「分かる人にだけ分かればよい」といった古い体質のギャラリーはまだまだ日本には多い。
しかし、現代アートの大衆化を否定する業者は今後、没落の一途を辿ることになるであろう。
現代アートは過去から現在に至るまで、常に大衆化に向けて進化してきた。このトレンドを覆すことはできないのだ。
アートというものは難解でインテリ層にしか理解できないものとする感覚は、もはや完全に時代遅れである。
ピカソやアンディ・ウォーホルなど、時代に革命を起こしたアーティストたちも、アートの大衆化の流れに乗っていたことは明白である。
アートは一部の王侯貴族が嗜む特権的な趣味であった時代から、少しずつ誰でも楽しめるものへと進化している。
この動きは今や不可逆的なのだ。
この変化に対応せず、「分かる人にだけ分かればよい」という姿勢の業者は完全に時代遅れであり、やがて淘汰される運命にある。
多くのファンを獲得することが市場のすそ野の拡大につながっているのであり、アートの大衆化に成功すれば、持続的に購入者数が増え続けることを我々は理解しなければならない。
アートの大衆化は加速している
例えば、現在タグボートで個展を開催しているMika Pikazoは、この大衆化の象徴的な存在であろう。
彼女は120万人のX(旧Twitter)のフォロワーを持ち、その作品は分かりやすい絵柄と壮大なストーリー仕立ての世界観で、多くのファンを魅了している。
個展は初日から大盛況で、すでに1万人以上の来場者を記録している。その多くが20代前後の若者であり、この層がMika Pikazoの人気を支えているのである。
オタクカルチャーに染まったイラストファンも多くいるが、平成生まれの若者から見れば、そのほとんどがオタクカルチャーの経験者なのだ。
オタクカルチャーを包含する分かりやすい大衆的なアートが勃興する一方で、日本の美術業界では、アーティストや美大生が時折、わざと難解な言葉で作品のコンセプトを説明しようとすることが見受けられる。
しかし、正直言って、分かりにくいコンセプトで売れ続けているアーティストなど、これまで見たことがない。
コンセプトを明確にすることは、アーティストにとって必須の仕事であり、作品を見ただけで理解してもらえると勘違いしているアーティストは、その考えを改める必要がある。
頭の悪い著者が書く本には業界用語やカタカナ英語が多用されていることがよくあるが、読者にはとっつきにくい。
一方、知性の高い著者が書く本は極めて素人にも分かりやすく書かれており、すっきりと頭に入りやすい。
この当たり前の理論が理解されずに、国内の美術業界では分かりくい作品解説が依然としてはびこっているのは嘆かわしいことである。
アーティストが分かりやすい文章を書けないなら、それをギャラリーのような業者が、大衆向けに書かなければならないのだ。
今後のアートは、大衆をもターゲットにしなければ存続が厳しくなるだろう。
そうしないと、マーケット全体の拡大にも繋がらないことを我々は認識すべきだ。アートは他の商品とは違う特別なものである、という勘違いをしている業者は早晩駆逐されるだろう。
しかしながら、運営コストが少なくて済むギャラリーという業態では、そのような業者がいつまでも存続することがありえるのだ。
このような状況を変えるためには、大胆な世代交代が必要であり、それは政治の世界だけでなく、アートの世界でも急務であると感じている。
Mika Pikazoのようなアーティストが示すように、アートの大衆化はすでに進行しており、その流れは今後も加速していくだろう。
アートを理解し、楽しむ層が広がることで、アート市場全体も活性化し、より多様な作品が生まれることが期待される。
アートの未来は、もはや一部の特権層だけのものではなく、全ての人々に開かれたものであるべきなのだ。
Mika Pikazoをはじめ、トレンドとなるアーティストに多く参加してもらったtagboat Art Fairでの販売作品は以下から販売中となります。
https://www.tagboat.com/artevent/tagboatartfair2024/