タグボート取り扱いアーティストの皆さんに、インタビューに答えていただきました。
アーティストになったきっかけ、作品制作方法、作品への想いなど、普段は聞けないようなお話が満載です。
毎週更新していきます。ぜひご覧ください!
小さいころから絵を描くのが好きでしたか?
絵を描くのはもちろん好きでしたが、むしろ漫画を読んだり描いたりするのが好きでした。
正直、けして上手ではありませんでしたが、好きなキャラクターや、自分で考えたキャラクターなどを描くのは好きでした。
『四次元ポケット』 パネルにアクリル・石膏 2014年 900×900mm
ドラえもんをモチーフにした作品。
藤子不二雄の作品は特によく愛読していました。
美術の道に進むことになったきっかけは?
実は将来は漫画家になりたいと考えていました。
そこで、美大に進んでしっかり絵の勉強をしたいというのがきっかけです。
とはいえ、美大進学を意識した高校生くらいの頃は、美術の世界についてはあまりよくわかっていませんでした。
油絵科といえば「油絵」を描く学科と思っていたくらいです。
そのため、高校生の頃は、デザイン科に進学したいと考えていました。
高校生の頃から予備校に通い、芸大を目指して何年か浪人も重ねたのですが、受験美術の訓練を続ける毎日の中で、肉体的にも精神的にもボロボロになり、もう絵すら描けない状態に陥りました。
受験期のトラウマは根深く、実は今でも悪夢に苛まれることさえあったります。
そうした中、自分なりのアプローチで、美術そのものについて向き合ってみたいと考えるようになりました。
そこでリハビリも兼ねながら、受験の世界から離れて自分の描きたい絵を描き始めました。
この時期の制作が今につながっているように思います。
『ぷられーる』 キャンバスにアクリル 2010年 455×455mmx3 3点組
プラレールを題材にした大学入学以前の2010年の作品。
この頃の作品は、今も制作のベースになっているように思います。
『ぷられーる』 パネルにアクリル 2018年 3535×30mm
同じくプラレールを題材にした2018年の作品。
とはいえ大学で学びたいという気持ちもやはり強くあり、2011年に武蔵野美術大学通信教育課程に入学、その後通学課程への3年次編入、同大学院入学を経て、現在博士後期課程で学んでいます。
ここまでくるのにだいぶ時間がかかりましたが、ゆっくりとでも自分なりの歩みで美術の道を進めていきたいと思っています。
初めて作品を発表したのはいつ、どんなときですか?
クローズドな場での発表の機会はそれ以前にもありましたが、公の場での作品の発表としては、2010年の「第27回FUKUIサムホール美術展 」という公募展になります。
この公募展では、FBC福井放送賞という賞を頂くことができました。
まだ大学に入学する前、一人で制作を続けていたこの時期に、こうした賞を頂けてとても励みになったのを覚えています。
作品はサイコロを題材にした作品で、この題材は今も研究テーマとして探求を続けています。
そうした点でも、美術作家として活動を始めていく転機となった展覧会であるように思います。
2010年の「第27回FUKUIサムホール美術展 」での展示。
『10001101000101』 パネルにアクリル 2019年 2040×2040mm
同じくサイコロを題材にした2019年の作品。
制作する日はどのようなスケジュールで進めていますか?
決まったスケジュールはありません。
制作前に、こんな感じで進めていきたいとイメージすることはありますが、残念ながら予定通りに進むことはほぼ100%ありません。
常に予期せぬことや、新たな課題などが見つかり、いつも苦心しています 。
さらに、制作にはその日の体調やメンタルなども深く影響してくるため、先行きが見通せない不安定な毎日です。
しかし、同じことの繰り返しでは無く、できるだけ新しいことに挑戦したいという気持ちは大事にしたいと思います。
『階段を昇る裸婦』 パネルに油・アクリル 2018年 1167×1167mm
デュシャンの作品も意識しました。
『かま凹』 パネルにアクリル 2020年 262×606mm
近作のかま凹。
作品の制作手順や方法などを教えてください。
必ずしも決まった手順や方法があるわけではありませんが、ここ最近は支持体であるパネルの自作からスタートすることが多いです。
シェイプド・キャンバスなど、特殊な形状の作品を制作する機会も多いため、この段階で時間がかかる場合も多いです。
『♡』 パネルに油・アクリル 2014年 900×728mm
♡型の支持体で制作した作品です。
『untitled』 パネルに油・アクリル 2015年 530×530mm
足の輪郭と支持体の輪郭を合わせて制作した作品です。
『piece』 パネルに油・アクリル 2017年 643×643mm
ジグソーパズルのピースの形状の支持体を作り制作した作品です。
その後は、目止めや下地塗り、研磨などを行った後、ようやくアクリル絵の具をベースに、必要に応じて油絵の具なども併用しながら描画を進めるのが主流です。
しかし制作においては決まったスタイルを固持するのではなく、今後も新しい技法や取り組みなどに積極的に挑戦していきたいと思っています。
『棋聖決定七番勝負 第40局第2局』 パネルに油・アクリル 2019年 455×425mm
