アーティストの持っている才能を開花させ、それを多くの人に届けるという作業こそがプロデュースだ。
つまり、ギャラリーがプロデュースをする場合には、ア
文章にすると簡単なように思えるが、実は難易度は高く、素人がちょっと努力したからといって出来るものではないのだ。
いわゆるマネジメントとプロデュースとは意味が違う。
作品の制作を展覧会の会期に合わせてスケジュールを組む、キャンバスなどの画材発注など制作コストの管理、制作モチベーションの維持といったところがアーティストのマネジメントであり、プロデュースとは意味合いが違う。
事業会社でいうならば、プロデュースとはマーケティング施策全般を言い、マネジメントとはバックオフィス的な管理業務だ。
従い、マネジメントがしっかりしていたとしても、それでアーティストの作品が売れることはない。
どちらかというと、売れたときにしっかりとしたバックアップ体制をとるためにマネジメントが必要なのだ。
プロデュースとは一時的に作品が売れることが目的ではなく、長期的に作品が売れ続ける仕組みを作ることであり、そのために綿密にマーケティング戦略を作りこんでいく必要がある。
具体的に、ギャラリーが行うべきプロデュースとはどんなことかを示していきたいと思う。
1. 展示企画・運営
ギャラリーはアーティストの個展やグループ展を企画し、彼らの
展示のコンセプト作りや展示方法
2. 広報
アーティストの知名度を上げるために、ギャラリーは広報活動を
SNSやプレスリリース、メールマガジン、などを使って、アー
また、展示会やイベントに
3. 作品の販売支援
ギャラリーはアーティストの作品を販売する役割を担う。適
ギャラリーのネットワークを活か
4. キャリア戦略のアドバイス
アーティストが長期的に成長できるよう、ギャラリーはキャリア
どのような作品を制作すべきか、どのようなイベ
5. 業界へのつなぎ役
ギャラリーはアーティストと業界の他のプロフェッショナル(美
6. 作品の評価とブランディング
ギャラリーはアーティストの作品がどのように評価されるべきか、
アーティストがギャラリーを経由せずにセルフプロデュースを行う場合、上記のようなサポートを得ることができないので様々な課題を自身で解決しないといけなくなる。
特に、マーケティングに関する知識やスキル不足は深刻だ。
アートを作ることと、それを販売することは異なるスキルセットを必要とするので、アーティストは自らブランドを構築し、効果的に自身の作品を宣伝しなければならない。
多くのアーティストはマーケティングや広報のスキルを持っていないため、潜在的な顧客やファンに作品を届けることが難しいのだ。
これらの課題を克服するために、アーティストがマーケティングやビジネスの知識を身につけること、専門家のアドバイスを受けること、そして自己のブランドを育てていく勉強が必要となることを知っておいたほうがよい。
そうでなければ、後でとんでもないギャラリーと付き合うことになっても、そういった業者の問題点が分からないし指摘するスキルも持てないのだ。
さて、よくアーティストが「自分のファンや顧客のことは自分が一番よく知っている」と嘯くことがあるが、それはほぼ実態が見えてないと思ってよいだろう。
顧客のニーズは第三者の目を通してきちんと分析することが必要だ。
自分の作りたい作品さえ制作できていれば、自然とファンが増えていくなんて夢物語は現実にはありえない。
アーティストをプロデュースするには、常に顧客の動向を見て、彼らから直接の声を聴くことが重要だ。
顧客のニーズの範疇で自分がやりたいこと、できることを選別する戦略を立てないと顧客は増えないし、そうしないと継続して販売できるかどうかはおぼつかない。
アーティストをマネジメントするだけなら、家族や知り合いに頼めばやってくれるのだが、売るためにはプロデュース能力が必要であることを理解しなければならないのだ。
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