11月1日(金)よりタグボートにて個展を開催するアーティスト・石川美奈子。
透明なアクリル板に数千本の極細い線を重ね、光の揺らぎや色の移ろいを美しく表現する石川美奈子。近年は、台湾・台南市にある奇美博物館での企画展示「Outside the Box」に選出されるなど、海外でも活躍の場を広げています。
tagboatでの個展開催に向けて石川さんのアトリエに訪問し、お話を伺いました。
石川美奈子 Minako Ishikawa
1974 岩手県盛岡市生まれ
1999 岩手大学大学院教育学研究科教科教育専攻美術教育専修修了
〈個展〉
tagboat Gallery (2017,2019,2021,2022,2023/東京)
ギャラリーNew新九郎 (2020/小田原)
Gallery HIRAWATA (’16,’13,’11/藤沢)
Galleries F&F (’15/台北)
板室温泉 大黒屋サロン (’14’12,’10/那須塩原)
GALLERY TRINITY (’13’12,’11/東京)
西武渋谷店オルタナティブスペース (’11/東京)
リアスアーク美術館「N.E.blood21 Vol.11 石川美奈展」 (’04/気仙沼)
〈アートフェア〉
Art Kaohsiung 高雄、台湾 (’14,’15,’16)
〈受賞歴〉
2014 第9回タグボートアワード グランプリ
2010 YOUNG ARTIST JAPAN vol.3 準グランプリ
2005 岩手芸術祭現代美術部門 芸術祭賞(2003年)
2003 第22回今立現代美術紙展’03 特別賞
2001 キリンアートアワード2001 奨励賞
石川美奈子のアトリエは、まさに創造の静かな避難所です。
この場所は、彼女の創造力を最大限に引き出すための工夫が随所に施されていて、作家は東京の喧騒から離れた、白を基調とした明るい空間で作品を生み出しています。「白は心を穏やかに保ち、色彩がより鮮明に見えるんです」と語るアトリエには、道具や素材が整然と配置されており、余計なものは一切見当たりません。
方眼紙の上にアクリル板をセットした制作風景
作家は制作中、集中力を途切れさせないために、作業台に並べられた道具にも独自の工夫を施しています。たとえば、絵の具のチューブを収納するために、穴を空けたタッパーに水を入れ、それに差し込むことで、乾燥を防ぎながら効率よく作業を進めているといいます。作家にとって、創作活動は日常の延長にありました。
色番号によって振り分けられた絵具のチューブ
作家の一日は、朝のヨガから始まり、コーヒーを飲みながらの読書で心を落ち着け、その後アトリエに向かうというルーティンが定着しています。制作後のランニングも日課としており、1日おきに走るというアスリートのような瞬間も見受けられました。
最近では、E・Hゴンブリッジの『美術の物語』を読み、アンゼルム・キーファーの図録を購入。また、制作で辛いときには意識して口角をあげるようにしている作家。脳の臨床実験で、脳が顔の筋肉の動きに反応して幸せだと認識することを知ったためだそうです。
本棚にある図録や書籍の数々
アートのインスピレーションは、日常の何気ない瞬間から生まれます。
特に作家にとって重要なのは「自然」であり、自然の色彩や形状、さらには香りが創造の原動力となっています。
石川美奈子は「散歩中に見かける木々や空の色、風に揺れる草花。そういった瞬間が、私の作品に反映されているんです」と、穏やかに語ります。そんな作家が今まさに注目されているのは、11月1日から開催される個展「Resonance」です。
この展示は、昨年の青を基調とした展示とは異なり、今回は虹をテーマにしています。
作家によれば、最近の世界はニュースを見ても悲しい話題が多く、それに対して「虹の空間で、少しでも見た人が元気を取り戻せるように」との思いを込めているといいます。虹は、作家にとって希望と癒しの象徴であり、多彩な色彩が重なり合い、見る者の心にポジティブなエネルギーを届けます。
また、今回の展示では、作品が完成するまでに使用した道具や、制作過程でのドローイングも展示するという新しい試みに挑みます。「普段は表に出さないけれど、制作の裏側を見ることで、作品がどのように作られているかをもっと身近に感じてもらいたい」と話す作家の意図は、観る者に新しい視点を提供します。現在、作家は個展に向けて48点もの虹色が輝く「wavelengthシリーズ」を制作中で、そのうち4点の途中経過を見せていただきました。作家の手作りの道具や工夫を凝らしたアトリエが、この膨大な制作量を支えているのです。
「今後の作品制作や活動で挑戦したいことは何ですか?」という質問に対し、石川が最初に挙げたのは、大きなリリアンのプロジェクトです。彼女は直径2~3mの大きな円柱の上に釘を立て、その周りを歩きながら、赤青黄の糸を組み合わせて編んでいく天井まで伸びるグラデーションのリリアンを作りたいと考えています。
この作品は、個展や展覧会期間中に訪れた人々に参加してもらいながら制作を進めることを想定しており、その過程を記録する映像も撮影しながら会場で成長していくとのこと。他にも、具象やデジタルなど、現在の表現とは異なる新たな方法にも挑戦したい意向があります。
ただ、何に挑戦するにしても、一番大切にしたいのは「作品が見た人と対話し続けること」だと話します。長い年月を経ても、人々の心に語りかけ続ける作品を作り続けたいというその探求心は、「これからも、自然の美しさや繊細さを感じる瞬間を、もっと深く表現していきたい」という言葉に表れています。石川美奈子の作品は、その繊細さと色彩の豊かさ、そして彼女の自然に対する深い感謝と愛情が感じられます。
石川美奈子「Resonance」
2024年11月1日(金) ~ 11月22日(金)
営業時間:11:00-19:00 休廊:日月祝
※初日11月1日(金)は17:00オープンとなります。
※オープニングレセプション:11月1日(金)18:00-20:00
入場無料・予約不要
会場:tagboat 〒103-0006 東京都中央区日本橋富沢町7-1 ザ・パークレックス人形町 1F
個展「Resonance」の展覧会ページはこちら▼
http://tagboat.co.jp/minako_ishikawa_resonance/