タグボートが取り扱いをしたアーティストの数はこれまでで3200人に及ぶのだが、そのうちタグボートが直接取り扱いをする所属アーティストはここ3年で一気に数を増やしたことでついに100名を超えた。
日本にあるギャラリーの中で、現在作品の販売可能な所属アーティストの数としてはかなり多い方だろう。
もちろんこれは、オンラインをメインとしているギャラリーだからこそ出来ることではある。
展示スペースはリアルな空間以外に、インターネットのバーチャルな空間で24時間365日販売が可能だからだ。
来年以降はさらに取り扱いアーティストのクオリティアップと幅を広げていきたいと思う。
さて、今回はあらためて、タグボートの取り扱い作品の過去の変遷についてお話をしたい。
タグボートは今から15年前の2003年に海外の著名作家の版画作品を取り扱うことからビジネスがスタートした。
版画であればリーズナブルで買いやすく著名な作家でも仕入れがしやすいことが理由で、当時は海外のディーラーやオークションハウスから直接購入していた。
海外作家の後は、村上隆、奈良美智、草間彌生といった国内大御所の版画を次々とディーラーやオークションから仕入れることとなった。
プライマリー(一次販売)の作品は扱っておらず、セカンダリー作品ばかりゆえ、オークションの廉価版のような品ぞろえだった。
ほどよくして今度は国内の様々なアートギャラリーから出品される委託作品を取り扱うこととなり、販売可能な作品を定期的に仕入れることとなった。
この時点ではじめて、他のギャラリーのアーティストではあるが、プライマリーの作品を取り扱うことになったのだ。
そこからさらに時間をおいて、事業開始から4年後にはタグボートが独自でアーティストを発掘してアーティストをプロモーションをすることになるのだが、最初は東京都の外郭団体であるトーキョーワンダーサイトから推薦されるアーティストの取り扱いからスタートをした。
まだ、タグボート自身がアーティストの選定、プロモーションを模索していた状態だ。
2008年にタグボートが事業会社となるタイミングで、著名作家の販売のみから若手アーティストの支援を始めていくこととなる。
この年からタグボート独自の公募展であるタグボートアワード、ブース出展型のアートイベントYoung Artist Japan、アーティスト自らが作品をネット販売できるシステムTAGBOAT Next GenrationSなど多くのサービスをスタートしたのだ。
これはセカンダリー作品を重視していた体制から、タグボートがこれから伸びていく若手アーティストへとゆっくりと舵取りを変えた転換期になったのかもしれない。
しかしながら、これらのサービスが始めたのはちょうどリーマンショック直後であり、アーティスト支援を始めるには最悪のタイミングであったといえよう。
オークションでの作品は軒並み安く落札され、そもそも相場が悪い中ゆえ作品もそろってこない状況だ。
リーマンショックによる不況はアート業界全体をも重い空気に落とし込み、先行きが見えない状態だったのだ。
それでもリヒターやダミアン・ハースト、ジェフ・クーンズといった海外の人気アーティストは価格が下がることなく、リーマン不況後でも着実に値を上げていっていた。
日本人アーティストとしてはオークションでフィギュアが16億円で落札されアジアの現役アーティストでトップとなった村上隆でもリーマン後はあまり振るわず、その代わりに草間彌生や奈良美智といったアーティストがオークション市場をけん引することとなる。
中でも草間彌生はプリント作品が国内に多く出回っていたことから、国内のオークションハウスや「交換会」というディーラー間の互助会の競売での推しも強く、価格がぐんぐん上がっていった。
この間はプライマリーの作品はあまりふるわず、タグボートが独自に展開していた約10名のアーティストの販売を維持するだけで精一杯の状況であった。
その後、国内景気も少しばかりよくなる段階で、直接取り扱いアーティストの数を増やしていくことになったが、それはまだ三年前のことだ。
海外での展覧会などを積極的に進めていく中で、この3年で10名程度から100名までに一気に増やしていった。
もちろん作品のバラエティやクオリティ、作家の持つキャラクターを十分考慮して決めており、そのためにはアートフェアや各展覧会、美大の卒展などを徹底的に見て回る必要があったのは言うまでもない。
一人でも多くのアーティストが食べていける未来を作るためにはこの動きを止める予定はなく、オンラインだからこそ多くのアーティストを取り扱えるというメリットを発揮していきたい。
取り扱い量が増えたとしても個別のアーティストとのコミュニケーションを希薄にすることなく、これまで同様に作家と二人三脚で進めていく予定だ。
タグボートは海外展開を含めたリアルの展示とバーチャル空間の販売の両輪でアーティストのキャリア形成を支援していきたいと思っており、そのスピードはどんどん加速させていきたいと考えている。