タグボート取り扱いアーティストの皆さんに、インタビューに答えていただきました。
アーティストになったきっかけ、作品制作方法、作品への想いなど、普段は聞けないようなお話が満載です。
毎週更新していきます。ぜひご覧ください!
小さいころから絵を描くのが好きでしたか?
幼稚園~小学校時代は田園地帯で育ったためいつも田畑や林で走り回る子供時代でしたが、祖母に取っておいてもらったチラシの裏や包み紙など、描けるものならどんなものにでもクレヨンやマジックや鉛筆で落書きをしていました。
描いていたのは 模様や架空の街の地図や迷路や水道管でした。花や動物や人間、当時小学生の女子の間で流行っていたぬり絵やお姫様は描いていませんでした。今思えば、この頃から描く題材があまり変わっていないですね。(笑)
美術の道に進むことになったきっかけは?
高校3年生になるまで美術の授業以外では絵を描いてはいませんでした。絵画よりも漫画や小説に興味を持ち、図書委員になり雑誌の編集や、漫研の友人の製本の手伝いをしていて、漠然と司書か書籍に関係する仕事をしたいと思っていました。絵の勉強をした方が将来役に立つと思い、担任の先生に画塾を紹介してもらいました。そこで美大受験生たちと一緒に一年間デッサンや基本の平面構成を学び、デザイン科に進学することに決めました。
初めて作品を発表したのはいつ、どんなときですか?
大学を卒業して印刷会社のデザイン室に入社し、製版や印刷のプロセスを経験してからプロラボに転職しました。この頃はデザインよりも写真に興味が向いて、常にカメラを持ち歩いていて、PCを買ってHPを作ったり写真展に参加したりしていました。
絵を発表したのは社会人になって10年以上経ってからで、グループでデザインフェスタに出展し、2011年のメインビジュアルアーティストに選ばれて公式パンフレットやチケットのイラストを描きました。
しばらくは雑貨制作や小さいサイズのイラストが多く、絵を額装して展示したのは2014年のタグボート主催のTDW ART FAIRが最初です。ブース販売で外国の方に2点購入していただき、絵画販売にも興味を持つきっかけになりました。
制作する日はどのようなスケジュールで進めていますか?
夜自宅に帰ってからの数時間か休日です。
時々イラストの仕事を入れて、合間にフリーで作品を描きます。
仕事のある日は、空き時間を題材探しや資料集めに使い、ラフスケッチしています。同時にいくつかの作品を進行させてアイデアを詰めていきます。スケジュールを見て、朝から時間の取れる日を決め、集中して絵を完成させます。
作品の制作手順や方法などを教えてください。
私の場合は大体先にシリーズテーマと完成サイズが決まっています。
甲虫切手を例にとると、日本の切手を架空シリーズ化したものなので、まず切手の金額が決まっています。入れる文字が決まっているので構図はそれに合わせて決めます。虫を図鑑で調べたり、道具を決めてスケッチしながらレイアウトを決めていきます。
下絵は必ず紙に原寸大で描き、フリーハンドで骨書きします。以前は昔から手に馴染んでいた漫画用のカブラペンと筆ペンを使っていましたが、最近はインクと紙を変えてにじみの少ないガラスペンを使っています。
下絵をスキャナーで取り込み、デジタルで色版を作ります。この過程は多色刷りの分版作業と全く同じです。
個展やイベントで私の絵を見た方にシルクスクリーンですか?とよく聞かれますが、手書きの線のブレや紙の滲みとマットな発色にはこだわっていて、気に入った色が出るまで何度もやり直します。刷る度に色調整をしたり細部を書き足したりするので、デジタルですが実は一枚ずつ違うんですよ。
現在、力を入れて取り組んでいること
展示会や台湾の個展でたくさんの外国の方とお話しする機会を得て、日本の文化、芸術、サブカルチャー分野に高い関心を持っていることを知りました。
それに比べ、自分はどれだけ自分の育った国の文化を知っているだろうかと顧みて、今まで見過ごしてきた日本映画を見たり、古典文学を読み返しています。
古典を学ぶということは日本という枠の中にとどまることではなく、先人たちが作り上げて来た価値観、美意識を検証することで自分の立ち位置を再認識し、再構成することだと思います。
みんなに言いたいこと
学生時代は、窮屈で型どおりにしか描けない自分の絵が好きになれませんでした。私は一旦折った筆をまた持つようになるまでに随分寄り道をしましたが、その時間は無駄ではなく、最近ようやく自分の絵が描けるようになったと思っています。
作風・技法
ペン画による繊細な描線にデジタル処理を加えた独特の筆致と世界観で構成された作品を制作。
切手、燐寸箱、加留多、テキスタイル、図鑑、道具など身の回りにある雑貨、図案、タイポグラフィなどに着想を得て、制作された作品はユーモアと親しみやすさを感じさせる。
2013年から描き続けている「甲虫ノ世界」は日本の甲虫を題材にした架空切手図案シリーズ。
作品は 水彩画紙にガラスペンで描画。下絵をデジタル処理で6~20枚の色版に分け、再合成し、版画用紙に出力。顔料インクの高彩でマットな質感がシルクスクリーン印刷に近い発色を生み出している。
略歴
東京造形大学造形学部卒業。
卒業後は印刷会社デザイン室、写真ラボに勤務しながら街をテーマにした写真展等に参加。
2010年頃から絵を描き始め、ユニット名でアートイベント等に出展。
2011年「Design・Festa vol.33」メイングラフィック・アーティスト に選出され、チケット・パンフレットデザインを担当。
以後、益田由二の名義で画家・イラストレーターとして活動を開始。
2015年台湾にて初個展。
主な展示・受賞歴
・2012年「HB Gallery File Competition Vol.22」特別賞・同受賞者展 (HB Gallery・東京青山 )
・2012年「第一回東京装画賞」一般部門入選
・2013年「タイムカプセル~未来に届けるアート展~」(東京・世田谷美術館)
・2013年「Geisai #19」審査員賞ノミネート・Point Ranking入賞
・2013年「Geisai #19」受賞者展(Hidari Zingaro Gallery,Kaikai Gallery・東京中野)
・2014年「 Yuni Masuda Illustration Exibition」(Contenart Gallery・東京新宿)
・2014年「TOKYO DESIGNERS WEEK 2014」TDW ART FAIR出展
・2015年「甲虫切手画撰ーコウチュウキッテエエラミー」台湾巡回個展(高雄市・No.18空島gallery)
・2015年 TOKYO ART BOOK FAIR 出品
・2015年「甲虫切手画撰ーコウチュウキッテエエラミー」台湾巡回個展((台中市・smohouse gallery )
・2016年「甲虫切手画撰ーコウチュウキッテエエラミー」台湾巡回個展((台北市・小路上藝文空間)
・2017年「仕事の虫~甲虫切手画撰展~」個展(gallerìa青猫・東京)
・2018年「in the daily room」展(Gallery Face to Face 東京)
他、グループ展、アートイベントに参加。アート雑貨の制作等。