パネルを碁盤に見立て、最小限の描写で構成した作品。
『↑』 角材,パネルに油・アクリル 2019年 2430×400mm
実物の角材、地肌、描写面を組み合わせて構成した作品。
現在、力を入れて取り組んでいること
現在、武蔵野美術大学大学院博士後期課程に在籍しています。
博士課程では、作品制作だけではなく、博士論文も必須となります。
そのため作品の制作だけではなく、論文の執筆も並行して進めなければならず、苦労しています。
とはいえ制作を主体とする美術系の場合、こうした機会もあまり無いため、これを機に美術に対する理解を学術的により深めていければと考えています。
自分の作品は、コンセプチャルな作風と捉えられることも多いですが、実際にはひらめきやイメージ優先で、作品をうまく言語化したり、位置づけたりするのが困難に感じることも多いです。
自分自身の作品というものは、ある意味で一番理解が難しい作品でもあるようにも感じます。
美術に対する眼差しを深めることで、たとえ後付けでも、自分の作品をより理解できたらと思っています。
将来の夢、みんなに言いたいこと
自分のペースで、まずは目の前のこと、一つ一つに集中し、自分なりに消化していきたいです。
地道に制作を続け、個展やグループ展など展示の機会を大切にしたいと思います。
2017年に中国・上海にて開催された日本の若手アーティストによるグループ展「On the Way–Group Exhibition of Young Japanese Artists」での展示風景。
2019年には、初の本格的な個展となる「ねじれの回廊」をLOKO GALLERYにて開催しました。
画像は展示会場の一コマ。
そして遊び心や冒険心を忘れず、常に柔軟に様々なことにチャレンジも試みていきたいです。
たとえば、今は絵画を中心に活動していますが、狭義の絵画に留まらない活動にも興味を持っています。
今は大学院在籍中で日々の制作・研究で正直手一杯ですが、卒業後は、自身の原点である漫画にも挑戦してみたい気持ちなどもあったりします。
『賽』 パネルにアクリル・アルキド・墨 2012年 840×840mm
第7回タグボートアワード入選作品。
『untitled』 パネルに油・アクリル 2017年 910×910mm
第13回タグボートアワード入選作品。
『35段目』 パネルにアクリル 2019年 525×75mm
第15回タグボートアワード審査員特別賞天明屋尚賞受賞作品。
今後も美術について自分なりに問い直しながら制作を続けていきたいと思います。
2015年 武蔵野美術大学造形学部油絵学科油絵専攻 卒業
2017年 武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻油絵コース 修了
現在、武蔵野美術大学大学院博士後期課程在学中
【website】
主な個展
2019年「ねじれの回廊」(LOKO GALLERY/鶯谷町・東京)
主なグループ展
2018年「Triadic Surfaces」(LOKO GALLERY/鶯谷町・東京)
2018年「日露の若者による美術展 克服」(マネージ中央展覧会ホール/サンクトペテルブルク・ロシア 他)
2017年「On the Way –Group Exhibition of Young Japanese Artists」(XU GALLERY/上海・中国)
2016年「ART POINT Selection VI」(ART POINT/銀座・東京) 他
主な受賞
2020年「第15回タグボートアワード」審査員特別賞天明屋尚賞
2019年「第3回宝龍芸術大賞」優秀賞
2019年「第30回美浜美術展」FBC賞
2019年「第45回美術の祭典東京展」奨励賞
2019年「五美術大学交流展2019 NEW AGE」東京展賞
2019年「IAG AWARDS 2019」入選
2018年「第39回三菱商事アート・ゲート・プログラム」入選
2018年「第13回タグボートアワード」入選
2017年「第37回三菱商事アート・ゲート・プログラム」入選
2017年「第13回世界絵画大賞展」協賛者賞伊研賞
2017年「ギャラリーヘ行こう2017」入選
2017年「第34回三菱商事アート・ゲート・プログラム」入選
2017年「武蔵野美術大学修了制作展」研究室賞
2016年「第31回三菱商事アート・ゲート・プログラム」入選
2015年「VOL.4 U35・500 ARTISTS JAPAN EXHIBITION」入選
2015年「五美術大学交流展2015」アジア創造美術展奨励賞
2015年「Heart Art in FUKUOKA ~新感覚展~」福岡市長賞
2015年「TURNER AWARD 2014」優秀賞
2015年「武蔵野美術大学卒業制作展」優秀賞
2014年「第22回三菱商事アート・ゲート・プログラム」入選
2014年「TURNER AWARD 2013」優秀賞
2012年「第7回タグボートアワード」入選
2011年「第6回西会津国際芸術村公募展2011」西会津町商工会長賞(一般の部)
2011年「Tokay Gecko Award 2011」入選
2010年「第27回FUKUIサムホール美術展」FBC福井放送賞 他
スカラシップ
武蔵野美術大学前田常作賞
神山財団芸術支援プログラム奨学生
ギオン芸術スポーツ振興財団奨学生