タグボート取り扱いアーティストの皆さんに、インタビューに答えていただきました。
作品制作にまつわるあれこれや、普段は聞けないようなお話などが満載です。
毎週更新していきますので、ぜひぜひご覧ください!
小さいころから絵を描くことが好きでしたか?
母が美大出身だったこともあって、記憶にない頃から絵を楽しんで描いていたようです。
また描き続けると上手になるので褒められる、褒められると嬉しく楽しいので
さらに描く、の繰り返しでした。4年生の頃には文集に「将来の夢は画家」と書いていました。
スケッチブックではキリがなく、与えられたチラシの裏に描くような状態でしたので「何か欲しいものはある?」と聞かれると「裏も表も白い紙」と答えるような子でした。
今のスタイルの画風になったのは修士課程1年次の時です。夏休みの帰省時、時間を持て余し落書き感覚で描いたカボチャのスケッチを後期が始まりアトリエに何気なく置いておいたところ、助手の方が見つけ
「この描き方がとても面白いから、4日間学校を休んでいいのでF6サイズの日本画に仕上げて来なさい」と仰ってくださり、一気に仕上げたところ
楽しく無理なく、さらに発見が多くワクワク描ける事を発見し、それ以来この様なスタイルになっています。あの一言が無ければ今の様な形で制作を続けていたかは分かりません。
子供のころの写真
美術の道に進むことになったきっかけは?
何かしら美術、あるいはモノづくりに関する仕事に就くものだと小さい頃から思っていたので特にこれという大きなきっかけはありませんでした。
初めて作品を発表したのはいつ、どんなときですか?
2011年秋の初めての個展です。大学院終了後、グラフィックデザイン会社に15年以上勤めましたが、デザインの仕事というものが自分なりに身に付いて来た頃に
修士まで出たのに今や殆ど絵を描かず、これでは自分は「日本画の人」ではなく「デザインの人」になってしまうという焦りから、個展を開こうと直ぐにギャラリーを抑えました。
会社員時代は制作の時間を作り出すのが難しい状態でしたが、逆に短い時間でも集中して描けていた気がします。
自分の思いをひたすらぶつけるアートとは異なり、デザインは「対・人」が最も重要とされる分野ですので、結果、構図の取り方や色のバランス、飾った時の見え方の想像など、プロとして活動するに当たり日本画制作に大いに役立った様に感じます。
制作する日はどのようなスケジュールで進めていますか?
特に何時から何時と決めているわけではありませんが、出来るだけ陽の光の下で描きたいと思っているので日中制作できる状態にある時は出来る限りの時間を割いています。
ただ、時間はあるけれど筆が乗らない、という事もあるので「描きたいテンション」が高い時は気が済むまで描くことはあります。大体そういう時に仕上がった作品の方が自分で見ても面白いです。モチーフの取材に関して、特に植物や野菜果物類は時期を逃すと一年間取材が出来ない状態になってしまうので、旬のものを見つけた時はどんなに忙しくてもスケッチだけはしておく様にします。
©️Masumi Kuramochi
作品の制作手順や方法などを教えてください。
大きな展示を行う際は、その都度テーマを決めます。とにかく描きたいものが日常にも世界中にも溢れていてキリがないので、あえてテーマを決め、一定期間 自分が集中して描くべきものを絞るようにします。例えば次回の個展テーマは「熱帯雨林」にしようと決めたら、その日から個展の開催日まで「熱帯雨林」にまつわるモチーフを探し、スケッチ、制作に入ります。例えば旅に出る場合も取材の為に旅先に南国方面を選んだり、フルーツも極力南国産の物を食べる、各地の温室植物園に取材に行くなどして、自分の生活自体を熱帯雨林仕様にします。
モチーフ選びで最も重視する点は色です。トレーニングと言うのでしょうか、日常生活の中で自然と色そのものや色の組み合わせが綺麗なものが目に入ってくる様になっているので、普通に街を歩いていても視線の先に描きたいものを見つけ、その都度足を止めるという事はしょっちゅうです。
主に植物が多いですが、中でも綺麗で何の傷もない状態のものよりも、何かしら傷があったり、虫食いがあったりと一つの個体の中に色々な要素のあるものに惹かれます。例えば野菜であれば、スーパーで売られている綺麗な状態のものよりも、育ちすぎて畑の横に捨てられている様なものに魅力を感じます。
