制作工程を種明かしする「How to Make」インタビュー。今回はタグボート取扱いアーティストの太田剛気さんにお話を伺いました。太田剛気は1991年に東京で生まれ、2021年に東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻版画研究分野を修了したアーティストです。彼は完全オリジナルの架空国家の歴史に基づいた作品を展開し、教科書や絵本、絵画などのメディアを使用して表現しています。彼の作品は緻密で壮大な世界観から成り立ち、想像上の歴史を客観的かつ体系的に提示しています。
作家はtagboat Art Fair 2024(2024年4月26日-28日開催)に出展予定。
太田剛気 Gouki OTA |
《はる姫》2024
その作品のモチーフを選んだ理由はなんですか?
今回私は、肖像画を描きました。肖像画は絵画の花形であり、伝統でもあります。現代の画風でそんな肖像画を描くことに意味があると考え、題材として選びました。
その作品に使っている材料はなんですか?(素材の種類、メーカーなど)
カンバスにアクリル絵の具で描いています。カンバスは、アクリル絵の具・油絵の具両用の中目の画布のものを使用しています。アクリル絵の具は、ターナーさんから発売されている「U-35」という絵の具を使っています。
《使用しているアクリル絵の具「U-35」》
その材料を選んだ理由はなんですか?
カンバスに絵の具という表現方法が一番好きだからです。
その材料で気に入っている点は何ですか?
カンバスについては、やはりデジタル制作や紙などの支持体とは違う描き心地が特筆すべき点と言えます。カンバスに絵の具で描く時の、何と言いますか心地よさみたいな感覚は、ほかの支持体では味わえないものだと思います。この点は、カンバスによる絵画制作の魅力の一つと断言できるでしょう。
絵の具、すなわち「U-35」については、油絵の具で描く時と非常に近い感覚で制作できる絵の具である点を挙げたいと思います。私がそもそもは大学の油画専攻出身なので、どうしても油絵の具基準で絵の具について考えてしまうのですが、「U-35」は発色やツヤといった絵の具の質に関わるあらゆる点が、油絵の具による制作を思い起こさせてくれるのです。具体例は枚挙に暇がありませんが少しだけ挙げるならば、「バーントシェンナの使い心地が油絵の具のそれととても近い」ことや「カドミウムレッドが乾燥した後もカドミウムレッドの発色をしっかりと保つ」ことなど、それまでのアクリル絵の具での制作ではあまり感じなかったことが感じられるところがすばらしいと思います。
こうした文章を書いているとまるで「U-35」の宣伝をしているかのようになってしまいましたが、それだけ衝撃的な絵の具であったということです。
その作品の制作にとりかかる前に、準備することは何ですか?
ドローイングを念入りにします。自分で創作した歴史の中の人物のイメージを膨らませつつ、しかし造形として美しくなるような、そんな姿を描けるようドローイングの段階で念入りに準備しています。
《自作の歴史の中の人物のドローイング》
その作品は、どのような手順で制作しましたか?
グリザイユ技法(※)という古典的な絵画技法で制作しています。
※グリザイユ技法とは、最初にグレースケール(灰色)で陰影だけを塗り、後から重ねて色を乗せていく技法のこと。
そのような手順になった理由はどうしてですか?
絵柄がデフォルメされたイラストレーションなので、絵の技術的な構造は伝統的な古典技法で制作した方がよいと考えたためです。
その作品を完成とするのはどのような形になったときですか?
これで決まりと思えた時です。
《自作の歴史の中の人物のドローイング》
その制作工程でこだわっていることは何ですか?
絵柄がシンプルな分、色・構図・絵の具の重なりといった造形的な部分はシンプルにならないよう細心の注意を払っています。
その作品はどこに注目して観てもらいたいですか?
絵画について詳しくない方は絵柄で楽しめて、詳しい方なら造形的にも楽しめる作品をつくったので、ぜひそうしたところに注目して観ていただきたいです。まずは、ぱっと見で絵柄のゆるさやかわいらしさといったところが伝わるとうれしいです。その上でよくよく見てみると、ここまでの文章で話したような造形的なこだわりが少しでも伝わってくれればさらにうれしいです。
全力で制作した作品です。ぜひ、ご覧ください。
4月開催のtagboat Art Fair 2024に出展されます!
■今年で4回目の開催!単独ギャラリー世界最大級の規模によるアートの祭典
■ゲストアーティストに注目!
■展示作品はオンライン購入可能!ご自宅でもアートフェアを体感
※会期初日4月26日(金)16:00-20:00は会場限定販売となります。オンライン販売は同日22:00より開始予定です。
〈開催日時〉
2024年4月26日(金)16:00~20:00 ※26日はご招待のお客様のみご入場いただけます
2024年4月27日(土)11:00~19:00
2024年4月28日(日)11:00~17:00
〈入場料〉
1500円
※障害者手帳をお持ちの方はご提示でご本人と付き添いの方1名まで(計2名)無料
※学生の方は学生証のご提示で無料
※小学生以下の方は無料
〈会場〉
〒105-7501
東京都港区海岸1-7-1 東京ポートシティ竹芝
東京都立産業貿易センター 浜松町館 2F,3F
太田剛気 Gouki OTA |
Profile
1991年 東京都生まれ
2019年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業
2021年 東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻版画研究分野修了