
川﨑夏美

プロフィール
1989年広島県生まれ。京都市立芸術大学を卒業後、広島を拠点に活動。
2024年「Independent Tokyo 2024」審査員特別賞を過去最多の5つ同時受賞。
近年は散歩道の花壇や近所のお庭、公園の池や植え込みなど、
誰かの手によって作られた人工的な自然を「借り物の風景」と名付けモチーフとしている。
絵の具を幾重にも塗り重ねた画面をサンディング(やすりがけ)したり拭き取ったりすることで一見穏健に見える絵画の中にうっすらとした不協和音(居心地の悪さ)を生み出しながら、抽象と具象を往来するような作品制作を行う。

作品を作り始めたのはいつ頃ですか?
子供の頃、家にあった祖父の日本画の画材をよく触ったりしていました。
木箱の中に整然と並べられたソフトパステルがカッコよくてじっと眺めていた記憶があります。
他にも祖母が作ったちぎり絵が飾ってあったり、
母方の祖父もよく木彫りのペンダントやブローチを作ってくれて、
ものづくりに触れる機会は多かったと思います。
チラシの裏や自由帳によく絵を描いていましたが、
次第に物足りなくなってきて小学5年生の頃に親に頼んで絵画教室に通わせてもらうようになり、
そこで初めてアクリル絵の具や油絵の具、キャンバスを使って絵を描くという経験をしました。

アーティストを目指すようになったのは、どのような経験や思いがきっかけでしたか?
美大卒業後は働きながらでも絵は描けるだろうと思っていましたが、
実際には仕事や家事をこなしながら制作することはどうにも難しく
年に1〜2枚なんとか描くというような状態が続いていました。
つくり続けるためにはつくることを仕事にする(=アーティストになる)しかないと思い至って
会社を辞めたのが2023年のことです。

作品に共通するテーマやコンセプトについて教えてください。
「存在すること」について考えています。
絵画は「鏡のようなもの」と表現されるように、
鑑賞者自身が作品の一部として組み込まれるからこそ惹かれるものだと思います。
一方で絵画がそうした媒介機能を果たす時、
その存在自体がとても不確かなものであると感じるのです。
絵画の実在性(物質性)と媒介性はどのように関わるのか。
そうした問いを軸とし、モチーフのさまざまな要素の抽出・解体・再構築をすることで
鑑賞者が絵画の内側と外側の世界を行き来する仕組みを構築します。

これまで影響を受けた作家や表現はありますか
ベルギー絵画の系譜(ルネ・マグリット、ミヒャエル・ボレマンス、リュック・タイマンスなど)。
大学時代にマグリットの「イメージの裏切り」や「ゴルコンダ」を見て、
目に見えるものとその実体、視覚的認識のズレに興味を持つようになりました。

作品のアイデアは、日常のどんな出来事や風景から生まれることが多いですか?
現行のシリーズは街路樹や公園の植え込みなど人の手が加わった自然をモチーフにしているので、
散歩中に気になった風景を写真に収めるようにしています。
あとは制作に煮詰まったらよくホームセンターに行くのですが、
面白い素材が見つかったらそこから着想を得ることもあります。
最近はジオラマ用のカラーパウダーなるものを見つけて、
空気を含んだような質感が独特で何か使えないかなと色々実験しています。

制作工程や素材について教えてください。
アクリル絵の具で描写した後、全体をサンディング(やすりがけ)して画面を作り出しています。
漆の「研ぎ出し」という技法を絵画に展開したものです。
近年の制作で共通しているのは、やすりや彫刻刀で削る・絵の具が完全に乾く前に
布で拭き取ったり洗い流すなどマイナスのアプローチがあるということです。
一度描いたものを削ぎ落とすことで、絵の具の物質的厚みと色相を不一致にさせて
少し不安定な画面を作るようにしています。
今回、「tagboat Art Fair 2026」に出展される作品について教えてください。
一昨年から進行しているARTIFICIAL NATUREシリーズの新作を出展する予定です。
散歩道の花壇、公園の池、近所の庭先といった人の手によって作られた
人工的な自然=「借り物の風景」を題材とした作品群です。
借り物の風景を眺めてみると、自然と人工といった対とされる要素は
実は境界が非常に曖昧であることに気づかされます。
あらゆる物事が二元論的に分断されがちな現代において、
この「曖昧さ」はこれからの思考や表現を形作る上で
ますます重要になってくるのではないでしょうか。

今後の制作において挑戦したいことや意識していきたいことを教えてください。
tagboatのグループ展「ALTER REALITY」で展示した油彩作品(Underbrush01)のシリーズを
再開したいと思っていて、改めてマチエールの研究をしたいと思っています。
活動を続けていると少しずつ求められることも増えていきますが、
自分のやりたいこと(やるべきこと)を忘れずに、粛々とつくり続けていきたいと思っています。

4月24日(金)ー26日(日)開催:tagboat Art Fair 2026

「tagboat Art Fair 2026」
会期
2026年4月24日(金)ー26日(日)
詳細日時
・Preview -会場限定販売期間-
4/24 (fri) 16:00 – 20:00
・Public View -オンライン同時販売-
4/25 (sat) 11:00 – 19:00
4/26 (sun) 11:00 – 17:00
※3日間どなたでもご来場可能です
会場
東京都立産業業貿易センター浜松町館 展示場2階
〒105-7501 東京都港区海岸1-7-1 東京ポートシティ竹芝
JR/東京モノレール 浜松町駅(北口)から徒歩5分
ゆりかもめ 竹芝駅から徒歩2分
都営浅草線/都営大江戸線 大門駅から徒歩7分
チケット代
1500 円(会期中再入場可能)
※障害者手帳のご提示でご本人様、付添いの方1名まで無料
※学生証のご提示でご本人様無料
※小学生以下のお子様は無料