青森出身の工藤千紘は名古屋芸術大学の大学院を修了後、「損保ジャパン日本興亜美術館展」や「シェル美術賞」で入選を遂げる実力者です。
その作品に描かれるの人物や動物たちの姿は一見かわいらしく、しかしその目や口元に宿した表情は内に秘めた何かを物語っています。
タグボートでは3回目の個展を控えた作家が描く、観る人を惹きつけてやまない作品の魅力をご紹介します。
工藤千紘 Chihiro Kudo |
アンビバレンスな心情
キャンバスに水彩・油彩, 91x 72.7 cm, 2017
工藤千紘の作品に描かれる人物の姿は、不安と安らぎ、悲しみと喜びなど、内に秘めた相反する感情を感じさせます。
あふれ出す想いを表すかのように豊かに波打つ髪、
そしてその隙間からのぞく、一言では名付けられない曖昧で複雑な感情を持つ表情を、
心地好いストロークで柔らかく描き出します。
キャンバスに水彩・油彩, 60.6x 50 x2cm, 2022
キャンバスに水彩・油彩, 53x 33.3 x2cm, 2020
変化していく気持ち
キャンバスに水彩・油彩, 162x 194 x3cm, 2018
絵の中の人物たちは、あどけないようでいて大人びた不思議な眼差しで私たちを見つめます。
作家がキャンバスに向き合い、悩み葛藤しながら、嘘偽りない気持ちを表現しようとする、その逡巡が感じられるかのようです。
ゆらぐ情動は、鑑賞者の胸の内に忘れていた感情の波を呼び起こします。
キャンバスに水彩・油彩, 97x 145.5 cm, 2021
キャンバスに水彩・油彩, 194x 130.3 x3cm, 2019
記憶と重なり、現れる未来
キャンバスに水彩・油彩, 162x 130.3 cm, 2014
個展「Emergence」にて展示予定の新作では、過去に描いた作品や人物の写真を合成して平均化した人物像を資料として用い、
それを見ることによって起こった自身の思いを加え、まだ見ぬ新しい感覚を紡ぎ出すように表現しています。
作家自身の心の動きと、作品を見た人の中に起こる気持ちが作品の人物像の上で交錯し、観る瞬間によっていつも違うきらめきを映し出します。
そして作家は自身の作品が、それを見る人にとって、いつか出会う大切な誰かのようであってほしいと願っているのです。
キャンバスに水彩・アクリル, 53x 45.5 x2cm, 2020
キャンバスに水彩・油彩, 162x 130.3cm, 2020
タグボート販売作品
キャンバスに水彩・アクリル, 116.7x 72.7 x3cm, 2020
布に水彩・油彩・アクリル, 178x 133 cm, 2021
キャンバスに水彩・油彩, 60.6x 50 x2cm, 2022
キャンバスに水彩・油彩, 194x 162 x3cm, 2017
ARTIST INTERVIEW
*本記事は2019年に公開された記事です。
展覧会情報
2023年1月27日(金) ~ 2月16日(木)
営業時間:平日 12:00-20:00 土日祝日 11:00-20:00
*最終日は17時close、他、館の営業時間に準ずる
入場無料
会場:阪急MEN’S TOKYO タグボート
〒100-8488 東京都千代田区有楽町2-5-1 阪急MEN’S TOKYO 7F
銀座、阪急MEN’S TOKYO 7F、タグボートのギャラリースペースにて、現代アーティスト・工藤千紘による個展「Emergence」を開催いたします。
青森出身の工藤千紘は名古屋芸術大学の大学院を修了後、「損保ジャパン日本興亜美術館展」や「シェル美術賞」で入選を遂げる実力者です。新作は発表次第すぐに完売してしまうほど不動の人気を誇ります。
タグボートでは3回目の個展となる今回は、過去の作品と人物の画像を合成した資料画像をもとに、新たなひとつの作品を描くという手法を取っています。曖昧な記憶をいくつも繋ぎ合わせ、記憶を辿り、新しいかたちを生み出す行為によって、意図を超えた感覚を形成しようと試みます。
柔らなタッチが特徴的な人物像は、ぼんやりした記憶や景色とともに人々が生きている環境を髪色で表現し、人物の表情は鑑賞者の心を映す鏡のように、その時々で変化します。
しなやかだけど強い。優しいけど怖い。人々の様子は、そんな内に秘める何かを思わせます。3回目の個展となる本展では、新作を多数展示・販売致します。怖さや不安の中に温かい優しさをまとった表情を是非ご高覧ください。
