2020年9月11日より開催の「TAGBOAT×百段階段」展の会場となるのは、昭和10年の面影を残すホテル雅叙園東京の木造建築「百段階段」です。99段の階段廊下で結ばれた7つの部屋はそれぞれ趣向が異なり、各部屋の天井や欄間には、当時屈指の画家や大工によって創り上げた美の世界が広がっています。
天井と欄間いっぱいに板倉星光の四季草花が描かれた部屋「星光の間」で注目を集めるのは、タグボート作家・TARTAROS JAPANの本物の紙幣を使った浮世絵のオマージュ作品です。本展における作品制作について、作家本人にお話を伺いました。
百段階段「星光の間」展示風景
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百段階段に展示された「浮世絵紙幣絵画シリーズ」について、制作のきっかけを教えてください。
2016年末に$紙幣を刻んでコラージュした抽象画を初めて発表し、本物の紙幣を使うことでお金が持つ意味を美術品そのものに組み込み、現代を表現するという手法に可能性を感じました。
「お金」を画材で使う事は、真面目なテーマでは重すぎ、抽象では出来ないユーモアやダイナミックさが欲しいと思っていた時、眺めていた浮世絵を紙幣でコラージュする事を思い付きました。
「Automatic Wave $B55875035D Prussian blue」¥330,000-
北斎が富嶽三十六景でメインで使った「藍色」と銀箔$紙幣で勇壮な現代日本を表現しています。
なぜ浮世絵というモチーフを選んだのですか?
素材の紙幣とモチーフの浮世絵には共通する特徴があります。それは、時代を超える力があり、誰でも知っている大衆性、大量に複製されても価値も信用もある、ということです。
また、北斎の富嶽三十六景『神奈川沖浪裏』は、日本人にとって信仰対象と言えます。日本人の自然信仰は、江戸時代と比較して現代はお金。人の信仰の歴史レイヤー、自然もお金も生き物の様に変化してエネルギーを人に与えている様を描いています。
北斎は、印象派にも大きな影響を与えたジャポニスムのシンボル、日本美術の頂点です。日本人である自分が現代美術としてリメイクする事で北斎に別の命を吹き込めるのは素晴らしい体験です。
制作途中の浮世絵紙幣絵画シリーズ
作品に使う色彩には何か意味はありますか?
構図は浮世絵、色彩は狩野派、琳派、いわば古典日本美術の大スターを合成したスタイルです。$紙幣はモノトーンで独特の緑味があり、富士山に使う千円札は青味のあるグレー、という風に紙幣の色味にも個性があります。
世界100カ国の紙幣を混ぜて無差別にコラージュして出る色味は、和服の生地の様な鮮やかさが生まれます。世界中の紙幣が集まると暖かい色になるという象徴性が面白く、美しいと思います。
「World Holy Mountain”Zipangu” $Foot B95726720D」¥330,000-
黄金の国Zipanguを金富士で日本の歴史を象徴、世界経済のグローバルな中の日本を明るく展望するイメージを、JAPANBlueの空と世界紙幣の雲で表現しています。
素材はどのように仕入れていますか?
世界中の紙幣を銀行他ネットで仕入れます。新札が多いですが、古い紙幣も混ぜる事で画面に深みが出るので両方を混ぜて使います。100カ国集めるのは大変です。
金銀箔については、出身地金沢の箔専門店から仕入れています。日本美術の伝統を伝え、時代を超える神秘性や信仰を伝える素材です。
絵柄の意味と紙幣コラージュ、金銀箔の相乗効果、和の美学を紙幣と合成した現代性に注目いただきたいです。
百段階段 展示風景
浮世絵紙幣絵画は版画としても展開されていますが、そのきっかけを教えて下さい。
浮世絵紙幣絵画について、美術関係者との会話から版画の構想が浮かびました。浮世絵を絵画にして、また版画に戻すという構造にも面白味を感じました。
そこで、紙幣コラージュで同じパターンが作れない独自の版画を創る事を模索し、印刷した版画の上に本物の紙幣を隠す様に張り込む手法を思い付きました。
¥191,000-, 額付き, 東京オリンピック記念デザイン限定30
2019年GDPランキング5か国の本物紙幣が波の中にランク順に隠されています。
版画に本物の紙幣を貼る手法には、どのような意味が込められていますか?
紙幣は40枚貼ってあります。この印刷(フェイク)の上に本物(リアル)を隠す手法を「カモコラージュ」と称しています。
「本物(紙幣)が何処にあるか探して見ると、なかなか見つからない」そんなフェイクニュースが溢れる曖昧な現代と重ねて「カモコラージュ」で表現したのが、「Realcamo=リアルカモ」シリーズです。
「Realcamoシリーズ」(版画)について、制作の流れを教えてください。
1.完成した原画を高解像度スキャンし、画像データ化します。
2.新しいデジタル原画のバリエーションをパソコンでデザインします。
3.完成後、印刷し、その上にシルクスクリーンで3回シルク印刷をかけます。
4.波と主な線を全てグロスインクを厚盛りして浮世絵のラインを際立たせます。
5.飛沫のゴールドラメ光沢インクを印刷。飛沫の煌めきを金銀が舞い散るイメージでラメコートします。
6.最後に波の中に紙幣を隠します。
本物紙幣を実際に探すのは大変です!貼った後でも見つけ出すのに苦労します(笑)
日本銀行のマークが日本銀行券。本物なのでピントが合うような差があります。
最後に、今回の展示ではどこに注目して観てもらいたいですか?
カモコラージュされた本物紙幣を探して、遊び心と美術鑑賞の狭間を楽しんで下さい。
GDP5カ国の日本は3位です。3番目の高さに千円冊を隠してあります。
百段階段 展示風景
展覧会名: | 「TAGBOAT×百段階段」展 ~文化財と出会う現代アート~ |
開催期間: | 2020年9月11日(金)~10月11日(日) |
開催時間: | 日~木曜日・祝日 10:00~17:00 金・土・祝前日 10:00~20:00 ※入場は閉館の30分前まで |
入場料: | 当日¥1,600/前売¥1,500 ※9月10日まで公式オンラインチケットにて販売 学生¥500 ※要学生証呈示、未就学児無料 |
会場: | ホテル雅叙園東京 東京都指定有形文化財「百段階段」 |
主催: | 株式会社タグボート・ホテル雅叙園東京 |
販売窓口: | ホテル雅叙園東京(当日のみ)、公式オンラインチケット |