先週末のアートフェアについて
4月26-28日はtagboat Art Fairが開催された。
ポートシティ竹芝の2フロア、3000平米のホールで、94名のアーティストの個展形式による1300点のアートの展示販売だ。
今回のアートフェアがこれまでと違ったのは、タグボート初登場のアーティストが18名出展されたことで、新たな風が吹いた形となった。
HARUNA SHIKATA、Mika Pikazo、サカイケイタ、澁谷忠臣、ジョーンズ美月、田中幹希、ももえ、山内駿之介、渡部真衣、オカユウリ、Kouといったゲストアーティスト11名の他、会場未発表のタグボートのアーティストとして、Itabamoe、NAGMO、手島領、南村杞憂、土ケ端優子、リッチマン・フィニアン、MONの7名の新しいアーティストを取りそろえた。
新しいアーティストを選ぶタグボートのこだわりとして、原宿界隈で増えているギャラリーの萌え系イラストアートとは明らかに一線を画すようなアーティストをセレクトしたつもりだ。
つまり、過去の著名なイラストレーターや漫画家のオマージュのような作風ではなく、現代社会を反映したオリジナリティの高いアーティストばかりをスカウトしている。
もちろん今っぽい作品だけではなく、映像、インスタレーションなどのコンセプチュアルアートの作家も積極的に招聘して展示した。
こういった新しい取り組みを増やすことで、作品販売点数は昨年と比較しても大幅に増える結果となった。
新しいアーティストを拡大して作品が新しくなったことで、若い来場者が増えて、顧客の平均年齢は見るからに下がることになった。
アートフェア東京のような年配者を中心とした来場者とは明らかな違いだ。
しかも、来場者における購入率は10%と高く、知り合いの作家に会いに来る顧客だけではなく、購入を目的として来られている人が増えていった。
これは見るだけではなく、買うということの意義を理解しているアートファンが拡大していることを意味している。
特にアートフェア会場でも圧倒的な人気で常に人が一杯だったのだが、Mika Pikazoのブースだ。
Mika Pikazoは、その個展「Under Voyger」を5月10日からタグボートの人形町のギャラリーで開催する予定だ。
【展覧会ページ】 http://tagboat.co.jp/mikapikazo-undervoyager/
今回は、平面作品だけではなくて、映像、インスタレーションなど多彩な世界観で来場者を魅了してくれることになる。
イラスト業界ではフォロワー数が120万人と最も人気が高く、昨年の原宿での個展では35,000人を動員したMika Pikazoが現代アートのフィールドでどのような騒動を起こしてくれるかを想像すると期待は膨らむばかりだ。
作品の事前抽選は近日始まるので、ぜひ上記の展覧会ページをチェックして頂きたい。
さて、今回のtagboat Art Fairの新たな取り組みとしては、初日のプレビューで招待客に夕方から会場でシャンパンを振る舞うなど、日本のアートフェアではあまりされないような試みも行った。
どうしても日本の場合は、別会場で集まってパーティーをすることがほとんどだ。
海外の一流アートフェアでは会場内で招待客にアルコールを振る舞うことは割りと一般的であるし、そういったカジュアルな習慣を日本のアートマーケットに根付かせたいという狙いもある。
その他、アーティスト・トークを3回開催したり、毎日ブース・ツアーをするなど、来場されたお客様を飽きさせない取り組みも増やした。
来年は会場内で音楽を取り入れるなど、メリハリをつけたエンタテイメントにもチャレンジしたいと考えている。
作品が顧客を変え、顧客がギャラリーを変える
今回のtagboat Art Fairを開催して感じたことであるが、新しい品揃えをすることで、新しい顧客を呼び込むことができるという法則があることが分かった。
新しいものを求めて来る顧客には、会場やオンラインなどでストレスなく最も買いやすいシステムを提供し、気軽にアート購入の体験の場となることに注力していきたい。
ウェブだけではなく、実際に来て頂いて、見て、感じてもらうことの力は大きい。
新しい顧客の反応や動向を知ることは、我々のような業者にとっての長期的な戦略に重要な指針となるのだ。
購入者のトレンドを短期的な尺度で捉えるのではなく、海外のトレンドを意識しながらも多彩な品揃えと買いやすさを長期的視野で追求していきたいと思っている。
アートフェアはたった3日間のイベントではあるが、ここに多くのことが凝縮されており、その密度をより濃いものとするために、来年はさらに新規のアーティストを取り入れて、既存と合わせてブラッシュアップをさせていくつもりだ。