制作工程を種明かしする「How to Make」インタビュー。今回はタグボート取扱いアーティストのコムロヨウスケさんにお話を伺いました。
コムロ ヨウスケYosuke Komuro |
今回ご紹介いただく作品について教えてください。
去年作っていた「IU」というシリーズの作品を紹介させていただきます。
コンセプトについて教えてください。
このシリーズは、デジタルによって記号化された世界がコンセプトです。
ネット社会と言われるようになって久しいですが、僕らはリアルな世界でコミュニケーションをとる時間よりも、モニターやスマホというインターフェイスで、アイコンやマークによる非言語のコミュニケーションを行う時間のほうが多くなりました。僕らは記号化された世界で多くの時間を過ごし、自分らの存在すら記号化される過程にいるのです。
そんな社会を風刺すべく、記号で埋め尽くされたイメージを切り刻み、まっさらな空白部分と一松に組み込むことで、記号化された複雑な社会と、何もない無の世界を「010101」というデジタルなパターンで落とし込んだのがこの作品になります。記号化社会の浮世絵図的なイメージです。
制作現場はどのような場所ですか?
自宅の作業場のデスクです。こんなにきれいなのは、先月新しいデスクをセッティングしてすぐに撮影したからです。ここに今は工具やMacなどいろいろ置いています。
普段はデザインの仕事もしているので、デジタルとアナログを横断するように作業をしており、2つのデスクをそれぞれ「デザイン作成」と「アート作成」のスペースに分けて使っています。
あとファブラボ博多(https://fablabhakata.com/)という工房で、レーザーカッターをよく使わせていただいています。
材料はどのようなものを使っていますか?
この作品では、主にアクリル板やアルミ板などを使っています。理由は素材の凹凸がほとんど見えないフラットな部分をいかすためです。
色付けはアクリル絵具やカラースプレー、雑誌の断片や金箔など、様々な素材をミックスし、さらに転写シートを使って、デジタルに処理したものを貼り付けて制作していきます。
制作工程について教えてください。
今回は紺色のアクリル板を使いました(写真の表面が茶色なのは保護シートをつけたままだからです)
アクリル板を持ってファブラボに行き、レーザーカッターで正方形のピースを切り出します。
正方形にカットしたアクリル片の半分を組み合わせて、そこに色を塗っていきます。
軽く色付けして、転写シートでアイコンや数字を転写します。今後どこに何を配置するか下書きをしたりもします。
その上に同じ手順でさらに色や記号を重ねていきます。記号や情報が何層にも折り重なった世界を演出するためです。
途中金箔も織り交ぜ、記号を重ねていきます。
だいぶ重層的な世界になってきました。
最後にメインとなる記号をすべて配置し、イメージづくりは完成です。
このイメージを、元の正方形のピースに分解し、残りのピースと一松模様に組み合わせます。
完成です。
今、作家として伝えたいことはありますか?
僕はもともと家で仕事をしているので、生活自体には大した影響はないですが、コロナ禍で時代が激動している様を見るにつけ、コロナ以前に考えたアイデアが全て古臭く感じ、すべて白紙にしてしまいました。去年の予定では今頃新しい作品をバンバン作っている予定でしたが、まさか世界がこんなことになってしまうとは…運命は面白いものです。なので今は時代や世界の流れをよく見て考える時だと、時間がある時はもっぱら思考や読書の時間にあてています。
作ることはいつでもできますから、この確実に歴史に残るような激動な世界をどう解釈し、どう表現するか、コロナ禍に生きるアーティストとして、のちに自分なりの回答を示せるよう、今は思考していきたい次第です。
これはアーティストに限らず、この時代に生きる一個人として、この変化にどう応えていくかは、万人に課せられたテーマだと思います。なので家にいて時間ができたなら、今後世界がどうなって、どう生きていきたいか、深く考える時間があってもいいんじゃないですかね。
コムロ ヨウスケYosuke Komuro |