さて、サラリーマンとして働きながら安定収入があった人にとって、仕事をやめてアート販売だけで食べていく方法をつかむのはハードルが高いだろう。
アーティストは月次で決まったお金をもらえるものではなく、さらに作品を作っても売れなければコストだけがかかってしまうからだ。
売れてなんぼの世界であり、売れない作品を作り続けることは時間の浪費と取られてもしょうがない。
つまりニーズのある作品しか売れないのであり、世の中が必要としているかどうかを意識して作品を作らなければ売れることはない。
あえて厳しい言い方になるが、好きなものだけ作って食べていけることはありえない。「アートの売り上げとは何か」を一言でいうと、作家が「作りたいもの」と、世の中の「ニーズ」が交じり合う部分でしか作品は売れないのだ。
世の中にニーズがあるからといって、自分の作りたくないものを作ってはいけない。やりたくないことを続けるとモチベーションも下がるし、制作する気持ちが疲弊してしまうからだ。
アーティストが継続して売れるようになるには、上記の「やりたいこと」、「できること」、「望まれること」3つの重なる部分をどのように増やすかが絶対に必要となる。
作りたいものはあるけど、どうしても世の中のニーズと合わないと嘆くアーティストも出てくるだろう。
解決する方法としては、世の中のニーズを広範囲で捉えることと、自分が作りたい作品の幅を広げて考えることだ。
作りたいものだけを作って、いつか誰かが認めてくれると考えるのは前近代的な思想であり、今のこの情報化社会において、2,3年で才能が開花されなければその後も認められることはないだろう。
ゴッホの時代と違って、出る杭はすぐに見つかる時代となっているということを我々は気付かなければならない。
とは言いながら、アーティストは日々制作に追われていると、世の中がどのようなものを欲しているか(ここが一番難しいのだが)を正しく把握するアンテナと、自分自身が本当は何をしたいのかを問い直す時間がないのが事実だ。
アーティストのキャリアを成功させるためには、日々の制作活動と同時に、マーケットのニーズを常に意識しながら、自己の創作意欲とのバランスを取ることが重要である。これにより、長期的なキャリアと安定した収入を得るための基盤が築かれるのである。