タグボート取り扱いアーティストの皆さんに、インタビューに答えていただきました。
作品制作にまつわるあれこれや、普段は聞けないようなお話などが満載です。
毎週更新していきますので、ぜひぜひご覧ください!
トップ画像:2017スパイラルガーデン
Kanazawa Newly arrived Art &Craft 2017 by Rempah Rempah
小さいころから絵を描くのが好きでしたか?
漫画?を幼い頃に描くのが好きでした。
アンパンマンにオリジナルキャラを混ぜたお話しとか。工作も好きでした。小学生の時に絵で賞をもらって嬉しかった記憶があります。
美術の道に進むことになったキッカケは?
高校までは映画が好きで、そちらも考えましたが、具体的な進路が決めれず、美大に進学しました。
大学で彫刻を専攻しますが、当時現代美術自体に興味を持てず2年で中退しました。20代はアルバイトを転々とし、ゲーム会社でCGデザイナーを経てフィギュア原型師に弟子入りして1年で独立したのが30歳頃。その後フィギュア原型から企画デザイン、デザイン雑貨の商品開発などに携わり、40歳頃に何かやり尽くした感じになりました。
その頃仕事では消化出来ないものを音楽表現としてDTMで作曲を始め、自己表現の面白さに気付きました。同時期に瞑想やスピリチュアルな神秘体験を頻繁に体験して、精神世界に興味を持つ様になりました。瞑想中に見るビジョンや夢とも違う幻覚の様な体験など、いったいこれは何なのか?という疑問が湧いて、人間の新しい領域を体験した驚きを消化する為に絵を描き、音楽も作り、彫刻を始めました。何故か一周回って美術に興味が再び湧き出し、現代美術家として生きていきたいと思う様になりました。
初めて作品を発表したのはいつ、どんなときか?
2013年タグボートのアートフェアです。
会場の作家さん達とのギャップに驚きました。皆さん表現が一つに絞られていて、自分は多品種で音楽付きという(笑)。その後徐々にですが、自分の表現と現代美術の関係を考えた創作にシフトして来ました。
制作する日はどのようなスケジュールで進めていますか?
彫刻、絵画、コンセプチャルワーク、キュレーションワークから主に1日1種に絞り、集中出来ない時は他のジャンルの構想に充てる事が多いです。
作品の制作手順など
偶像彫刻は立体化する図面的な素描の前に落書きの様なスケッチを大量に描きます。
偶像彫刻のスケッチとドローイング。これを基に彫刻に入る。写真は準備中の作品。
テーマをある程度決めて、2日程集中して100種前後のアイデアスケッチを出してから、ピンと来るモノに絞って形状を詰めていきます。デジタルモデルと手の塑像を両方使いますが、流れは同じです。
デジタルモデリングの様子。この後に3Dプリンターで出力、表面を樹脂でコーティングして凹凸を手作業で仕上げ、ウレタン塗装後に研磨して仕上げる。3Dプリンターは簡単なイメージがありますが、逆に大変なぐらいです(笑)
現在製作中の新作。石粉粘土で彫刻、カシュー漆で仕上げる手法を試みている。
仕上げにはウレタンや樹脂、カシュー漆、金箔、鉱石や天然石など伝統工芸素材と現代的材料を使って質感を追求しています。出身が伝統工芸の盛んな金沢で高校は工芸科だった事もあり工芸感覚が意識して無くても表面に出て来るのだと思います。
Solo exhibition 「Alternative Idol」 -オルタナティブアイドルーもうひとつの偶像
2016
偶像と呼んでいる黒いモデルは落書きから生まれました。漫画やサブカル文化の影響もありますが、もっと古い宗教美術の歴史も踏まえた現代の偶像美術を目指しています。偶像美術が現代でキャラクター文化に変化したというのが私の視点です。
地球に乾杯 酒呑童子対紙幣侍衆 2017
紙幣を用いた絵画シリーズは、引用する美術素材の選定から始め、ピンと来るネタは普段から集めておいて、構想段階で紙幣コラージュの意味や効果を考えて制作します。主に浮世絵を素材に偶像を混ぜてアレンジしています。複製される事や大衆性など紙幣と浮世絵に共通する特徴に注目しています。
制作中の紙幣絵画。本物の紙幣をカットしコラージュして制作している。
Automatic Wave (葛飾北斎 富嶽三十六景 神奈川沖浪裏)変換 91×65㎝
