タグボート取り扱いアーティストの皆さんに、インタビューに答えていただきました。
アーティストになったきっかけ、作品制作方法、作品への想いなど、普段は聞けないようなお話が満載です。
毎週更新していきます。ぜひご覧ください!
小さいころから絵を描くのが好きでしたか?
幼少期から、自然物や現象を観察して絵を描くのが好きでした。自然の中にある秩序のようなものに興奮する子どもで、周囲に起こる自然現象に「何故」と問いかけて答えを導くことが多かったです。
葉っぱが枯れて微生物に分解され最終的に土へ還る現象や、時の重なりによって錆びが育っていく様子、人が老いていくことについて非常に興味を持っていました。
また、小さい時に「何故空は青いのか?」と疑問を持ち自由研究をしたり、「何故血液は赤いのか?」と不思議で指をガラスで切って血の色水をつくり観察して見たりと好奇心旺盛な子どもで、その頃から目に見えない存在が、世界を創っていると感じています。
美術の道に進むことになったきっかけは?
高校時代に、精神的な病にかかってしまい、休学と通院を繰り返していました。
心と体のバランスが全く取れない状態のなか、体と精神に唯一訴えかけたのがアートでした。学校を休学している最中、友人が「学園祭のステージの絵を描いてくれないか?そして、個展を学内で開いてみないか?」と提案してくれました。
そこで、先輩二人に半ば強制的に手伝ってもらって(笑)
今思うと、その展示はとても稚拙なものだったと思います。
ですが、救急車に運ばれるくらい無我夢中になり、その展示が終わった帰り道で、私は人生で初めて「生きていて良かった」と思えたのです。
そのとき何故か空に向かって、「私はアーティストになりますね」と誓いました。
それがアートを愛し、表現の道へ進もうと感じたきっかけだと思います。
初めて作品を発表したのはいつ、どんなときですか?
立川駅の北口にあるBar nocturne(夜想曲)というところで展示をさせていただきました。
もともと立川美術学院という予備校に通っていたこともあり、立川は私にとって思い出深い場所です。展示が終わって、Barのオーナーが「作品を買いたい」と言ってくださって、
それが初めて、人に買ってもらった作品です。嬉しくて、そのお金は1ヶ月くらい額に飾っていましたね。
制作する日はどのようなスケジュールで進めていますか?
大抵複数のプロジェクトを同時並行して進めていくので、
締め切りと優先順位を毎日決めて進めていきます。
おそらく自分はADHDで(笑)気が散漫になりやすいところがあるので、1日の最初と最後は今日の作業を振り返り、明日の課題を見つけて終えるように心がけています。
作品の制作手順や方法などを教えてください。
制作時間は、午後からエンジンがかかります。深夜に作業することもしばしばです。
表現する作品の内容によって異なりますが、大抵は
まず「言葉」を作ります。
その言葉はコンセプトになる場合もあるけれど、感情的な要素が強いです。
そして、その作品のソースになる要素や資料を集めまくります。
集めた資料から、感覚的に引っかかるものをピックアップして、
どのような要素に惹かれたのかを分解していきます。
そこから、具体的な作品イメージをスケッチしては、考えるという繰り返しです。
できたスケッチイメージは第三者にどのように感じるか意見を貰うことも多いです。
現在、力を入れて取り組んでいること
いくつかありますが、大きく分けると3つです。
1つ目は、美大の頃から研究してきた和紙、紙の価値や、研究で生まれた錆和紙の新しい可能性と、より洗練された表現です。
2つ目は、他ジャンルとのコラボレーションです。
2019年に旭化成という大きなサイエンスとテクノロジーの会社とコラボさせていただき(生分解性のある不織布を使った)、ニューヨークで初めての個展をしました。そのとき感じたのは、自分の表現にリミットを設けないことの重要性です。資金についてもアーティストは常に頭を悩ませることだと思いますが、企業の方とのコラボレーションは、互いに大きな飛躍に繋がる可能性があると感じています。自分自身をより成長させ、挑戦し続けたいです。
展示概要/https://www.fiction-space.com/reborn
3つ目は、今まで自分が取り組んだことのない領域の表現を実験していくことです。
映像や、インスタレーション、パフォーマンスなど、素材に縛られずに表現を広げていきたいと考えています。例えば下記の画像はヴィジュアルアーティストの藤川佑介さんと制作コラボした作品「RUST BEAT」です。普段の製作中に、錆が育つ過程を観察した様子や、記憶をヴィジュアル化させています。錆る現象というのは、静かで見えない動きに感じますが実は非常に躍動的なビートがあるというミクロ的な感覚を映像という媒体で表現したかったんです。
将来の夢、みんなに言いたいこと
日本のみならず、アジア、アメリカ、ヨーロッパ等、海外で大きな個展を美術館で開催できる、発表の場や制作場所を自由に選択できるパワフルなアーティストになりたいです。
出会った人の精神を自由にできるような人間になりたいと思っています。
アーティストは一人ではプロになれないと思っています。
支えてくれる人や、仕事仲間、プロジェクトに携わってくれる人のおかげで表現を実現できるのです。
アーティストの成長にも、周囲のサポートがあってこそだと感じます。
もちろん最後は全て自分の責任ですが。
与えられた仕事に力を尽くして、死ぬまで楽しみたいと思います。
(撮影協力:豊島孝作)
http://sabiwashi.jp/
Japanese paper artist (Sabi washi錆和紙)
1989 島根県浜田市 誕生
2012 作家活動
2014 武蔵野美術大学 工芸工業デザイン学科 テキスタイル専攻 卒業
現在 東京都、島根県を拠点とし、作家活動
人間とマテリアルについて考えるとき、日本人は古来から神、そして紙、と共に生活をしてきました。中国より4~5世紀ごろに伝えられた紙漉きの技術は、主に〔札、人型、写経〕などに用いられ、神聖な素材として大切にされましたが、今や生活必需品としてではなく、工芸品としての価値が高まり、紙漉きは文化として、ユネスコの世界無形文化遺産として登録されています。
日本ではしばしば、「和紙」は古典的な素材として印象強くありますが、実は素材として常に単一的で、変容性を持った素材なのです。物体としての作品を作るとき、マテリアルとの関わりは、必ず強い連帯関係を生みだします。それは、和紙のもつ古い歴史と日本文化が、現代に生きる自身の記憶と社会の変動を、交互に行き交うからに他なりません。和紙を古く新たな素材として捉え、表現しています。