制作するにあたっては、とにかく取材、スケッチを大事にしています。植物であれば咲く時期、その枝がどう付いているのか、花びらの枚数、枯れ方などなどを知ることが一番大事で、ある意味そこがしっかり出来れば既に一枚仕上がったも同然な感覚です。もちろん絵なのでそのままそっくりではなく脚色する場合も多々ありますが、私の場合は一度その行程を経ないと抽象的に表現する事も出来ません。
現在、力を入れて取り組んでいること
上記の通り、本画製作時に困らないようモチーフの取材をしっかりとする事。
取材の際は横着しない事。例えば、同じぶどうを描くのでもスーパーで売られているものを買って描くよりも、ぶどう畑になっているものを描く方がはるかにイキイキとしたものが描けます。その辺りの手間を惜しまない事が絵の仕上がりにもつながる気がします。
また、自分の制作以外に子供向け造形教室や、大人も参加出来るワークショップなどを定期的に行なっているのですが、その時間も大切にしたいです。上手に作る、描くという事ではなく、物の見え方や手を動かすことの面白さを体感してもらう事が目的ですが
年を重ねる毎に、僅かではありますが自分が持っている技術や作ることの楽しさを少しでも伝えられればと思う様になって来ました。また教える立場になる事で見えてくることが自分自身の制作にもとても良い影響を与えてくれるので、大切にしたい楽しい時間です。
ワークショップ
子供向け造形教室
将来の夢、みんなに言いたいこと
なぜ絵を描くかは人それぞれですが、私の場合は自分の作品が日常生活に溶け込み、
またその存在が毎日を明るく活力を与えるものであったり、気持ちを落ち着かせるものであることを理想としています。幸い描きたいものが世界中に溢れており、手が追いつかない状態ですので、そのメンタルとそれに追いついていける健康な体を維持して行くことがまずの目標です。夢としては海外の方にも作品を見て頂き、純粋な感想を聞きたいという気持ちもあります。絵を通して沢山の方に元気を与えられれば、とても嬉しいです。
若い頃は早くに脚光を浴びた同世代のクリエーターと比較をしては落ち込む時期もありましたが、今考えると私の場合は今になってようやく形になって来たことがとても幸運だったと思います。この年齢だからこそ描ける様になった世界というものがありますから、もし自分の状況に焦っている方は、人と比較をしないこと、また自分にとって無理なく続けられるスタイルを継続する事、自分がやっている事だけに集中する事が良い結果につながるのではないかと思います。まずは楽しくある事が一番だと思います。
HP: http://yuko-kurihara.com
Instagram: @kuri_nihonga
Facebook: @yukokuriharaart
1976年生まれ
小学生時代をシンガポール、中学時代を千葉、高校時代をアメリカなど各地を転々。
1994年 筑波大学芸術専門学群日本画コース入学
1998年 筑波大学卒業制作展 筑波大学芸術賞受賞
1999年 筑波大学修士課程芸術研究科日本画専攻 IOC主催オリンピックアート&スポーツ2000日本代表
2000年 佐藤美術館奨学生展 トリエンナーレ豊橋 入選 屏風に描く大阪ビジョン21 佳作
修士課程を卒業後、都内でグラフィックデザイナーとして活動するかたわら日本画制作を継続中。
2011年 ギャラリーLE DECOにて初の個展「FEAST」開催
2013年 BUNKAMURA BOX GALLERYにて個展「FEAST at Dragon Palace」開催
2016年 BUNKAMURA BOX GALLERYにて個展「FEAST in the woods」開催
2017年 竹ノ塚「昭和の家」にて個展「わたしの四季」展開催
2018年 BUNKAMURA BOX GALLERYにて個展「FEAST in the tropical rain forest」開催
都立大学 noieギャラリーにて個展「栗原由子 日本画展開催
2019年 BUNKAMURA GALLERYグループ展 「日本画解放区」参
いつき美術画廊 グループ展 「0号の世界展」参加
arflex東京にて個展「おのずからしかる」開催
都立大学 noieギャラリーにてグループ展「Haru no Uta」参加