2022年9月23日(金) ~10月13日(木)まで、阪急メンズ東京のタグボートギャラリーで個展を開催していた、清水智裕さんにお話を伺いました!
|今回の個展作品、レイアウトについて
今回の展示のための制作期間は3か月という清水智裕さん。3か月前と展示直前ではやりたいこと・表したいことがだいぶ変わったそうで、考え方の違う作品が多数完成したそうです。
また、展示の搬入当日に決定した展示レイアウトは、「一見抽象画だけどよくみると人物が紛れ込んでいるようなもの」
「はじめに画面を全部塗りつぶして人物をくっきり表すもの」「細かい点々で人物をえがいたもの」など描き方ごとの配置となっています。実を言うと、ほんとはもう少し展示全体を統一したいそうです。
(「まだまだかな」とお話されていました。)
|拭き取り技法の始まり
拭き取り技法とは、近年清水さんが編み出した技法。絵具が乾ききらないうちに布などで拭き取って「消す」ことで、形を掘り起こすかのように「描く」という方法です。今回の個展ではすべての作品をこの拭き取り技法で制作されています。
「輪郭を描いて中を塗る」という手順に抵抗が生まれたのがふき取り技法の始まり。
初めは画面のすべてをふき取りで描いていましたが、最近は逆にふき取りのルールに縛られすぎていると感じることもあるそうです。
なので、最近は筆も使うようになり、ルールにしばられず、いろんな描き方を組み合わせていきたいとお話されていました。例えば、「漂流記」の草に生えているお花の部分は、拭き取り技法の上に書き加えており、「事の真相」の背景の色や影は拭き取りと書き込みを繰り返しています。
左(上):漂流記 右(下):事の真相
《清水智裕さん作品説明》
|ドローイング作品について
清水さんは油彩作品を描くためにドローイングで下書きを描きます。
新聞やシールの破片を貼り合わせる作業がとても好きだそうで、なかにはそのままドローイング作品として完成させるものもあり、油彩とは全然違う頭を使って制作している感覚のようです。
|作品の変遷
清水さんの今回の新作は、同じふき取り技法のなかでも少し描き方に違いがあります。
1、一見抽象画だけどよくみると人物が紛れ込んでいるようなもの(「Lesson」「Waiting Time(7)」)
2、はじめに画面を全部塗りつぶして人物をくっきり表すもの(「輝石」)
3、細かい点々で人物をえがいたもの(「解析中」「対概念」)
個展の新作はこの3点の描き方ですが、基本となる拭き取り技法は変わらないので、
今後も新たな描き方が生まれるかもしれません。
「解析中」「対概念」は、原子などが体をつくっていることを表現しています。
清水さんは大学時代に物理を学んでおり、「物質の最小単位」にもともと興味があったことから、あえて作品をそれぞれ関係させてみようと思い始めたそうです。人間を構成する物質として様々な破片があって、そのかけらの集積としての人体について現在は考えているそうです。
芸術だけでなく物理学も学び興味関心がある清水さんだからこそ、清水さんしか表現できない世界観が作品に現れるのだと納得しました。
また、今まではふき取りのシリーズはモノクロが多かったのですが、最近は描き方だけではなく色に対しての考え方も変わってきており、今後は色ももっと使っていく予定です。(「Visitor」)
《清水智裕さんメッセージ》
残念ながら個展は終了してしまいましたが、個展の新作は引き続きタグボートオンラインサイトにてご購入頂けます。
今回の個展に展示した作品を次回の「CORE12」にも出展予定となっておりますので、見逃してしまった方は必見です!
▼展覧会詳細
http://tagboat.co.jp/negative-positive-tomohiroshimizu/
▼清水智裕アーティストページ
https://www.tagboat.com/products/list.php?author_id=1002050
インタビュー:関口
写真撮影:鈴木
記事・校正:板橋、眞岸