タグボート取り扱いアーティストの皆さんに、インタビューに答えていただきました。
アーティストになったきっかけ、作品制作方法、作品への想いなど、普段は聞けないようなお話が満載です。
毎週更新していきます。ぜひご覧ください!
「Pan American Transportation」(部分) キャンバスにアクリル / 2017年
第13回タグボートアートアワード 準グランプリ受賞作品
小さいころから絵を描くのが好きでしたか?
家族構成などから一人遊びに向かう条件は多く、早い内から得意分野ではありました。父が製図工だった為、棚にテンプレートや製図ペンといった「玩具」が揃っていたのも一因でしょう。
十代に入ると模型や工作等の立体にも手を出しつつ、将来の職に工業デザインを考え美大進学を意識し始めます。建築への興味から廃墟をスケッチするのもこの時期です。
「東京 FOR TOKYO」ドローイング/ 1997年
独学時代の作品。90年代初頭から幾つかある類似作品のひとつ。
TMG
美術の道に進むことになったきっかけは?
趣味の次元から本格的な美術の道に踏み入れたと云えるのは美大へ入学した時でしょう。これは二十代後半で、経済面で断念していた大学へ行く事自体が目的でした。選んだのは憧れだった美大ですが、デザインではなく油画を専攻しました。大学生活を満喫できれば充分で、画家に成ろうと考えた訳では有りません。しかし卒後も学んだ事を無駄にせぬ様にと創作活動を続けて今に至ります。
初めて作品を発表したのはいつ、どんなときですか?
絵画として最も古そうなのは小学生時代の公募展で賞を頂いた時だと思います。地元の工場地帯を水彩で描いた物で、観察力を評価されました。
大人になってからでは大学時代のグループ展が最初です。ただし無名のアマチュアの展示に来るのは出展者の関係者が殆どで、前時代的と感じていました。DMが送れるなら住所も氏名も知っている、即ち知人であり、そんな人からシビアな反応を引き出せる筈がない。これが公募とアートイベントを活動の中心にして行く動機となりました。
「Dear president」キャンバスにアクリル / 2009年
第22回 全日本アートサロン絵画大賞展 優秀賞受賞作品
制作する日はどのようなスケジュールで進めていますか?
特定のスケジュールといったものはございません。実作業に入ると僅かでも制作時間が欲しいので五分でも時間がとれればイーゼルに向かいます。
「The BRDG.」(部分) キャンバスにアクリル / 2013年
連作”The future of an illusion”最大の作品で、制作に約8か月を費やした。
作品の制作手順や方法などを教えてください。
計画段階ではラフなイメージスケッチから始め、その後簡単なCGで色彩と構図を煮詰めてからキャンバス上の実作業に入ります。基本的にアラプリマの様な下描きがない手順で、背景から大まかに描いては直しを繰り返します。
作中に多数ある高層ビルは一見複雑ですが、パースがかかっていなければ唯の格子に過ぎず、定規があれば事足ります。「P.A.T.」の様に魚眼風のパースが掛かっていてもCGで起こしたワイヤーフレームをガイドにする事で制作を可能にしています。
もちろん実作業では座標計算したり描線を1/10mm単位で調整したりと根気の要る作業が続きますが、これによって高い描画精度を実現しています。
「P.A.T.」の工程。下描きは無く、エスキースに基き座標で左右対称に建物を配置。
現在、力を入れて取り組んでいること
常に気を配っている事のひとつに、長期保管に耐える耐候性の考慮が挙げられます。画材選びに加え、仕上げに二種のワニス保護を施すのも耐候性を求めた結果です。
また目下の所としては、新しくスタートした作品系列を軌道に乗せる事に注力しています。この一年程で周辺環境が大きく変わり、それに合わせた変革を進めています。ここまで戦略的に個を抑えて来ましたが、遊びはここで終わりです。
「Not all Deloreans are can back 2 the future」キャンバスにアクリル・金泥 / 2019年
“骸”、”スモッグ”系列に続く新しい作品系列。
将来の夢、みんなに言いたいこと
2014年に完結した連作”The future of an illusion”は作品集「ある幻想の未来」として個人出版し、イベントを中心に400部以上をお買い求め頂けました。個人の出版物としてはまずまずですが、その上を目指したかった。この系列のアイディアはまだ尽きないのですが、制作継続の為にもっと多くの方からの応援を賜りたいところです。
将来、自分は絵画という表現形態では飽き足らなくなるかも知れません。なぜなら具現化しておきたいものは美術分野の外にもあるからです。何れにせよ何らかの形で創作を続けて行くのが生涯の望みです。
作品集「ある幻想の未来」上下巻 2012年/2014年
架空の旅写真記風の編集で、全作品が同一世界に見える様季節や天候にも配慮した。
JunKjapunk(コクボジュンイチ)
1973年神奈川県生まれ。多摩美術大学出身。
油画技法を基礎としたアクリル画を手掛け、特に細密描写を得意とする。
80年代末より都市や未来といったテーマを扱う事が多く、同テーマの連作を収録した画集を二冊発行している(いずれも「JμnK」名義)。
<受賞>
2011 第7回 連合・ILEC 幸せさがし文化展 ILEC大賞
2011 第1回 全国0・SM公募大賞展 奨励賞
2011 第28回 FUKUIサムホール美術展 入選
2011 第7回 世界絵画大賞展 ターナー色彩賞
2011 第21回 全日本アートサロン絵画大賞展 佳作
2012 アートムーブ2012 大阪市長賞
2012 第29回 FUKUIサムホール美術展 入選
2012 第8回 世界絵画大賞展 入選
2012 第24回 しんわ美術展 入選
2012 第22回 全日本アートサロン絵画大賞展 優秀賞
2013 ACTアート大賞展2013 佳作入選
2013 第8回 連合・ILEC 幸せさがし文化展 秀作
2013 第23回 全日本アートサロン絵画大賞展 優秀賞及び入選
2015 美の起源展 奨励賞
2016 ターナーアクリルガッシュビエンナーレ2016 入選
2018 第13回タグボートアートアワード 準グランプリ
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