような仕掛けがある。誰もが何かの「組織」に所属して生きている現代において、松山の絵に出てくる人物たちは、自分自身の分身にも見えてくる。
組織に属することで得る力もあれば、失っていく自由もある。その緊張感が、絵の中で静かに燃えているのだ。
今後、彼はSFや地球外生命体をテーマにした作品にも挑戦していきたいという。
すでに「自分の型」ができているからこそ、その型の中で新しい試みに向かえる。
製造業での「金型」づくりのように、松山は絵の世界でも型を使って何千通りもの変化を試みている。
その誠実な試行錯誤の先に、観る者をワクワクさせる未来が待っているだろう。
もし、日常にひとつだけ映画のようなシーンを飾るなら、松山蒼の作品はその最良の選択肢である。
静かで、深くて、美しい。部屋に飾ることで、自分自身の物語にも光が射すかもしれない。
Schedule
Public View
4/19 (sat) 11:00 – 19:00
4/20 (sun) 11:00 – 17:00
|
|
|