肉眼でははっきりと見えず、携帯のカメラをかざして見ると、はっきりと浮かび上がる―
そんな不思議な作品を生み出すアーティスト、北村環。
人が何かを「見る」ことの本質に迫るその表現は、見るたびに鑑賞者に驚きを与えます。
現在の表現に至った理由や、制作への思いを語っていただいたインタビューを是非ご覧ください。
北村環 Tamaki Kitamura 作品ページはこちら |
ー絵を描き始めたのはいつ頃ですか?きっかけはありましたか?
物心がついた頃に、従兄弟が目の前でノートに漫画のキャラクターを描いてくれたのを見て、絵は見るだけのものではなく「自分で描いてもいいんだ!」と気づき衝撃を受けました。それからは漫画の模写ばかりをしている子供時代でした。
ーアーティストを目指そうと思ったのはいつ頃ですか?きっかけはなんですか?
2005年に知り合ったあるアーティストのアトリエで数日制作の行程にふれる機会がありました。
その時の作家の普段外では見せない厳しい表情や、作品に向き合うストイックな姿勢を目の当たりにした時に、天才は見えないところで誰よりも努力しているのだとまざまざと感じ、自分もこんな作家を目指したいと思いました。
ー作風が確立するまでの経緯を教えてください。
過去の私は誰もやったことのない手法を見つけることこそがオリジナリティを見出す最善の方法だと信じていました。そして、長い期間手法を試すことに固執するあまり手法を選択する決断ができずにいました。
その状態が10年以上たった頃に「新しい手法というものは存在しない、新しい手法=オリジナリティではない」という結論に達した私は、手法を 選択する覚悟を決め反復して技術を磨き上げることに専念しました。
そうすることで自分なりのルールが構築され頭の中のひらめきやアイデアがすんなり具現化できる体験をしたことで今の作風を確立することができました。
ー作品を発表し始めたのは何時頃ですか?発表するまでにどういった経緯がありましたか?
2005年の春、写真家の友人から突然グループ展の誘いがあり、かるい気持ちで受けたのをきっかけに生まれて初めて自分の作品を人前に披露しました。
その展示で作品が売れたことで、しばらくして勤めていた会社を辞め本格的に作家活動を始めることになりました。
ーアーティストステートメントについて語ってください。
私は「ギミック」をテーマに作品を制作しています。私の作品はよく「写真で見ると描かれている対象がはっきりと見えるが、肉眼で見るとぼやけた抽象的な絵に見える」と言われます。
これは偶然ではなく、描く対象をデジタルで色分解し、色の網点(ドット)を手描きする事で、不揃いな色の集合体がぼやけた幻影のように見える仕掛けを絵に施しているからです。
はたして人は肉眼で何が見えているのだろうか?これは事実にかかわらずメディアから流れてくる情報だけで先入観を持ちやすい人間の本能に警鐘を鳴らしています。
普段見るという行為にさして注意をはらわなくなっていることに気づき、自分の目でしっかりと対象を見て本質を見極めることの大切さに気づくことで、見た人なりの新しい問いが生まれる作品になれたら嬉しいです。
ー作品はどうやって作っていますか?技法について教えてください。
写真や自分で描いたラフ画をパソコンに取り込みデジタルで画像を加工して下絵をつくります。その下絵を8色に色分解をかけて最終的な絵を完成させた後、キャンバスにトレースダウンをしてスポイトを用いて手描きで忠実に再現をしています。
ー作品制作で困難な点や苦労する点を教えてください。
気温や湿度の変化によってキャンバス(ウッドパネル)に落とした時の塗料の広がりや伸び方が微妙に変わるので、塗料と水の割合を調整しながら最適な状態を一定に保つのが難しいです。
デジタルで作成した下絵をもとにスポイトで描くのですが、集中しすぎるとどこの部分を描いているのか見失いそうになるのでなるべく集中し過ぎないように心がけています。
ー今後の制作において挑戦したいことや意識していきたいことを教えてください。
自分の技術が追いつくようであれば奥行きのある立体的な作品にも挑戦してみたいです。
新しい素材やモチーフに常にアンテナをはり、失敗を恐れずまずやってみて結果をしっかり検証する事をモットーに見る人が驚きや発見を体験できる作品づくりをしていきたいです。
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1972 石川県生まれ
1995 東京パース造形学院 卒業
2000 山城デザインスタジオ 退社
2000 フリーランスのイラストレーターとして活動開始
2018 イラストレーターをやめ、画家として活動開始
【個展】
2019 「DAY ART.」158&Co.,東京
2019 「BLACK MODE」NANJO HOUSE ギャラリー、東京
2019 「TRANSFORMATION」ギャラリー自由が丘、東京
2020 「face.」unico、神奈川
2020 「animalia」158&Co.、東京
2020 「La femme」ギャラリー自由が丘、東京
2021 「BIRTH」tremolo cube、東京
【グループ展】
2020 「BORDERLESS-アートがすべてのサカイをとかしていくー」新宿ヒルトピア アートスクエア、東京
2020 「Independent Tokyo 2020」東京都立産業貿易センター浜松町館、東京
2021 「BORDERLESS-アートがサカイをこえていくー」新宿ヒルトピア アートスクエア、東京
【受賞歴】
2020 「Independent Tokyo 2020」審査員特別賞受賞
2021 「The16th TAGBOAT AWARD」入選