2020年9月11日より開催の「TAGBOAT×百段階段」展の会場となるのは、昭和10年の面影を残すホテル雅叙園東京の木造建築「百段階段」です。99段の階段廊下で結ばれた7つの部屋はそれぞれ趣向が異なり、各部屋の天井や欄間には、当時屈指の画家や大工によって創り上げた美の世界が広がっています。

黒柿の銘木を使用した柱の向こうに緑々しい景色が広がる部屋「頂上の間」で異彩を放つのは、タグボート作家・山口真人のLEDライトを使った作品です。今回は本展における作品制作について、作家ご本人にお話を伺いました。

百段階段「頂上の間」展示風景

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「TAGBOAT×百段階段展」山口真人インタビュー

百段階段に展示されている「City Lights」について、制作のきっかけを教えてください

コロナがはじまった時、身の回りがどんどんデジタル化されていく様子をみていたのですが、ふと車で深夜スタジオから帰っている途中に見えた、マンションや街頭がとてもきれいで、自分達の世界が美しいことに気づきました。その感情を作品にしたいと思いました。

「THE FUTURE MAY BE DIGITAL, BUT OUR WORLD IS STILL BEAUTIFUL（全てはデジタル化されていくけど、うちらの世界はまだまだ美しい）」という詩です。

言葉を扱ったのは、その時の詩的な感情をそのまま表現したかったからです。

看板などに使用されるLED看板を使っています。とにかく強度があり、壊れにくく、屋外でも対応できます。電源をさすだけで自動起動ができ、基本的にプログラムをインストールするだけで本作は動かしています。

機材のこだわりはありますか？

なるべく目の粗い（解像度の低い）ディスプレイを探しました。普段みているスマートフォンはめちゃくちゃ解像度が高いですが、実は小さな光の集合だということを伝えたくて。

今回の制作の流れを教えてください。

まず、小さなLEDを秋葉原で買ってきてテストをしていました。

そして、撮影した動画、プログラムで描いた映像、グラフィック、テキスト、など様々な表現方法を試した結果、一番シンプルなテキストを使うことにしました。

普段の制作においても、余計な要素をとにかくなくすことを心がけています。テーマと関係ないこと、重要ではないこと、そういった作品の要素や、作業工程をなくすようにしています。といっても、ついつい余計なことをしちゃうのですが、我慢するようにしています。

制作にはどれくらいの時間がかかりましたか？

この三作品はなんだかんだ完成するまでに半年ほどかかりました。

作品の完成はどのように見極めますか？

作品が「詩」になっているかどうか。

伝えたい、ということではなく、個人的な感情で完結すればOKだと思ってます。

作品を制作しているときに頭に浮かんでいたことは何ですか？

ほとんどの場合、完成に向かってただ作業をしているだけなので、とにかくミスを起こさない、また偶然生まれるひらめきを逃さないなど、制作のことばかり考えています。

制作の中で、好きな作業・嫌いな作業を教えてください。

完成イメージがあたまに浮かんだ時が一番楽しいです、なので他の作業はどんどん地道な感じになっていきます。台座をつくるために木を切っている時は楽しいです。

大概、作業を始める前はとにかく嫌ですね。。作業しはじめると楽しくなってきます。

最後に、今回の展示はどこに注目して観てもらいたいですか？

今回、雅叙園の空間はまさに「うちらの世界が美しい」空間だったので、背後の空間の美しさが際立つように空間を設計しました。

ちょっと皮肉ですが、デジタルLEDがデジタル空間から「あなたたちの世界は美しいんだよ」というような関係性をつくりました。

アナログとデジタルが共存する空間にギャップを感じるのか、調和を感じるのか、みなさんがこの作品を通して、デジタルとアナログが混在する世界をどう感じるかを体験してもらいたいです。

City Lights Case 1～3, ¥704,000-