デジタルとアナログが融合した独自のアート作品を生み出す月乃カエル。
IT企業にて活躍する傍ら独学で3Dアートを始め、本格的に活動開始してからは国内外で精力的に作品を発表し続けています。
Independent Tokyoでも審査員特別賞、タグボート特別賞を受賞するなど高い評価を受け、先日タグボートで販売された初のNFT作品は、好評のうちに完売となりました。
アーティストを目指したきっかけや、作品に込められた思いに迫ります。
月乃カエル|TSUKINO KAERU |
ー絵を描き始めたのはいつ頃ですか?きっかけはありましたか?
子供のころから絵を描くのは好きだったのですが、それを職業にしようとは思っていませんでした。それでも会社員時代、なんとなく「定年後に時間ができたら絵でも描こう」と思っていました。10年くらい前に体調を崩して半年間休職をすることになり、休養していた時に、「あれ?いま時間あるじゃん」と気づいたんです。
高校生の美術の授業で静物画を描いたのですが、いつもなら「この辺で終わりにしよう」と思う段階から、更に描き込み続けたところ、先生にとても褒められたことを思い出し、時間をかけてペン画を作成しました。
40代後半のことです。
ーアーティストを目指そうと思ったのはいつ頃ですか?きっかけはなんですか?
2014年に、五反田の「ギャラリー201」というところで最初の個展を開きました。
準備を進めていく過程や、個展中にお客様と話をしていく中で、少しずつ作家としての自覚が芽生えていったように思います。またその後、グループ展などに参加することで作家仲間が増え、刺激を受けたことも大きいと思います。
翌年に、別のギャラリー主催のグループ展に参加したときに、そのギャラリーで作品を取り扱いたいというお話をいただき、覚悟が決まりました。
個展風景 gallery201
ー作風が確立するまでの経緯を教えてください。
最初に描いた作品は、モノクロのペン画でした。細密だったので彩色しづらくデジタルに移行するためにイラストレーターを「ベジェ曲線ってなによ」という状態から勉強しました。
そのうちに子供の頃に好きだった図画工作の真似事がしたくなり、デジタルイラストをもとに半立体作品を作るようになりました。さらに自分の好きな世界観に近づけるために、多様な素材を組み合わせレジンでコーティングすることで、『多様性の肯定』を表現するようになりました。
ー作品を発表し始めたのは何時頃ですか?発表するまでにどういった経緯がありましたか?
2014年に、当時私が勤務していたの会社の同僚のお宅に飾ってあった私の作品を、五反田にある「ギャラリー201」のオーナーにご覧になって頂き、初めての個展開催が決まりました。私の同僚とギャラリーのオーナーとは友人同士だったんです。
チャンスはどこに転がっているかわからないものですね。
ーアーティストステートメントについて語ってください。
昨今、インターネットやSNSの台頭は人々を繋げ、世界の可視化に貢献する一方で、人は自身の「見える」ものや、「見たい」もののみに繋がり、「見ているのに見たくない」ものは無視され、分断をますます加速させる側面があるとも言われています。
これまでは、多様な素材を組み合わせてレジンでコーティングすることで、『多様性の肯定』を表現してきましたが、最近では、アクリル板やミラーを加工したものを作品に取り込んでいます。
その理由は、アクリル板の透過性は「そこにあるが見えないもの」を、ミラーの反射性は「そこにないが見えているもの」を表現するのに適しているからです。
「見えないもの」を無視し、「見えているもの」のみを信じることが分断や対立を生むのであれば、「見えないもの」の存在を認めることが、分断の解消への第一歩になるのではないか。
この世界は、いくつもの見えない景色が重なり合ってできています。
私は、この『見えない階層』の存在を感じることで、私が存在するこの世界についてもっと深く知ることができると考えています。
個展風景 TERRADA ART COMPLEXⅡ contemporary tokyo
ー作品はどうやって作っていますか?技法について教えてください。
原画や設計図はパソコンでデジタルデータとして作ります。
原画を印刷したものを切り絵のようにカットしたものや、アクリル、ミラー、金属といった異素材を組み合わせて、レジン(透明樹脂)でコーティングします。更にラメパウダーやラインストーンで装飾したミクストメディア作品になります。
ー作品制作で困難な点や苦労する点を教えてください。
二液を混合攪拌して24時間で硬化するレジンを使っているため、制作中は作品を平置きすることしかできず、大きな作品を作ろうとするとスペースが必要になります。
また、私の作品の特性として、完成作品の質感を画像で伝えづらいという側面があります。
正面から撮った画像では立体感が伝えづらかったり、レジンのコーティングによる光の反射で撮影にはいつも苦労します。
ー今後の制作において挑戦したいことや意識していきたいことを教えてください。
これまでは、壁掛けタイプの半立体作品を中心に作ってきましたが、立体作品やインスタレーションなどを通じて表現の幅を広げていきたいと思っています。
個展風景 TERRADA ART COMPLEXⅡ contemporary tokyo
月乃カエル|TSUKINO KAERU |
■経歴
1963年生まれ
1986年 IT企業に就職、システムエンジニアとして従事
2009年 趣味としてデジタルイラスト制作開始
2014年 独学で3Dアート制作を開始
2019年 前職を退職し、専業作家として活動開始
■おもな出展歴:
[個展]
2014.05 北品川:gallery201
2016.06 原宿:ガレリア原宿
2018.07 原宿:ガレリア原宿
2019.09 北品川:gallery201
2020.08 原宿:ガレリア表参道原宿
2021.04 北品川:gallery201
2021.08 天王洲:TERRADA ART COMPLEXⅡ contemporary tokyo
2021.10 大阪:s.a.s EGAWO
[アートフェア]
2016.07 アートフェア『Independent2016』に出展(大邱特別賞受賞)
2016.11 韓国:大邱 Exco にて『テグアートフェア』に出展
2019.04-10 中国にてアートフェアに出展 (成都、深圳、南京、北京)
2019.08 アートフェア『Independent TOKYO 2019』に出展(タグボート特別賞受賞)
2019.10 アートフェア『unknown asia exchange OSAKA』に出展
2020.12 アートフェア『Independent TOKYO 2020』に出展
2021.03 アートフェア『TAGBOAT ARTFAIR』に出展
2021.04.30-05.03 中国:北京にて、『ART北京 』に出展
2021.06.10-13 中国:北京にて、『JINGART』に出展
2021.08 アートフェア『Independent TOKYO 2021』に出展
2021.11 中国:上海にて、『上海021』に出展
[その他出展歴]
2017.06 国際芸術コンペティション『Art Olympia展覧会2017』に出展(入選)
2020.09 銀座:阪急メンズ東京 tagboat gallery にて、二人展を開催
2021.03-05 日本橋三越前:福島ビルにて、『アート解放区』に出展