タグボートが目指すビジョンの中に「アーティストを支援すること」があり、それは事業の中核に据えるようになってきている。
アーティスト支援といってもそれはお金を無償で与えることではない。
また、アーティストにエールの気持ちを送るだけではアーティストは食べていくことはできない。
実際に作品を販売することでアーティストを支援するということである。
アーティストが創造する世界を作るために、そこに金銭を介した市場を作り、それによってアーティストが生活できる環境ができるのだ。
所属するアーティストの作品を独占販売する権利を主張するようなギャラリーというのがある。
独占販売するなら、アーティストの作品をすべて買い取るか、または月額の制作費を与える必要があるだろう。
また常に完売できるくらいギャラリーが販売力を持っているならまだしも、展覧会でさほど売る力がないギャラリーではアーティストは独占販売に応じるべきでないと思う。
アーティストはなるべく多くの販売できるチャンスを持つべきであるし、ギャラリー側の都合によってアーティストの活動範囲を狭めることは許されることではない。
というのは、アーティストが自身の作品を販売して得たお金だけで生活をするのは、かなり難しいからだ。
作品をギャラリーで展示するだけで満足してしまい、そこで販売が思うようにいかなくても納得しているアーティストがいる。
その数は決して少なくないはずだ。
確かにアーティストにとって作品を見せることは重要であるが、それはあくまで手段であり本来の目的はその作品を売ることである。
つまり、作品が展示されなくても最終的に販売につながることのほうがプロフェッショナルとしては重要なのだ。
現在のようにインターネットが生活の隅々まで浸透している世界では、作品を見せることも、現実とバーチャルとの組み合わせで成り立っている。
つまり実際に見てもらうのとネットで見ることの両方を含めて、アートファンに作品を見てもらう時間帯を増やさなければ売り上げにはつながらないのだ。
このような動きは国土が広い国では実際の店舗に行くのに時間がかかるためネット通販での作品販売率が高くなる。
すでに米国や中国においてはインターネット上でのアートのシェア争いが熾烈になりつつあるのだ。
世界トップのギャラリーであるガゴシアンも現在では当たり前のように店内で展示作品をオンライン上で販売する方へと手を伸ばしている。
実店舗を持つギャラリーがオンライン販売をし始めるのは従来からの流れではあるが、現在はAmazonのようにオンラインをメインとしていた会社が実店舗を持つことでマルチチャンネルの対応ができるようになっている。
これは実店舗から見ると脅威であろう。
つまりAmazonは顧客との接点を拡充することで、いつでもどこでも使えて、オンラインだけではできないような実体験をリアル店舗で行う「場」を提供しているのだ。
さて話は少し道に逸れたが、我々が一人でも多くのアーティストが食べていける未来を作るには、とにかく一人でも多く作品を見てもらい、且つ一枚でも多く作品を買ってもらうことにある。
そこに我々がこだわる理由は、「創造する」という仕事が重要であり、そこでは合理的でビジネスライクな考え方が通用しないアートならではの新しい世界を開いてくれるからだ。
確かにアートがなくても人は生活できるだろうし、何も困ることはないだろう。
しかしながら、これまで見たこともない新しいクリエイティブは我々をワクワクさせるし、閉そく感のある社会を分かりやすく解いてくれるアートが世の中の起爆剤になるかもしれないと思っているのだ。
本来人間はこのような「創造」をする生き物として生まれたにも関わらず、そのような活動を職業として従事できている人が少ないのが事実であり、そこを打ち破らないといけない。
アーティストを支援することは創造する人を増やすことであり、そのためにはアートにお金を支払った人にも最終的な利益が出ることで、すべてのプレイヤーがWIN-WINになりマーケットが拡大していくのだ。
このような理想郷を作り上げることは簡単なことではない。
すでにある程度の市場を作っている米国の事例や、成長著しい中国の事例を見ていくとともに、それが日本の市場でどのように適用できるかを考えていかなければならない。
最終的には、日本のアーティストが食べていけるためには、欧米を超えるアート市場を目指すくらいの処方箋を書くと同時にそれを実践的に行動していくしかないのである。
道は険しいが、それだけにやり甲斐もあり、とにかく前進していきたいと思う。
今後も我々はアーティストが食べていける未来図を作り、そこに行くまでの道筋をこちらのコラムの中で伝えることで、多くの人とビジョンを共有していきたいと考えている。