2020年9月11日より開催の「TAGBOAT×百段階段」展の会場となるのは、昭和10年の面影を残すホテル雅叙園東京の木造建築「百段階段」です。99段の階段廊下で結ばれた7つの部屋はそれぞれ趣向が異なり、各部屋の天井や欄間には、当時屈指の画家や大工によって創り上げた美の世界が広がっています。
四季草花絵、瑞雲に煙る松原の風景に囲まれた部屋「草丘の間」で縁側を飾るのは、タグボート作家・石井七歩の着物作品です。今回は本展における作品制作について、作家ご本人にお話を伺いました。
百段階段「草丘の間」展示風景
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「色、女、変」の作品はどのようにして思いつきましたか?
「草丘の間」へと足を踏み入れた瞬間、何をするべきなのか感じ取りました。
私自身が思いついたというよりは、場所が、空間が、することを教えてくれたような感覚です。
なぜ着物というモチーフだったのでしょうか?
自然と着物をつくるべきだと思いました。
衣服には、身体を包み、その中で次第に成熟してゆくような、サナギが蝶へと変態するような…。サナギや繭のようなイメージがありますよね。
「色、女、変」¥220,000/枚
作品に赤色を使っている理由はありますか?
体内の色、血液の色、人間の内部のカラーです。それが外部へと滲み出してゆくような…
作品に使っている材料について教えてください。
半透明がうつくしいオーガンジーの生地を選び、自身で着物を縫いました。透明感によって、幽霊のようにかすかな存在感を出したかったです。
その他にはリキテックスのアクリルガッシュとジェルメディウムを使っています。
生地はどのようにして選びましたか?
生地の色選びには実験と時間をかけました。純白や生成りや深紅や…さまざまな色を試し、ブルーグレーを採用しました。
赤色の部分は、平面的でなく、すこし立体感が出るようこだわっています。凝固しかけた血液のイメージです。
制作にとりかかる前に、いつも準備することはありますか?
数多くのイメージを収集し、吟味します。
専門書にあたったり、調査をすることが多いです。図を描いたり先にイメージを決めてしまうとそれに囚われることもあるので、とにかく具体的なイメージを持たないまま考えるということを徹底しています。
今回の制作の流れについて教えてください。
着物のパターンを考えるところから始めました。着物を縫うのは初めてだったので楽しみました。
制作にはどれくらい時間がかかりましたか?
約3週間です。
作品の完成はどのように見極めましたか?
本当は無限に持続できてしまうので、完成はありませんが、いつもタイムリミットで打ち切りになるという感じで残念です。時間的、物理的、空間的なリミットやフレームがなければ一体どうなるのだろう、とよく空想します。
制作中に頭に浮かんでいたことはありますか?
今回は性的なイメージが多かったです。春画に関する書籍を7冊ほど買いました。
好きな作業と苦手な作業を教えてください。
構想を練っている時がいちばん好きです。
丁寧で緻密な作業ができるタイプではないので、丁寧さが要求される工程はたいへん苦手です。
制作におけるこだわりはありますか?
イメージを具現化させたいという強い欲望だけで制作する意思が支えられているので、とにかく最初の構想段階に最も時間をかけています。完成するかどうかのスタミナに関わる重要な要素です。
最後に、今回の展示はどこに注目して観てもらいたいですか?
ぼんやりと全体を眺めて、各々の物思いに耽っていただきたいです。
私の制作したイメージの影響を受けていただきながら、ぜひ、ご自身の世界に浸ってください。
百段階段 展示風景
展覧会名: | 「TAGBOAT×百段階段」展 ~文化財と出会う現代アート~ |
開催期間: | 2020年9月11日(金)~10月11日(日) |
開催時間: | 日~木曜日・祝日 10:00~17:00 金・土・祝前日 10:00~20:00 ※入場は閉館の30分前まで |
入場料: | 当日¥1,600/前売¥1,500 ※9月10日まで公式オンラインチケットにて販売 学生¥500 ※要学生証呈示、未就学児無料 |
会場: | ホテル雅叙園東京 東京都指定有形文化財「百段階段」 |
主催: | 株式会社タグボート・ホテル雅叙園東京 |
販売窓口: | ホテル雅叙園東京(当日のみ)、公式オンラインチケット |