タグボート取り扱いアーティストの皆さんに、インタビューに答えていただきました。
作品制作にまつわるあれこれや、普段は聞けないようなお話などが満載です。
毎週更新していきますので、ぜひぜひご覧ください!
小さいころから絵を描くことが好きでしたか?
好きでした。小学生のころに「ぼく」という少年の日常を描いた漫画を確か全3巻、「マーブルく んの大冒険」という筒から転がって飛び出した一粒のマーブルチョコレートの人生を描いた絵本を思い出します。絵本は子供ながらに紐で綴じて製本にもこだわりました。工作も好きで靴の空箱の空間にパーティーのエキサイティングな光景を作ってみたり、同じく小学生のころに作った セラミックのマリリン・モンローは最高傑作で今でも飾っています。それから「世界に初めて来た人ごっこ」という遊びが気に入っていて、世界に初めてやってきた!という設定で出会った大人に「あれは何ですか?」と木やビルや見たものを手当たり次第インタビューする。当時はそんなボキャブラリーや考えもありませんでしたが、今振り返れば「何がものをものたらしめているのか」をもしかしたら知りたかったのかもしれません。
小学生のころに作ったセラミックの「マリリン・モンロー」
美術の道に進むことになったきっかけは?
美術大学への進学からでしょうか。幼いころからすごく前向きに何の夢もありませんでした。ぱ っと起きて今日もお茶がうまい!とか、こんなところにかわいいお花が咲いたなー!とか、生きてるだけで楽しくて完璧だ!と思っていて、大体路上やライブハウスで大好きな友達と日々興奮して過ごしていましたが、仲間が就職したり、お嫁に行ったりし始めて、そろそろ本気出すか!と 好きなことを好きなだけ試してみようと、大人になってから浪人を経て美術大学の彫刻科に入 学、いきなりノミと崖のような石を渡され真四角にしてツルツルに磨け、という初めての険しい課題から、二度と降りられない船についに乗った!と思い今に至ります。
「SKINNY FATHER CHRISTMAS/痩せたサンタクロース」 2011年/FRP、WAX、麻、麻袋、段ボール/215×105×75cm Photo by Natsuko Yanagawa
「ALICE THE TRANSVESTITE/ 女装のアリス」 2012年/FRP、WAX、衣類、麻/165×60×65cm Photo by Natsuko Yanagawa
初めて作品を発表したのはいつ、どんなときですか?
現在発表している作品群にダイレクトに繋がる作品は大学1年次の学祭に併せての学内でのグループ展です。「クイーンエメラルダス半分」というタイトルで、松本零士さんの名作アニメーション のフィギュアをラージサイズに、人体ということにフィーチャーして生々しい女性像に置き換えて、紙粘土で半分だけ作ったものです。
「クイーンエメラルダス半分」2008年/紙粘土、ラッカー/150×75×80cm
制作する日はどのようなスケジュールで進めていますか?
展覧会が迫っている時はずっと制作しています。昼や夜は関係なく、ただし完成が見えてきたら自 然光での存在感を確認するために、午前中が貴重な時間となります。
スケジュールしてみても特にラージサイズの彫刻作品は結局搬入直前になってしまうことばかりで、タイムリミットのギリギリまで作品と向かい合い粘ります。
しかし、同じ作業をずっと出来ない性分なので、いつもフレッシュな気分を持続させるためにも 展覧会に出すもの以外も同時にいくつも制作を進めています。
しっかり休むことも仕事だよねと思いながら、死ぬまでに一体あとどれくらい良い作品に出会えるのかなと焦燥感があり、音楽を聞いたり映画を観たり本を読んだりある建築を目指して出掛けたり、全く制作しない日もありますが、それがいわゆるインプットとなって作品に生きてくるこ とも大いにあります。
「プレイ -つくること、あそぶこと、そしていのること」2019年(制作風景)
「Mixed Juice」 2017年/アルミ箔、缶バッジ、FRP、段ボール、木材/サイズ可変
「Mixed Juice」 2017年(展示替え設営風景)
「Silver Marilyn」 2018年/アルミ箔、板、油彩、ラッカー/92×94×22cm(制作風景)
「Who are you?」 2018年/コカ・コーラ瓶、アルミ箔、石膏粘土、FRPに油彩、ラッカー/サイズ可変(制作風景)
作品の制作手順や方法などを教えてください。
今制作している時に次はこう展開していこうかなと、自身の作品群を俯瞰しながら作っているので、完成したら大体すぐにメインの次作に取りかかりますが、大変なメモ魔なのでスタジオ中に 貼り付けてあるメモから吟味して、まるで違うものやちょっとやってやってみたいものを平行して 進めています。
大きな作品、小さな作品、彫刻、絵画、インスタレーション、素材もアルミ箔にジーンズ、プラス チックに瓶、おかしのパッケージ、梱包材にガムテープ、モルタルと、サイズも媒体も素材も多岐に渡りますが、彫刻という媒体をいつも軸にして考えています。素材とサイズのイメージからこれは作るに足る作品だと決まったら、あとは手で考える、とにかく作ります。
彫刻を作りながら絵も同時進行で描いているということが最近は多いですが、じっと座って一つ の画面に向かうということが出来ないため、絵もいくつか同時に描き進めています。
素材と形との付き合いはいつも手探りで、全部潰してしまったりすることもありますが、それを チャンスだと、素材の強度や相性、経年劣化を調べるために長らく放置してあるマケットもたく さんあり、作品を作りながら実験もしています。
作り方にルールも方法もなく、毎回毎作違う、途中経過を完成にすることもありますが、唯一の手がかりはコミュニケーション不可能、無口だった作品が饒舌になり、「何だかよくわからない けどとにかくすごい!のでは!?」と客観視出来たときです。
また最近 “PUNKUMA”という独自のキャラクターの作品を制作していますが、自身の様々な作品の中を縦横無尽に歩き回ってくれて散らかったアイデアを整理し統括してくれる重要なモチーフと なってきています。
