縁起物など日本古来のモチーフと現代の生活用品
その作品は販売と同時に即完売するほどの人気ぶり。阪急MEN’s TOKYO tagboatにて個展「Spin on」(2022年7月22日~8月11日)の開催を予定している作家の過去作から、魅力の秘密を紐解きます。
鈴木ひょっとこ Hyottoko Suzuki |
作品に込められたユーモアと意外性
キャンバスにアクリルガッシュ絵の具で手描き, 27.3x 16 x2cm, 2021年
雪遊びをする子供たちの雪をアイスに見立てた、浮世絵のパロディ作品です。
武蔵野美術大学に在学中、絵画に時間の変化やストーリー性をもたせたいという思いから、油絵学科から映像学科アニメーション専攻へと転専攻した鈴木ひょっとこ。
そのときから続く思いは、隅々まで見飽きない構成や、生命力あふれるキャラクターたちに生かされています。
日常の延長から発想を得ている作品は、飾れば毎日が楽しくなるようなユーモアたっぷり。老若男女問わず楽しむことができます。
キャンバスにアクリルガッシュ絵の具で手描き, 27.3x 22 x2cm, 2019年
歌川広重の「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」の雨の線の表現をバーコードに見立て、それを機械がスキャンしている光に橋の上の人物が驚いている場面を描いています。
キャンバスにアクリルガッシュ絵の具で手描き, 53x 80.3 x2.5cm, 2021年
注射により強力になった白血球がウイルスやばい菌を駆逐する様子を、浮世絵の波の描写を引用した白虎の形の波が海賊を退治する様子になぞらえて描いた、観た人が元気が出るようにと願いを込めて描いた作品です。
パネルにアクリルガッシュ絵の具で手描き, 60.6x 45.5 x2cm,2019年
葛飾北斎の鯉の滝登りを女性の長い髪の部分に引用し、滝を登ることができた鯉は龍になるという伝説に照らし合わせて、恋が成就するよう昇る鯉と恋に敗れた鯉に見立てて描いています。
浮世絵の人物が現代にやって来たら?
パネルにアクリルガッシュ絵の具で手描き, 18x 14 x2cm, 2020年
歌川広重の浮世絵「四季の花園 桔梗」に登場する女性の着物の紋様をQRに見立て、自撮りしている姿に描いています。
浮世絵の洒落っ気あふれる美意識に憧れを持っているという作家の作品には、しばしば日本の伝統的な題材が引用されます。
かの有名な作品やモチーフも、作家の手にかかれば現代的な装いへと大変身。
古いものへの敬意から生まれるユニークな発想はまさに温故知新。今も昔も変わらず日常に美と楽しみを見出すことの大切さを思い出させてくれます。
キャンバスにアクリルガッシュ絵の具で手描き, 45.5x 45.5 cm, 2018年
浮世絵に描かれる雲や霞の表現をシェービングクリームに見立て、繰り返し雲や霞がかかるように、伸びる髭を剃るというような面倒なことに向き合っていく心情や、白髭にも見えるように日々が経ち老化していく姿を一枚の絵にしています。
キャンバスにアクリルガッシュ絵の具で手描き, 41x 24.2 x2cm, 2021年
アロマディフューザーから漂う梅の花の香りから、ふと月岡芳年の「全盛四季春 荏原郡原村立春梅図」が思い起こされる様子を、またはこの絵の女性が現代に来てもしこのディフューザーでこの香りを嗅いだとしたら、と香りから立ち上るストーリーを想像しながら描いた、外出しづらく季節感を感じづらいこの頃に春らしさを感じられる様な絵を描きたくて描いた作品です。
パネルにアクリルガッシュ絵の具で手描き, 18x 14 x2cm, 2020年
歌川国貞が歌舞伎役者・市川団十郎の暫を描いた浮世絵の衣装の三升(みますがた)文様をQRコードに見立て、自撮りしているように描いた作品の二作目です。
鈴木ひょっとこワールド全開!「家電図」シリーズ
キャンバスにアクリルガッシュ絵の具で手描き, 45.5x 53 x2cm, 2019年
象を映した番組が液晶テレビに映り、その画面にブロックノイズが入り、伊藤若冲の鳥獣花木図屏風の白象が映り込んだかのように描いた”画像”の言葉遊びでもある作品です。
現代の家電と浮世絵が掛け合わさった「家電図」では、鈴木ひょっとこにしか生み出せない化学反応が炸裂。
