制作工程を種明かしする「How to Make」インタビュー。今回はタグボート取扱いアーティストの濱村凌さんにお話を伺いました。
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今回ご紹介いただく作品のタイトルを教えてください。
今回は「たとえ空が赤くなっていたとしても、僕らは気づかない」という絵画作品についてお話します。
私は一貫して「人が人と関わった時に生じる間」を作品のテーマとしています。そして、その時に表現したい内容に応じてモチーフを選んでいますが、こちらの作品では新型コロナが原因として突然変化した、「人が人と会わずに関わった世界」を下敷きに制作を進めました。
「たとえ空が赤くなっていたとしても、僕らは気づかない」濱村凌, 727×910mm, 2020, ミクストメディア
この作品を作ろうと考えたきっかけは何ですか?
やはり、日々の生活の仕方が突然ガラリと変わったことが大きかったですね。外に出ない生活を続けて、2週間ぐらいたった頃にふと思ったんですよ。
あぁ、最近空を見てないなぁ、って。空を見ていないから上を見上げてもいない。それどころか、スマホばかり見て、顔が下をよく向いているって。
それがキッカケでしたね。
「作品制作のためのアイデアメモ」こういったメモ書きはカフェなどでよく行う
それからZoomやラインなどで、誰かと声を出すコミュニケーションを取ろうとするのですが、いまいち間がとれない。だからか、どこか事務的に聞こえる会話に感じる。
僕は人と会えていないと強く感じて、それはそうなんだけど、人と会いたい。でも会えない。。。
だから、筆をとりました。
制作はどのように進めましたか?
まずは自分が何を感じているのかを丁寧に掬い上げることから始めました。ただ自分が抱いている感情をいきなり言葉にしては、本当に大切な細やかなことがこぼれ落ちてしまいます。だから、まとめることよりも、羅列していきました。単語と感覚を。
そして少し時間を置いて熟成させて、今度は好きな音楽が今はどう聞こえるか確かめて、羅列して。そんなふうに少しずつ項目を変えながら、羅列と熟成を繰り返して、固めていきました。
「現在使用しているメモ書き用のノート」小さめで軽く、100年後も保存できる紙で作られている
作品のイメージが65%くらいあらわれたところで、腰をあげてイーゼルに向かいました。そして、いざ筆を持って画面に向かえば、少しの迷いもなく一気に描き進めます。
その様子は語るより見せた方が伝わるかと思って、短い動画にしました。ご覧ください。
外出自粛期間を終えて、変化したことはありますか?
まず自分自身が変わったと感じています。これまでにない「非日常の日常」を3ヶ月以上、強制的に体験したことで価値観やモノの捉え方にコペルニクス的転回が起きたなと。まだ具体的にどこがどう変化したかは、言葉にはできないのですが、既に作品や作家活動の動き方などに顕著に現れてきています。
今後はどのような制作・活動に取り組んでいきたいですか?
作品制作に関しては、より今の時代性が反映された作品が増えてくると感じています。新型コロナによって、これまで捉えていた「世界と自分との距離」が近づいた感覚があり、それは日に日に実感が大きくなっています。
作家活動に関しては、これまでもそうでしたが、この私のアートの才能や能力は私自身の欲を満たすためのものではなく、社会全体や未来のアート業界、手の届く方々のために使っています。そしてその想いは今回のことで、一気に強くなりました。
今後は、業界の境界を今まで以上に超えて、アートによる価値を届けていきます。そこでは、ただアート作品を見せるだけではなく、しっかりとした経済的価値も生み出すことで持続性と未来のアート業界へバトンを渡せるように動いていきます。
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