2023年は前年と比較すると、コロナ禍におけるプチバブルが弾けた影響を受けて、国内全体のアート市場は前年比25%ほど縮小したと言われている。
オークション市場で高騰した作品はこれまでのような高価格での落札が難しくなっており、購入者よりも出品者のほうが圧倒的に増えていると聞く。
そういう中で、今年のアート市場がどのように推移していくかについて独自の予測を立ててみようと思う。
金融マーケットの影響
様々な要因が複雑に組み合わさってアート市場は構築されるのだが、その中でも特に金融マーケットの流れとある程度リンクすることは過去の経験から間違いのない事実である。
つまり、証券市場が活況なときには株式を持つ富裕層が資産の含み益をもとにアートの購入が増えるという理論だ。
年始の国内の証券市場は、NISAを始める人の増加で証券関連銘柄への期待が高まっているほか、決算が好調だった小売関連銘柄に買い注文が集まったこともあり、日経平均株価は平成バブル以降33年ぶりの高値となっている。
株価と景気とはかならずしも繋がらず、一般の方の生活に株価の影響は少ないというのが日本の実態であるとはいえ、その効果が全くないわけではない。
また、アートのコレクター予備軍となりえる人はある程度資金に余力のある人であり、さらに日本には保有資産が十分にあり、且つその投資先に迷っている富裕層は山ほどいるのだ。
そういう意味では、株式市況が上昇基調にある日本のアート市場が今年は拡大する可能性は十分にあると言えよう。
しかしながら、日本では資産家の大多数が「アートは資産になりえない」と信じているのが現状であり、その認識の差が欧米との圧倒的な市場の格差となっている。
さらには、日本がそれ以外の国と大きく違うのが金融資産を持つ富裕層が高齢者に偏っている点だ。
高齢層はいくらお金に余裕があってとしても、現代アートの購入にすぐにつながるわけではない。年をとればどうしても考えが保守的となり、現代アートのようなぱっと見では分かりにくい商品を購入することは少ないだろう。
好奇心が強く新たなチャレンジをする若年層にお金が行き渡りにくいのが日本の社会なので、金融マーケットが好況であっても現代アート市場の拡大にはすぐにつながりにくいかもしれない。
こういった社会の仕組みは、65歳以上の高齢者が全人口の30%に近い日本ではなかなか壊せるものではない。
高齢者よりも若年層がより生活資金的に有利になる政策がとられる可能性があれば、証券市場の拡大がアート市場の拡大に大きく寄与できるようになるのかもしれない。
NISAの施策が株式市場に大きな影響を与えたように、どんどん税金が増えていく日本では、アートの売買で得た利益を非課税にすることが出来れば、もっとアートを買う人が増えるだろう。
中国頼みの販売戦略には限界が来ている
これまで国内のアート市場が脆弱であったことで、多くのコマーシャルギャラリーがアジアのアートフェアに出展し、特に中国の顧客に依存した販売に力を注いできた。
その販売の頂点であった時期にちょうどコロナ禍が始まり、ゼロコロナ施策を遂行した中国の経済が停滞したことで大きな痛手を受けた。
中国のアート市場はここ3年で縮小を余儀なくされ、その余韻はいまだ続いている状況だ。
従い、コロナ禍初期には日本のギャラリーは海外を一時的にあきらめて、国内の新規市場の開拓に向かうしかなかった。
そこで、アート初心者がイラストアートといった分かりやすい分野に特化した形で購入が拡大しプチバブルが起こったのだ。
つまり、日本の新規市場をあきらめるのはまだ早く、コロナ禍で海外のアートフェアに行けなかったときに多くのギャラリーが国内シフトをすることで市場を形成できた実績があることを、我々は振り返るべきだ。
日本のアート市場が拡大するにはこれからアートを買い始める30-40代の層をターゲットに、資産を築いていくためのポートフォリオの一つとしてアートを活用することが必要であることを説く啓蒙活動があることを痛切に感じる。
さて、大丸東京では、本日から始まるタグボートの今年最初のアートフェアでは取り扱い43アーティストの作品約500点を販売する「tagboat ART SHOW」を開催する。
こちらが本日開催されるオープニングの招待である。
開催期間:2024年1月17日(水)~23日(火)
営業時間:午前10時~午後8時
*1月17日(水)は午後5時から11階催事場にお入りいただけるのはご招待のお客様のみとなります。
*最終日は1階は午後8時閉場、11階は午後5時閉場となります。
〒100-6701 東京都千代田区丸の内1-9-1
オンライン販売:2024年1月17日(水)午後9時より販売開始いたします。