滝のように注ぐビールサーバー、白波が渦巻くトイレ、シンセサイザーから咲き乱れる桜の花…
伝統的な要素を現代の生活の中にあるものと掛け合わせ、全く新しい魅力を生み出しています。
キャンバスにアクリルガッシュ絵の具で手描き, 53x 33.3 cm, 2020年
葛飾北斎の「諸国滝廻り相州大山ろうべんの滝」から着想した絵画で、 本来は大山寺に参詣する人々が滝で水垢離(みずごり)を行い心身を清めている場面を描いた 浮世絵ですが、この作品では、遥々山奥まで営業周りに来た会社員の男性(画面左下端)は 仕事の疲れからくる酒欲なのか、その滝の水行の様子を巨大なサーバーから注がれるビールに、 宿坊でもある「藤の坊」のちょうちんを居酒屋の赤提灯(画面右下)に見間違えている様子として、 浮世絵の中の水垢離する清らかな人々と現代の欲を断てない男性とを対照的に、 滝の水の清涼感とビールの爽快感との涼やかなイメージを重ねて描いています。
キャンバスにアクリルガッシュ絵の具で手描き, 65.2x 50 x2cm, 2021年
垂れ桜の枝をケーブルに見立て、桜が音楽を奏でている様な、音楽を吸収して桜が咲いているような現実にはあり得ない様子として描いた作品で、桜の表現の一部に葛飾北斎の「鷽に垂桜」を引用しています。
2022年7月22日(金) ~ 2022年8月11日(木)
営業時間:11:00-20:00
*最終日は17時close、他、館の営業時間に準ずる
入場無料
会場:阪急MEN’S TOKYO タグボート
〒100-8488 東京都千代田区有楽町2-5-1 阪急MEN’S TOKYO 7F
銀座、阪急MEN’S TOKYO 7F、タグボートのギャラリースペースにて、現代アーティスト・鈴木ひょっとこによる個展「Spin on」を開催致します。
武蔵野美術大学在学時、絵画にストーリーや時間軸を持たせたいという考えでアニメーション専攻に転科した鈴木ひょっとこ。現在は、絵画としての綿密な描写表現を両立している日本の絵巻や浮世絵に多大な影響を受け、これらと現代の生活用品をまじ合わせたユーモアある絵画を制作しています。
時間の変化やストーリーを持たせた表現を目指している彼女の作品の細部には、古典的なものや現代の要素など隠れた仕掛けを隅々まで発見することできます。
タグボートでは初の個展となる本展では、新作を展示・販売致します。
古今をシンクロさせ意外性を見出す和ポップな鈴木ひょっとこ渾身の作品をどうぞご高覧ください。
鈴木ひょっとこ Hyottoko Suzuki |
1983年 兵庫県出身
東京都在住
武蔵野美術大学造形学部卒業
九州への移住時代に観た神楽に触発され、「家電図」を中心に、昔から現代へ続く民俗をユーモアやストーリーを込めた絵画として発表。
<略歴>
2003 武蔵野美術大学造形学部油絵学科入学(三年次転学科)
2007 武蔵野美術大学造形学部映像学科アニメーション専攻卒業
2008 ラピュタアニメーションフェスティバル入選
2013 GEISAI#18 ポイントランキング4位入賞
2017 書籍「ハナモゲラ和歌の誘惑」笹公人 著(小学館) 装画・挿絵
二人展「縁起物展」アートスペースMorgenrot
2018「天の岩戸開き」の芸能 国立文楽劇場 公演告知ポスター原画
「アーティストインレジデンス」浜松市鴨江アートセンター
2019 個展「黒物家電図市」NANJO HOUSE
イラストレーション誌 第210回TheChoice 入選 (玄光社)
グループ展「ART IT NOW」 うめだ阪急美術画廊
「KOGEI ART FAIR KANAZAWA 2019」KUMU金沢
二人展「ハイブリッド風流」白白庵
書籍「瞠目笑」林家彦いち著(パイインターナショナル) 装画・挿画
「coba produce concert 運命のレシピ」日向市文化交流センター 公演告知ポスター原画
2020 イラストレーション誌 第215回TheChoice 入選 (玄光社)
個展「COOL絵図」名古屋松坂屋
グループ展「2020 ASYAAF & Hidden Artists Festival」弘益美術館(韓国)
2021 個展「ebullient」森美術館ショップ
二人展「色彩浮游」岩田屋三越美術画廊
「くどやま芸術祭2021」真田ミュージアム
2022 個展「春風モード」石川画廊
他、全国各地での個展、グループ展に参加。