どうして本物の紙幣を使うのか?という質問をよくされます。お金は社会を動かしている基本ツールですが、文明史の中で誰が発明したのかはっきりしてません。現代を理解する上で最も謎の部分がお金への信仰だと思い、その背後に隠されている何かに惹かれて素材にする様になりました。
赤と青のチケット
Red and blue tickets
(ミケランジェロ・システィーナ礼拝堂天井画アダムの創造)変換
抽象絵画やコンセプチャルワークは、前回の結果から次のアイデアが生まれるので、徐々に変化しています。それに逆らったら進化出来ないので変化を受け入れるようにしています。
World spin 世界回転 2018
世界の100カ国紙幣を切って混ぜて、見ないで選び貼っていく、オートマティックペイントのシリーズ。
瞑想絵画は、自分の中で最も謎な部分で、インスピレーションの源泉になっています。瞑想体験のスケッチは現在2000枚程になります。スケッチから惹かれる素材を絵に変換する事で瞑想中の深い感覚を再現しようと試みています。
「 Earth base 」 地球の基底 2016
キュレーションは頂いた機会を最大限活かすようにしています。自分では消化出来ない美術実験アイディアをメモしておき、そのストックから企画に合わせてアレンジしています。状況に自分のアイディアを混ぜ、展示を作る醍醐味は、自作では出来ない表現領域を提供してくれます。美術批評的なキュレーションにも関心がありますが、自分の特徴は未分類な芸術概念や実験をアーティスト目線で提案出来る事だと思います。「デジタルアウトサイダー」、「VR工芸建築 今日の神殿」など企画させて頂いたキュレーションは、テクノロジーと美術の融合領域でのキュレーションワークという特徴があります。元々デジタルメディアで仕事をしていた事もありますが、現代の顕著な特徴がテクノロジー文化であり、美術はその吸収が遅い分野なので、様々なキュレーションが今後も可能だと思います。
「デジタルアウトサイダー」
写真は韓国公演時のもの。日韓共同のキュレーションプログラムとして展示。
日本は/Nagano、竹内知、韓国はYi Donghoon、Goyona Jungが参加。
3. 現在、力を入れて取り組んでいること
偶像彫刻、紙幣引用絵画、瞑想絵画、コンセプチャルワーク、キュレーション、何れも重要です。それらを統合するメディウムとして、VRに注目しています。工芸の盛んな金沢で発表する機会が多く、工芸と現代美術のコラボレーションにも関心があります。現在の美術界は分野や組織が縦割りで横の繋がりが薄いのが残念に思います。工芸、現代美術、デザイン、映像メディアも素材として同列で扱い、科学もメディウムとして捉えて領域横断的な表現に取り組みたいと考えています。同時に個々の表現を突き詰める事も大切だと思います。
VR工芸建築「 今日の神殿」
工芸と現代美術をVR神殿の仮想現実に展示したVRキュレーション展示。VRに興味の高い観衆で熱気に溢れた展示となった。
企画キュレーション、VR鑑賞設計、作品提供で参加。金沢21世紀現代美術館で開催された工芸建築展参加作品。参加アーティスト
絹川 大、TARTAROS JAPAN、 yuki、牟田 陽日、山本 基
VR鑑賞時の作者とスクリーンに投影された今日の神殿の作者作品シーン。鑑賞者の視界がスクリーン投影された展示構成。
4.将来の夢、みんなに言いたいこと
夢は現在住んでいる沖縄に、海の見える理想のアトリエを持って、世界中で作品を発表していく事です。未だ理想には程遠いですが、徐々に近づければと思ってます。
現代美術は自ら仕掛けをつくる、思考のトリックの様な世界。
世界を消化し説明してる様で、実は眠らせている様にも見えます。
芸術は思考的になり過ぎてもつまらない。自分は世界の謎の部分を大切にしたいです。
若い作家とくらべ40代中頃からの活動開始なので、オヤジ新人というか(笑)未だこれからの人なので、皆さんの応援が必要です。
このインタビューで興味を持って頂けたらSNSや実物の作品も観て、気に入ったら是非購入して頂けると嬉しいですね。
タルタロス/TARTAROS
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