大谷陽一郎は桑沢デザイン研究所を卒業後、東京藝術大学大学院美術研究科修士課程を修了。
漢字が持つ意味と音を駆使しながら、一文字一文字を点描のように画面に配して、一枚の絵画を作り上げます。
近寄って見ると一つ一つ意味と音を持つ漢字。しかし離れて見ると、文字の言葉や意味は分解され、響きあいながら、無数の文字の総体が織りなすひとつの世界として広がります。
大谷陽一郎 Yoichiro Otani
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ー今回制作工程をご紹介いただく作品は何ですか?
水面をモチーフにした[hi][kou][shi]というシリーズの作品([hi][kou][shi] #9)になります。
tagboat Art Fair 2022 で展示する作品です。
ーその作品のモチーフを選んだ理由はなんですか?
境界を描きたいという思いから水面をモチーフに選びました。
水鏡という言葉もありますが、水面は周りにあるものを鏡のように映す作用があります。
でも、鏡のようにそっくりそのまま映すのではなく、水面に映り込むイメージは曖昧で流動的です。
私たちがいる世界とは別の世界が水面の向こうには存在しているように感じました。
この作品では無数の漢字を配置して絵を描いていますが、
用いた漢字の種類はタイトルにもなっているように、発音から選んでいます。
hiはあちら側という意味の「彼」から、kouは水面に鏡の作用を与える「光」から、shiはこちら側の「此」から取りました。
この3つの漢字が軸となり、共通の発音をもつ漢字に範囲を広げていって、意味を多様にし、意味と意味の結びつきが無限に広がることで、イメージそのものを曖昧にしていきます。
境界としての水面に着想を得て、この作品を制作しました。
ーその作品はいつ、どのように思いつきましたか?
以前中禅寺湖に行ったときに見た湖の水面が印象的でした。
水面には空や雲、木々が映り込み、部分的にチラチラと光を反射させながら湖のやさしい揺蕩いによって、そのイメージが揺らいでいる。
その抽象化されたイメージがとても美しかったのを覚えています。
作品の水面は中禅寺湖でも、特定の場所を描いたものではありませんが、その時から意識的に水面を観察するようになりました。
ーその作品は、どのような手順で制作しましたか?
まずはコンピュータを使って大量の漢字を配置していって水面を描き出します。
一枚の絵に数万、数十万の活字を配置することになるのでとても根気のいる作業です。
完成したデータを、ジェッソとアクリルで下地を描いたキャンバスに、uvインクでレイヤー上に転写します。
その上から、アクリルやメディウムを重ねていき、作品を完成させます。
ーその作品はどこに注目して観てもらいたいですか?
作品との距離を意識しながら、観てもらいたいです。
遠くから見るとグラデーションのかかった水面のイメージですが、近くで見ると無数の漢字が目に入ると思います。
全体視と部分視を繰り返すことで、鑑賞者のなかでインスピレーションを広げていってほしいです。
大谷陽一郎がtagboat Art Fair 2022に出展致します。
tagboat Art Fair
2022年3月11日(金) 16:00-19:00 プレビュー
*インビテーションをお持ちの方、もしくは当日チケットをご購入いただいた方はどなたでもお入りいただけます。2022年3月12日(土) 11:00-19:00 パブリックビューイング
2022年3月13日(日) 11:00-17:00 パブリックビューイング
会場
〒105-7501
東京都港区海岸1-7-1 東京ポートシティ竹芝
東京都立産業貿易センター 浜松町館 4F,5F
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大谷陽一郎 Yoichiro Otani
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1990年大阪府生まれ。桑沢デザイン研究所卒業。東京藝術大学大学院美術研究科修士課程修了。2018年から2019年北京の清華大学へ交換留学。作品集に『雨』(リトルモア)、絵本に『かんじるえ』(福音館書店)がある。
主な展覧会
2021 未来可期的日本新鋭藝術家們(上海梅龍鎮伊勢丹、上海)
2021 孤帆の遠影(MONTBLANC銀座本店, 東京)
2021 ミライノシブヤウィーク(渋谷西武、東京)
2020 DenchuLab.2019(旧平櫛田中邸アトリエ, 東京)
2020 いんすぴ展(パークホテル東京, 東京)
2020 0101 Art Fair(世貿一館, 台北)
2019 アート解放区DAIKANYAMA(Tenoha代官山, 東京)
2018 BAY ART(MixC Shenzhen Bay, 深セン)
2018 Art Expo MALAYSIA(クアランプール)
2018 crossword(代官山T-SITE, 東京)
2017 みなとメディアミュージアム(百華蔵, 茨城)
2017 IAG AWARD EXHIBITION(東京芸術劇場ギャラリー, 東京)
パブリックアート
MixC Shenzhen Bay, 深セン
賞、助成
2020 NONIO ART WAVE AWARD グラフィック・イラストレーション部門 グランプリ
2019 DenchuLab.2019 採択
2018 東京藝術大学修了制作 サロン・ド・プランタン賞
2017 IAG AWARDS IAG奨励賞