エンライトメントにてアートディレクター、グラフィックデザイナーとして活躍する傍ら、アーティストとしても精力的に活動する中島友太。
日常生活での出来事や現象を撮影した写真、ネットやSNS上の画像、古本の切り抜きなど、自身のフィルターを通しインプットとアウトプットを繰り返し、ペインティングや再コラージュをしてキャンバスに落としこみます。
中島友太Yuta Nakajima |
tagboat Art Fair 2024に出展された作品は、過去作を繋ぎ合わせて再構築した作品ですが、どのような経緯で生まれたのでしょうか
中島友太(以下、中島)ふと過去作を見直してみると最初の印象と全然違うように感じ、じゃあこの部分を消してみようとか、ここに新しくこういう絵を描き足したらどうか、みたいな作品の再構築をしていると過去の自分がオーバーラップし、イデオロギーはゲシュタルト崩壊をまねき、一瞬にして作品が時空を超え、まさに過去と未来の「synchronicity」が起こったのです!!………
再構築された過去作「Fafrotskies」2023、「Dosojin」2023
tagboat Art Fair 2024に出展された作品:「MU.1」木枠なしキャンバスにミクストメディア;125x 270 cm
中島 本当は作品を保管するスペースが無くなったので過去作を再利用するしかなくなりました。広いアトリエを誰か僕にください。
所狭しと食品や家電、食器などと同じ空間に同居している作品たち(その1)
tagboat Art Fair 2024で空間に工夫を凝らした挑戦についてお話をお聞かせください。
中島 そもそもキャンバスが木枠に貼られている状態と貼られてない状態で、同じ絵なのにどうして見え方や感じ方が違ってくるのか?そこに疑問を持った小生は一度筆を止め、全てのキャンバスから木枠を剥がしました。するとどうでしょう、たった数センチの奥行きの有り無しが会場全体をオルタナティブにマッピングし、気分はまさに世田谷のアンゼルム・キーファーよろしく。この数センチは作品にイリュージョンを起こしたのです!!………
tagboat Art Fair 2024展示風景
中島 本当は作品を保管するスペースが無くなったので過去作の木枠とキャンバスをバラバラにして新しい大きい木枠を買う予算も無くそのまま直接壁に貼る事にしました。広いアトリエを誰か僕にください。
所狭しと食品や家電、食器などと同じ空間に同居している作品たち(その2)
映画や古本、ネットで拾った画像などからサンプリングした素材をコラージュする制作過程において、特にどのような点を意識されていますか?
中島 過去の全ての経験や良い記憶も悪い記憶も今の自分の物事の選択や性格を形作っているので、近所の中村くんが飼っていた犬のコロが何故か僕にだけいつも牙を剥き出しにして吠えてきて、全然懐かないというような小学生の頃の苦い思い出も全てアートなので、なるべくその記憶のピースを見逃さないようにサンプリングの手法をとっています。
実家の近所の中村くん家の愛犬コロちゃん
制作の際、目的や意味よりも感覚を重視されているという印象を受けますが、制作中に最も大切にしていることは何ですか?
中島 製作中は絵の事はあまり考えていなくて描きながら聞いている音楽やラジオの事に気がいってしまい、だいたい全裸かパンいちで歌いながら踊っています。特によく聴いてるラジオ番組は「タブレット純 音楽の黄金時代」(ラジオ日本で毎週土曜日の18:00 – 20:00)です。
最も大切にしているのはキャンバスのすぐ横でお米を炊いている妻の大事な新品の炊飯器に絵の具がつかないように細心の注意をはらって制作しています。
所狭しと食品や家電、食器などと同じ空間に同居している作品たち(その3)
戦後から80年代にかけての大衆文化や芸能に特に魅力を感じるとおっしゃっていますが、具体的にどのような要素が作品に影響を与えているのでしょうか?また、他に影響を受けた物事やアーティストについても教えてください。
中島 昨年最後のメンバーの犬塚弘さんが亡くなられましたが、クレイジーキャッツ。これまたブーちゃんと加トちゃんを残すのみとなったドリフターズ。大衆がひとつの物事に熱中して、次の日の学校ではみんなが昨日のテレビの話をしているような時代ってもう二度と来ないと思うんです。みんなが大衆に疑いを持つようになった。その中で僕は過去のオブジェクトを拾ってきて絵を描きます。二度と来ない消えていくものに興味を持っています。左卜全なんかしびれますね、どぅびどぅばぁ〜。森繁久彌もかっこいい。
あと昨年ロンドンのホワイトキューブでみたアンゼルム・キーファーの個展「Finnegans Wake」も衝撃でした。これがアートなのか!と驚愕しました。こうみるとおじいちゃんが好きですね。
アンゼルム・キーファー個展 「Finnegans Wake」 2023 (撮影:中島友太)
今回の3人展「synchronicity」で展示される新作について教えてください。
中島 今回も大枠の作品のありかたは変わらないのですが、今までの描き方にさらに自分自身の現在の心境も素直に入ってくれればいいなと思っています。あとやはりグループ展という事でカネコさんと新埜さんのお二人に影響されてくる部分は無意識に出てくるかと思います。それがどんな風に作品に出るかは会場で作品が並んだ時に自分でも気づくと思います。
「PRINCESS TENKO」キャンバスに油絵具;60 × 20 × 3.7cm
3人展「synchronicity」で展示される新作
今後の制作において挑戦したいことや意識していきたいことを教えてください。
中島 tagboat Art Fair 2024での木枠からはみ出た表現は自分の中でもスリルもあって興奮できたポイントなので今後はインスタレーションのような形かはわかりませんが、まずまず単純な絵の展示だけではなくパフォーマンスを含めた表現もこれから模索していきたいと思っています。
中島友太Yuta Nakajima |
アーティスト、アートディレクター。映像作家。エンライトメント所属。
アーティストのヒロ杉山に師事。アートとデザイン、映像作品、コマーシャルワークなども多く手がけ、ボーダーレスに活動。
【主なグループ展】
2023年 「WAVE」 JAPAN HOUSE(ロンドン)
「Art Fair GINZA tagboat x MITSUKOSHI」 銀座三越(東京)
「UNFAMILIAR IMAGES」 Empathy Gallery(東京)
「WAVE 2023-24」 Lurf MUSEUM(東京)
2024年 「tagboat Art Fair 2024」 東京ポートシティ竹芝(東京)
【主な個展】
2023年 「CERTIFIER」 X8 GALLERY(東京)
「TRANSFER」 YUGEN Gallery(東京)