CONCEPT
ふと頭の中に立ち上がったイメージ。それは確かに記憶の中から生まれたものであるはずが、知っている誰とも似ておらず、その姿を捉えようとしても、意識は記憶の中をさまよってしまう。
うつろう面影を記憶と重ね合わせ、それぞれの輪郭を捕える。現れつつあるかたちが、それと共にある未来をも写し出すように、色彩と空間を響き合わせる。
そうして生まれた姿が、キャンバスの前に立つ人々にとって、いつか出会う大切な誰かのようであってほしいと願いながら描く。
今回の制作においては、私の過去の作品と人物の画像とを合成した資料画像をもとに、ひとつの新たな作品を描くという手法を取っている。
始めは朧げであった作品のイメージが、それぞれの素材に関する記憶によって少しずつ輪郭と色彩を与えられ、機械的に合成された画像の見方を変え、それをトリガーとしてまた別の記憶が思い出され…と、それぞれの関係性が変化していくことで制作が進められ、ついには絵画として成立しうる明確なかたちが立ち現れる瞬間を強く意識することで、創発(=Emergence)の感覚を描き出そうという試みである。
工藤千紘
工藤千紘 Chihiro Kudo |
1989 青森県出身
2014 名古屋芸術大学大学院修了
現在 愛知県を拠点に活動
個展
2014 「CHILD PUNCH」アートギャラリー水無月、岐阜
2017 アートギャラリー水無月、岐阜
2018 「Art×Structure」フォルテック一級建築士事務所、東京
2018 「ただ、息をする」ギャラリーヴァルール、愛知
2019 アートギャラリー水無月、岐阜
「誰そ彼」ギャラリーヴァルール、愛知
2020 「Pure White」tagboat Gallery、東京
「影踏みをしなくなった日」ギャラリーヴァルール、愛知
2021「Bittersweet」tagboat Gallery、東京
「In Dreams」The Waluso Gallery、イギリス・ロンドン
「A」ギャラリーヴァルール、愛知
「蹴っ飛ばせ!」GALERIE OVO、台湾・台北
主なグループ展
2009「第4回 三菱商事アート・ゲート・プログラム」EYE OF GYRE、東京
2012「EMERGING DIRECTORS’ ART FAIR: ULTRA 005」Spiral Garden、東京
2013「3331 ART COLLECTOR FAIR」3331 1F メインギャラリー、東京
「CBC 翔け!二十歳の記憶展」CBCスタジオギャラリー、愛知
2014「若手作家刺激プログラム『motion#2』」市民ギャラリー矢田、愛知
2015「back and forth」ギャラリーヴァルール、愛知
2016「FACE 2016 損保ジャパン日本興亜美術賞展」東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館、東京
「第11回TAGBOAT AWARD 入選者展」IID 世田谷ものづくり学校、東京
2017「てすさみ」ギャラリーヴァルール、愛知
「TAGBOAT ARTISTS EXHIBITION Vol.1」ヒューリックホール、東京
2018「FACE 2018 損保ジャパン日本興亜美術賞展」東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館、東京
「TOKYO ILLUSION」Dali Art藝術廣場、台湾
「シェル美術賞2018」新国立美術館1階展示室1B、東京
2019「秋季當代藝術沙龍展」台北オークションセンター、台湾
入選・受賞歴
「第4回 三菱商事アート・ゲート・プログラム」入選
「名古屋芸術大学卒業制作展」優秀賞,「CBC 翔け!二十歳の記憶展」CBC賞
「名古屋芸術大学」理事長賞,「FACE 2016 損保ジャパン日本興亜美術賞」入選
「第11回 TAGBOAT AWARD」入選,「ウルトラマンインスパイア展」入選
「FACE 2018 損保ジャパン日本興亜美術賞」入選,「シェル美術賞2018」入選
Product
リーガルリリー 1stアルバム「bedtime story」 Illustration