宮口拓也 Takuya Miyaguchi |
作品を作り始めたのは何歳頃ですか?きっかけはありましたか?
父親の転勤で幼稚園が代わった際に馴染めなくて登園拒否をしたことがありました。母親がなんとか通わせようと、家で作り溜めた折り紙の動物達をダンボールの上に並べた「折り紙動物園」を特別にクラスの一角に置いもらって、ようやく通えるようになりました。その時につくることは嬉しいことだと覚えたのがきっかけかもしれません。
アーティストを志したきっかけは何でしたか?
将来のことなど考えずに工業高専に進学したのですが、そこが就職率100%だと知った途端、レールから降りたい衝動に駆られました。パッとしない成績表の中で唯一成績が良かった美術を伸ばすしかないと、ダメ元で中退して地元北海道の美術系の大学を目指しました。
作風が確立するまでの経緯を教えてください。
実は筆を使って絵を描き始めたのはここ2年くらいで、それまでは版画や立体作品をつくっていました。
15年以上前のことですが、数年間続く近所の道路工事がようやく終わったと思ったら、近くの別の場所で家の解体工事が始まって「世の中は完成しない」と思うようになりました。
立ち入り禁止の更地に今までどんな建物があったのかは全く思い出せず、いつの間にか新しい建物ができて何事もなかったように街並みに溶け込んでいる。そんな儚さと再生が同居する工事現場に惹かれるようになり、その象徴としてガードフェンスをモチーフにした作品をつくり始めました。
過去作1
過去作2
作品を発表し始めたのは何歳頃ですか?発表するまでにどういった経緯がありましたか?
大学では先輩達のグラフィカルな作品のカッコ良さに衝撃を受けてシルクスクリーンのゼミに飛び込み、とにかく朝から晩まで夢中で制作しました。
ゼミの慣習で毎年北海道内の公募展に作品を発表するようになり、徐々に東京の公募展にも応募するようになりました。今は年に1〜2回個展やグループ展を開催しています。
過去作展示風景
アーティストステートメントについて語ってください。
当たり前だと思っているものが一過性だと気づく瞬間を表現したいと思っています。
その瞬間は、与えられた恵に感謝しながら丁寧に生きようと心するのですが、どういう訳かすぐに忘れてしまうので、忘れないように作品に描き留めています。
「夏のコンビニ」Acrylic paint on wooden panel;72.7x 91 x2.7cm
作品はどうやって作っていますか?技法について教えてください。
紙にシルクスクリーンで刷ったり、ゴミで車を作ったり、FRPで大きなスイッチを作ったり、エアコンのリモコンにシルクスクリーンで刷ったり、市販の水道ホースをベニア板に巻きつけたり、型を決めずに色々作ってきました。
ここ2年くらいは木製パネルにアクリル絵の具で描いています。パネルにお菓子の紙袋を切り開いてノリで貼った上に描いたりもしています。
過去作3,4
作品制作で困難な点や苦労する点を教えてください。
コロナ禍で家での過ごし方が上手くなり過ぎてしまって出不精になった気がします。ナスの育て方が上手くなったのはいいのですが、ネットの情報だけで知った気、行った気になって満足できるようになってしまい頭でっかちになっているところがあります。
今後の制作において挑戦したいことや意識していきたいことを教えてください。
自分が見たい作品をつくるようにしています。今の時代の空気を作品に閉じ込めるためにもフットワーク軽く本物を生で沢山見ていきたいですし、製作のペースを早めたいです。
この度タグボート特別賞でいただいた機会をフルに活かして、中年の星を目指したいと思います。
宮口拓也Takuya Miyaguchi |
1979 北海道生まれ
2005 東京藝術大学大学院美術研究科版画専攻修了
在学中よりスクリーンプリントを中心に制作。近年はフェンス(境界)があるからこその豊かさをコンセプトにペインティング作品を制作。
公募展
2024 Independent Tokyo 2024 タグボート特別賞(東京)
2011 第11回浜松市美術館版画大賞展 入選(静岡)
2008 第16回プリンツ21グランプリ展 入選(東京)
2007 あおもり国際版画トリエンナーレ2007 入選(青森)
個展
2023 「橙網紋的世界」ぎゃらりー由芽(東京)
2022 「橙網紋的世界」Gallery 豆電球(北海道)
2021 「狛江ジャンクション」ぎゃらりー由芽(東京)
2017 「いってきます」ぎゃらりー由芽(東京)
2015 「リモコン」ぎゃらりー由芽(東京)
2013 「リモコン」ぎゃらりー由芽(東京)
2010 「温帯性プラスチック」ぎゃらりー由芽(東京)
2007 「図画工作」千駄木空間(東京)
グループ展
2022 「一二三展」医学町画廊(新潟)
2015 HAN V 版画3人展 ロイドワークスギャラリー(東京)
2013 第四回 HAN 二人展 ロイドワークスギャラリー(東京)
2010 HAN~彷徨える先~ 版画三人展 ロイドワークスギャラリー(東京)
2006 basis-1 ギャラリーぱれっと(東京)
2006 「KIM Kyung-soo & MIYAGICHI Takuya」ぎゃらりー由芽(東京)