「NEW WORLD」(PUNKUMA) 2019年/木製パネルにアルミ箔、アクリル、ラッカー/ 91×65cm
「STAND! STRONG! STRAIGHT!」(PUNKUMA/ALL STARS) 2019年/フェイクファーと粘土で制作したぬいぐるみを型取り、FRP、油性塗料/ 33×21×13.5cm
現在、力を入れて取り組んでいること
作品の素材提供にご協力いただいている企業さまとのコミュニケーションです。一人では難しいこ とが企業さまのお力添えで実現できる可能性が広がります。
多くの人々の知恵と力が合わさっている既製品は自分の専門外の分野を知るきっかけとなり、ま た歴史や土地の特色を知る足掛かりにもなる、社会の大きな存在である企業さまの考えを聞かせ てもらうことは、コンテンポラリーアートも社会を構成している一分野であるという認識を深め、 一つの文化としてリアリティを持って制作に向かうことが出来ます。
また、アーティストもコレクターも個人を各々の企業として捉えてみると、協力することによって 新しく刺激的なことが出来そうな楽しみが増えます。
「DON’T MIND」 2017年/金網、アルミ箔にラッカー、アクリル/サイズ可変 Photo by Natsuko Yanagawa
「なんでもない日おめでとう!/A very merry unbirthday」 2017年/アルミ箔に油彩、ガムテープ、気泡緩衝材、板/サイズ可変
将来の夢、みんなに言いたいこと
あなたもわたしもみんな、誰もがより良い世界だと思うこと。
「誰が世界を翻訳するのか」という展覧会もありましたが、洗練されたコンテンポラリーアートに触れると今世界で何が起こっているのかがわかるとも言われます。世界はとても複雑で、もしかすると実に単純明解で、どちらにせよ理解し難いことばかりですが、きっとこれからもっともっ と良い世界になって行くときに、人間という最も精密でデリケートな存在が創るソフトな分野、 文化や芸術はなお重要なものになって行くと思います。
アートかパンか、という論争もありますが、わたしは作り手の前に猛烈なアートファンなので、 アートもパンも、と思っています。
パンの中身は信じられないくらいおいしいジャムが入っているかもしれない、飲み込めないくら い辛いハバネロ、酸っぱいけれどまた食べてみたくなるマスタード、目が醒めるほど真っ赤なケチャップ、生活というコッペパンの中に入っている選べる嬉しいテイストのひとつがコンテンポラリーアートなんじゃないかなと思います。
わたし自身の活動としては「もの」を使って彫刻をメインとした「もの」を作っていますが、資本主義に抗うような飛び出すようなより脆弱な「もの」にフォーカスして、それでいて「リアルよりリアル」な何かを掴むことを考えています。作品がどんどんアップデートされて行く様も注目し ていただけましたらとても嬉しいです。
2018年夏、TAGBOAT主催による台湾での展覧会「TOKYO ILLUSION」出品作品
「What?」2018年/石膏粘土、スタイロフォーム、木材/270×170×270cm
1982年 東京都出身、東京都在住
2011年 東京造形大学造形学部美術学科彫刻科卒業
2016年 愛知県立芸術大学大学院美術研究科博士前期課程美術専攻彫刻領域修了
< パブリックコレクション >
那須野が原博物館 (栃木)
< 受賞歴 >
2017年 Brillia ART AWARD 2018 グランプリ / 東京建物八重洲ビル Brillia Lounge
「THE GALLERY」(東京)
第21回 岡本太郎現代芸術賞入選 / 川崎市岡本太郎美術館 (神奈川)
2016年 愛知県立芸術大学大学院彫刻専攻優秀賞
審査員特別賞 / Independent TAGBOAT ART FES / 浅草橋ヒューリックホール (東京)
2013年 審査員特別賞 / TAGBOAT ARTFES 2013 / 東京都産業貿易センター浜松町館 (東京)
イセ・カルチュラルファンデーション賞 / ISE NY Art Search 2013 / ISE Cultural Foundation (New York)
< 個展 >
2017年 Fresh2017 塩見真由展 / 伊勢現代美術館 (三重)
2016年 SILVER WORKS / MDP GALLERY (東京)
2015年 CAPRICIOUS WORLD / NANATASU GALLERY (東京)
2014年 Adult Picture Book / NANATASU GALLERY (東京)
2012年 ファンタジア!~痩せたサンタクロースと女装のアリス~ / ask?P (東京)
< グループ展等 >
2018年 TOKYO ILLUSION / Dali art 国際芸術廣場 (台中)
threads / espacio gallery (London)
2017年 六甲ミーツ・アート 芸術散歩2017 / 六甲山頂駅(六甲有馬ロープウェー) (兵庫)
ART FAIR FUKUOKA 2017 / ホテルオークラ福岡 (福岡)
2016年 企業コラボ東京プロジェクト2016合同展 / MDP GALLERY (東京)
企業コラボ東京プロジェクト2016 / boy U (東京)
LUMINE YURAKUCHO 5th Anniversary “Wear the Art” / ルミネ有楽町 (東京)
Eyebrow-raising responses to Frida Kahlo, Artworks inspired by Frida Kahlo on exhibit
フリーダ・カーロに影響を受けた作品展 / MENIER GALLERY (London)
三木俊治のまなざし 《行列》 の軌跡と語りかけるコレクション / 那須野が原博物館 (栃木)
2015年 the artfair plus ultra 2015 / Spiral Garden (東京)
他多数
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