制作工程を種明かしする「How to Make」インタビュー。今回はタグボート取扱いアーティストの今関絵美さんにお話を伺いました。
今関 絵美Emi Imazeki |
今回ご紹介いただく作品について教えてください。
キャンバスに油彩で描いた『Magic hour -boat-』という作品です。
私は時空間について作品をつくっているように思うことがよくあります。 今回の作品もある時間についてだったり、描いてみたら海なのか、川なのか、湖なのか、場所や時代もよくわからない作品になりました。
開放的だけど、静かな気持ちになれる水辺のモチーフを選んだのは、外出自粛期間に制作したからかもしれません。
この景色は何から着想を得ていますか?
旅行に行ったときの景色です。わたしは旅行に行くのも好きなんですが、これを作品にしたらどうなるかという目線で旅先でもいろんなことを見ています。
制作現場はどのような場所ですか?
自宅のスペースで描いています。
制作現場で困っているはことはありますか?
大きめの絵を描きたい時に、スペースが狭いことです。離れて見たいので場所を移動して見たりしています。
作品に使っている材料はなんですか?
ホルベイン アクアオイルカラー デュオです。水溶性の油絵具です。
水溶性の油絵具を選んでいる理由はなんですか?
制作現場に外に面した窓がないこともあり、油絵具が好きなんですが、においも強いですし、揮発性の材料など使うと息苦しくなるので、今はこちらを使っています。
その絵具で気に入っている点はなんですか?
従来使っていた油絵具とそれほど変わらず使えて、水にも油にも溶け、においもあまりしないところです。
制作にとりかかる前に、準備することはありますか?
資料となる写真やモチーフを手元に置き、簡単にエスキースを描いて、なんとなく何から始めるかくらいを考えます。
制作にかかる時間はどれくらいですか?
今回の作品は、描いている時間だけだと11、2時間だと思います。期間的には2週間くらいかかっています。
材料の準備をしたり、眺めたり、考えたり、撮影をしたり…描いている時間以外に多くの時間を使っているように思います。
作品の完成はどのように見極めますか?
これ以上手が入らないと思ったらなのですが、形としては途中に見えたとしても、何かが十分…と思ったら終わりにします。
制作中はどのようなことが頭に浮かんでいますか?
頭に浮かぶ感じではないのですが、心や体が納得している順番を今この瞬間に、と指示が来る感じです。
今、作家として心掛けていることはありますか?
情報をあまり入れ過ぎずに、やりたいと思うことを少しずつやっていくことです。 日常生活も含めて、あまり考え過ぎると形になっていかないので、不安な要素があるならできる範囲で対応して、あとは目的のあることを細切れにして、それができていくたびに(できなくても)嬉しく感じながらやっているように思います。 そうすると、何か月かかかると思っていたことも、いつのまにかできていたりします。
今回制作の様子を動画で撮ってみたのですが、動画だけは作らないだろう…と苦手意識があったのですが、やってみると面白かったです。
今、作家として伝えたいことはありますか?
今回のことで現実の世界も何が本当のことなのか、自分にとってリアリティがあることなのか、わからなくなった部分もあるかと思います。むしろアートの世界に自分のリアリティを感じることもあるかもしれません。
ニュースを見過ぎた後に絵具を触ると、そういえば私の感覚はこうだったと思い出します。 アートがいいなと思えるのは、立場や肩書き、年齢・性別・国籍や、時代や場所によって変わる正しさを越えたところにいる自分を思い出せるところです。 何が好きか、嫌いか、心地よいと思うか、不快に思うか…いろんな感覚や意識には、それぞれの人にとってのリアリティがあると思います。
ぜひ興味を持ったアートや、感覚を使う何かに触れて、バランスを大事にしながら自分が誰なのか思い出す機会になればと思います。
今関 絵美Emi Imazeki |