タイラクルカ Ruca TAIRAKU
2000年東京出身。
2022年の個展「してん」を機に作家活動を開始。
<受賞歴>
2024
100人10 野村證券アワード
2023
muni Art Award 準グランプリ
lndependent Tokyo タグボート特別賞、 特別審査員 陳彬賞
IAG awards 2023 奨励賞、八犬堂賞
ACTアート大賞最優秀賞受賞
上野の森美術館大賞入選
2022
長亭GALLERY OJUN賞受賞
Independent Tokyo 2023でタグボート特別賞を受賞したタイラクルカ。
独学からスタートした彼女は活動期間はわずか2年弱ながら、独特な色使いや構図で既に多くの賞を受賞し、
一気に現代アート界で注目を浴びる存在となりました。
作品のモチーフは「犬」。人間にとって良き相棒であり良き家族である彼らを通して、
ときにドラマチック、ときにシュールな一場面を描きます。
1.作品のコンセプトについて教えてください。
ーーこの地球上にはおおよそ710万6千頭の飼い犬がいます。彼らは良き相棒であり、また人間の良き家族。
人と共に生きる生き物の中で、彼らほど密接な生き物はいないでしょう。
しかし、私たちは「犬」という面白すぎる立場の動物を、その存在が近すぎるがゆえに見落としがちなのではないでしょうか?
人間と犬。そのふたつの関係性を取り巻く様々な事象を描いています。
2.初めてタグボートに出展いただいた「Independent Tokyo 2023 受賞者展」では一目惚れで恋に落ちる場面を描いていらっしゃいましたね。今回の「ART HAKATA by tagboat」にご出展いただく作品はどのような意図で制作・選出されましたか?
ーー今回、展示会に用意した作品群のテーマは「宵」です。
時間としての宵(日が落ちて暗くなる頃)という意味と恋人関係の一旦落ち着く時間的な意味合いも持たせています。
特に40号サイズの2作について、The moon はタロットの名前から引用しており、
ネガティブな想像を膨らませ相手の裏を読む意味合いを持っています。
Shooting star は文字通り流れ星の意味を持つのですが、スラングで、一瞬で燃え尽きる愛などの意味があります。
人間のそういった疑念などの感情を少し妖艶な表情で描きました。
その2作に対しSilent hillでは疑念の感情ではなく凪のように静かで爽やかな空気をイメージして描いています。
(余談なのですが、某ゲーム2作目がリメイクされましたね…いいなぁ…)
今回新たに出展する作品は「恋に落ちた彼らのその後」という見方でも面白い、とタイラクは語ります。
3.制作する上で大切にしていることやこだわりを教えてください。
ーー最近は素材に麻を使用していて、一部の作品については、あえて、全てを塗り潰すのではなく
少し画面上に残して、見えてくる素材のコントラストを上げています。
また、犬を描く際も、筆の勢いや流れを見せるために一発で描いていて、筆の入る密度に差を出すことによって目立つようにしています。
4.作品の過程でもっとも悩んだり苦労されるのはどんなところでしょうか?
ーーどういう構図にして、最終的にどのような作品に仕上げていくのかを考えるエスキースの段階が一番時間がかかりますし、一番スランプに陥りやすいところだと思います。スランプに陥ると、どんな案も納得がいかないし、実際スランプが明けた後に見ても酷いものだと感じることがあります。
スランプの抜け出し方については作家さんごとにいろんな方法があると思います。私の場合、スランプは成長過程における筋肉痛のようなものだと思ってるので、辛さを楽しみつつ、他の作家さんの絵を見に行ったりして、心のプロテインを摂取しながら乗り越えています。
5.制作のモチベーションになっていることはなんでしょうか?
ーータイマー。時間割です。40分のタイマーを設定してその間は集中する。その後は15分必ず休む。を繰り返していると恐ろしく集中できますし、制作時の丁寧さが上がり、15分制作から離れることで冷静な判断が下せるようになりました。学校のチャイムシステムを参考に取り入れたのですが、これがシンプルかつ圧倒的なモチベーション保持につながりました。何かを描きたい欲というのは常にあるので、私にとっての課題は時間割だったのです。
(なんて素晴らしい発見をしたんだ!と思い弟に自慢したところ、あぁ。ポモドーロ・テクニックね。と軽くいなされました。もう存在していたらしいです。)
6.これまでに影響を受けたモノやヒトについて教えてください。
――私の作品(特に初期作品)はママ・アンダーソンという作家に強い影響を受けています。
彼女のタッチはどうやって描かれているのだろうかと研究しているうちに、目指していたタッチとは方向性が違うけど個性的な表現方法が生まれ、幾度かの試作を重ねるうちに現在の描き方へと進化していきました。彼女の作品に出会えたことが、私にとっての大きな分岐点になっていたと思います。
また、タカハシマホさんとマネージャーの根本さんには作家活動を始めたての頃に出会い、展示をする際の常識やアドバイス、作家活動の右と左を教えていただいた、今でもお世話になっている恩人です。
7.最後に、これから挑戦されたいことについて教えてください。
ーーこれまでは犬を通して人の感情やエゴを描いてきましたが、人自体もモチーフとして取り入れ、犬の軽い表情とのコントラストを上げるため、少し写実的要素も組み込んでいきたいと考えています。
また、来年から中国の展示も増えてくると思うので、調子を崩さず制作していきたいと思います。