伝えていきたい日本の美意識
変わる美しさ、変わらない美しさ。
日常と非日常。緻密と余白。光と影とその間。四季を感じるすべてのこと。
博多阪急では日本の美に対する感度や意識を伝え、新たな日本の美意識に注目する展覧会を開催します。
現代アートだけでなく日本画や染め物、焼物といった伝統的な技術を感じる品物も登場。
昔から日本人の生活に根付いてきた美意識と、現代の価値観で生まれ変わった美しさが時を超えて共演します。
タグボートからは4名の作家が登場。今改めて注目される「日本の美意識」を是非会場でご堪能ください。
『伝えていきたい日本の美意識 Neo Japan』
会期 2025年3月26日(水)~31日(月)※最終日は午後5時終了
会場 博多阪急 8階催事場
出展作家 AKIKO KONDO / TARTAROS(タルタロス) / コムロヨウスケ / 林恭子
箔の表現
「箔」は主に絵画や工芸、建築に使われ、高貴さや華やかさを与えてきました。日本画や浮世絵では背景や装飾に使用され、奥行きと光を加えて視覚的なインパクトを強めます。箔の美しさは光を反射する特性にあり、電気の無い時代には蝋燭の灯りを拡張し空間を明るくする役割も持っていました。見る角度や光の加減で輝きが変化し、静謐ながらも動きのある美しさは唯一無二です。作品に深みや質感を加え単なる装飾を超えて、精神性や物語性を与えています。
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余白
「余白」は日本の美術において非常に重要な要素で、作品の中で空間を意図的に残すことで、その美を引き立てます。特に日本画や書道では、余白が構図の一部として機能し、全体のバランスや調和を保つ役割を果たしてきました。余白によって作品に呼吸感や静けさが生まれ、観る者に深い印象を与えます。この「引き算の美学」は、無駄を省き必要最小限の表現にすることで、余白自体が作品の存在感を際立たせるのです。「わびさび」という言葉でも表現されるように、質素さや閑寂さに美しさを見出す日本の独特の美意識を感じさせる要素です。
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浮世絵
「浮世絵」は江戸時代に発展した日本の代表的な美術形式で、日常生活や風景、人物、役者などを描いた版画です。商業的に広まり、庶民の生活に密接に結びついていました。浮世絵は、色鮮やかな表現と精緻な技法で人気を集め、特に歌川広重や葛飾北斎の作品が有名です。その特徴的な美しさは、遠近法や大胆な構図、そして美的感覚が詰まった色彩にあります。浮世絵は日本独特の「間」の感覚や、静けさと動的な表現を同時に持ち合わせており、自然や風景の美しさを捉えつつも、視覚的なリズムや躍動感を生み出しました。今日では、日本文化を象徴する重要な芸術として、世界中で高く評価されています。
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岩絵の具
「岩絵の具」は、日本画において伝統的に使用される絵具で、天然の鉱石や岩から作られた顔料を基にしています。これらの顔料は、細かく砕いた鉱石を水で溶かし、粘土や膠を加えて作られます。岩絵の具はその粒子感や光沢が特徴で、光の加減によって異なる表情を見せ、作品に深みと奥行きを与えます。ざらざらとして角度によって煌めく質感は平面的な表現を超えて、立体感を生み出し、視覚的な豊かさを感じさせます。そのため、日本画において岩絵の具は、自然の美しさを表現するための重要な素材となり、深い精神性や風景の美を強調する手段として重宝されています。
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涅槃
日本は、仏教、神道、さらには儒教やキリスト教など、多様な宗教が共存し、交わりながら形成されてきました。日本文化や美術にもそれらの思想は深く根ざしており、人々の生き方に影響を与えています。涅槃(ニルヴァーナ)は仏教用語で煩悩から解放され精神的な自由を得た境地を指します。物質的な世界の執着を超えた「妨げのない世界」に見出す哲学的な美しさは、今日まで表現され続けています。
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タグボートからは4名のアーティストが登場。
今改めて注目される「日本の美意識」を是非会場でご堪能ください。
出展アーティスト
AKIKO KONDO
AKIKO KONDOの作品は、日本の伝統美と現代的な感覚が絶妙に交差し、金銀の輝きが生み出す陰影が深遠な世界を創り上げています。琳派を思わせる金銀を基調に、光の変化とともに表情を変える箔技法を用い、時の流れを感じさせる美を表現。余白を巧みに活かした構図は、無駄を排し、必要最低限の線や形で静謐でありながらも動きのある空間を作り出します。引き算の美学に基づく「描かれざる空間」は、作品に奥行きと静けさを与え、見る者を魅了します。空間を広げ、静かな深みを感じさせる品格ある作品で数多くのハイグレードホテルにも採用されています。
TARTAROS(タルタロス)
タルタロスの作品は、圧倒的な存在感で見る者を引き込みます。波のうねりや滝の流れ、富士山の雄大さが紙幣で構築され、金銀箔の輝きがその世界を包み込みます。独自の「Automatic Painting」技法によって、世界中の紙幣をランダムにカットし、コラージュによって新たなビジュアルを生み出しており、紙幣がただの「色」や「模様」に変わる過程で生まれる偶然性が唯一無二のリズムと美しさへと導きます。モチーフとなるのは「神奈川沖浪裏」や「富嶽三十六景」といった日本の浮世絵の名作たち。浮世絵は日本美術のアイコンでありながら江戸時代には大量に複製され、誰もが手に入れられるアートでした。それは、現代のお金とよく似た特徴を持っています。タルタロスはこの類似性に着目し、金銀箔と組み合わせることで、古典と現代をつなぐアートを生み出しています。
コムロヨウスケ
コムロヨウスケは、デジタルとアナログ、素材、色彩の機能を分解し再合成することで新しい表現を追求しています。プリミティブまたはミニマルな形状での表現を理想とし、そのシンプルな美しさを大切にしています。代表作「emptyシリーズ」では、一本の線が画面を二つに分け、この線が地平線を表現するとともに、「涅槃」という概念に着想を得ています。サンスクリット語で涅槃を指す「ニルヴァーナ」は「妨げのない世界」を意味し、作品はその思想を反映しています。シンプルでモダンな画面の裏には、古くから生活に浸透している仏教の教えが息づいています。
林恭子
林恭子は日本画専攻で身につけた表現力を活かし、岩絵具や水彩絵具を使用して自然や季節の移り変わりを描き出します。作品には四季の温度や湿度が感じられ、見るたびに新たな発見をもたらします。制作過程は非常に繊細で、自然光の中で色のにじみや偶然生まれた表情を大切にし、下描きなしで描かれています。色と形が絶妙に重なり合い、偶然の美しさが引き出されており、岩絵具ならではの粒子感や光沢が生む質感は作品に奥行きを与えています。卓越した色彩感覚と計算された構図、そして岩絵具が生み出す表情の深さは日常を美しく彩りつつも他には無い存在感を放つ作品と成りえるはずです。
出展作品
作品は会場・オンラインで販売いたします。是非各作家ページよりチェックしてください。
※作品販売3月26日(水)午後12時スタート
『伝えていきたい日本の美意識 Neo Japan』
会期 2025年3月26日(水)~31日(月)※最終日は午後5時終了
会場 博多阪急 8階催事場
出展作家 AKIKO KONDO / TARTAROS(タルタロス) / コムロヨウスケ / 林恭子