11月30日(木)よりタグボートギャラリーにて初個展を開催するアーティスト・海岸和輝。個展開催に寄せてお話を伺いました。
インタビュー:眞岸花菜、植松苑子
海岸和輝 Kazuki Umigishi |
_今回の個展のコンセプトをお聞かせください。
まずギャラリーでの個展というのが初めての経験になりますので、今回このような機会を頂きとても感謝しております。
制作をしていない時から新年の目標を個展開催にして10 何年経ちましたが、ようやく目標を一つ達成できた気がしています。
コンセプトとは違うかもしれませんが、展覧会のタイトル「I’ ve been painting」についてお話しさせていただきます。
このあいだの9 月に10 年以上行っていなかった母校の藝祭に久しぶりに行きまして、出身学部である油画科の展示を観てきました。
15 年ぐらい前に学生だった頃のことを思い出して、とても懐かしく思いつつ、のびのびと制作展示しているこの子たちが卒業してアートとは関係ない仕事をしたり、結婚したり子育てしたり、その他いろいろな事情で5 年後10 年後には少なくない子たちが制作しなくなるんだよなと思いつつ、まあ正に自分がその一人だったなとしみじみ感じました。
そんな私でしたが、周りの助けと幸運によって、今は毎日絵を描いているよと叫びたいということで、今回のタイトルにさせていただきました。
なんとか今もまだ描いてるよと言いたいので、tagboat さんと関わらせていただくきっかけとなった「Independent Tokyo 2022」以降に私のことを知ってくださった方はもちろん、10 年20 年会っていない人たちにも今回の展覧会を観ていただきたいです。
_出展作品やその制作についてお聞かせください。
今回の出展作品には、新たにぶるぶるっとブレのような要素が加わった作品があります。この作品は下絵をAdobe Photoshop を使用して制作しています。
その際にデータ上の操作を間違って選択コピーして重なってしまう現象がよくありまして、すごくイラッとするんですが、そこから着想を得て画面に落とし込んでいます。
Photoshopでの制作風景
_タグボートの新ギャラリーで展示していただくのは今回が初となりますが、展示空間を構築する中で意識されていることはありますか。
新ギャラリーは天井が高くて広さがあるので、せっかくの空間が窮屈にならないようにマージンをしっかりと確保した構成にするように考えています。
展示空間の意識ですが、グループ展に参加するときや作品を送って搬入を任せる場合などで悔しい思いをしたことがあるので、自分で展示をコントロールできる際は必ず縮尺を合わせた2D 図やマケットを制作して空間としての強度を確認するようにしています。
「Independent Tokyo 2022」展示のマケット
_代表作「Overlap」シリーズは、これまでのご自身の経験や記憶がレイヤーのように積みあがり、それらが透けて見える様と重ねられているかと存じます。今そのレイヤーの蓄積は、海岸さんにどのように見えているのでしょうか。
今になってみれば、真面目に絵画をやっていなかったけれど色んなことをやっておいて良かった、と思います。
グラフィックデザインから、商業イベントでの展示会の図面作成や施工会社さんとの打ち合わせやら、設営撤収、壁画や雑貨制作、靴学校と色んなことをしてきましたが、さまざまなことが血肉になって制作に活きているなと感じます。
そもそも社会人として働いていなかったら、大人としてメールもろくに返せず電話もできないような状態でしたので、大学を出てすぐに作家活動をしていなくて良かったなと思います。
_デジタルでのレイヤー(Adobeでの行為)とアナログでのレイヤー(マスキングテープや着色の行為)について、それぞれに考えていることやどういったことを担っているのかなどをお聞かせください。
私は1984 年生まれでデジタルネイティブ世代というほどは若くないけれど、ある程度小さい時からコンピューターに親しんできた世代でした。
試行錯誤はパソコンを使って、最終的には手仕事で描く、もちろんアカデミックな絵画を学んでからデザインの仕事をしていたということも大きいと思いますが、アナログとデジタルの間の世代だというのは大きな理由の一つかなと思っています。
過去にデジタルデータを印刷してカット&ペーストして作成した作品もいくつかあり、自分で悪いとは思っていないのですが、やはりアナログの作品の方がしっくりくるのか現在は手描きで制作を進めています。
デジタルデータをインクジェット出力してパネルに貼付した作品
大学時代は下絵から全てアナログ作業で制作していたのですが、そうすると画面上で全て絵具が混ざってしまいグチャグチャな絵しか描けませんでした。今マスキングテープを使って一色ずつ色を塗っているのは筆を使って塗り分けられない技術的な問題です。
マスキングをしている様子
剥がした後のマスキングテープ
_今回の個展を含め、今後の展望をお聞かせください。
夢は大きく持ちたいですが、10 年先も20 年先も今も描いてるよ!と言えるよう毎日粛々と制作を続けていきます。
_海岸さん、ありがとうございました。個展は11月30日(木)から開催いたします。オープニングレセプション(翌日12月1日(金)17:30~)もございますので、是非皆様お誘いあわせのうえお越しください。お待ちしております。
個展情報
海岸和輝 「I’ve been painting」
2023年11月30日(木) ~ 12月23日(土)
営業時間:11:00-19:00 休廊:日月祝
※オープニングレセプション:12月1日(金)17:30-19:00
入場無料・予約不要
会場:tagboat 〒103-0006 東京都中央区日本橋富沢町7-1 ザ・パークレックス人形町 1F