佐藤しなは1998年神奈川県横浜市生まれ、2017年慶應義塾大学法学部法律学科入学。
大学にうまく馴染むことができず、精神的に追い込まれ休学する中、人にすすめられたことがきっかけで絵を描き始めます。
iPhoneで描いた絵をSNSで投稿すると「もっと見たい」と言われ、そこから多数の作品を発表するようになりました。
作家が描くほの暗い世界の中で、少女たちが感じているのは一体どのような気持ちなのでしょうか。
佐藤しな Shina Sato |
どこか懐かしく、もう二度と手に入らないもの
佐藤しなが繰り返し描くのは、無機質なコンビニやおもちゃ売り場にあふれかえる品物の洪水と、
わずかな光が差し込む世界でたたずむ少女たちの姿です。
幼いころから好きだった魔法少女の玩具や、山のようなお菓子、整然と並ぶ化粧品などの商品に取り囲まれ、
途方に暮れたように立ち止まり座り込む彼女らの姿は、さまざまな物語を想起させます。
紙にジークレープリント/パネルに水張り, ed-/7, 38.7x 59.4 x2.5cm, 2022
紙にジークレープリント/パネルに水張り, ed-/7, 35.8x 59.4 x2.5cm, 2022
手に入れてはまた手放す、空虚なサイクル
話題の商品は次々と現れては消え、新しい娯楽が登場しては消費されていってしまいます。
作家はアニメや漫画などたくさんの作品が絶え間なく提供されることは素晴らしいと考えながらも、
その入れ替わりの激しさは消費活動のようで味気なく寂しいと感じているといいます。
絵の中に描き留められているのは、捨て去らずに手元に置かれた、様々な好きなものへの気持ちであるかのようです。
紙にジークレープリント/パネルに水張り, ed-/7, 42x 47.5 x2.5cm, 2022
紙にジークレープリント/パネルに水張り, ed-/7, 40.7x 59.4 x2.5cm, 2023
繰り返す毎日の中に
希望を持てない日々の中であっても、少女たちは少しのきらめきを求めて彷徨います。
大人になろうとする途中で忘れてしまうこと、失われてしまうもの。
立ち止まってしまったとき思い出すそれらは、作品を見る人に少しだけ前を向かせてくれるのかもしれません。
紙にジークレープリント/パネルに水張り, ed-/7, 38.7x 59.4 x2.5cm, 2022
紙にジークレープリント/パネルに水張り, ed-/7, 40.8x 59.4 x2.5cm, 2022
紙にジークレープリント/パネルに水張り, ed-/7, 43.9x 42 x2.5cm, 2021
佐藤しな Shina Sato |
1998年神奈川県横浜市生まれ
2017年慶應義塾大学法学部法律学科入学
2021年慶應義塾大学法学部法律学科中退
『ILLUSTRATION 2022』掲載
可愛い女の子と暗い世界を描きます。
やりたいことや目標が明確になく、なんとなく入った大学に上手く馴染むことができず、精神的に追い込まれ、休学をしました。とある方に「暇つぶしに絵とか描いてみたら?」と言われたことをきっかけに、iPhoneで絵を描きはじめました。描いた絵をSNSに投稿したところ、ひとりの方が「もっと見たい」とコメントをしてくれ、それをきっかけに絵を公開するようになりました。
私は色々な人の些細なひと言に救われていると強く感じます。
私の絵が、普段は忘れている感情や見過ごしてしまっているような感情を思い出すきっかけになったり、誰かのちょっとした支えになったりできたら、とても嬉しく思います。