ひとつの人物像につき24時間という枠組みの中で木を彫る古西穂
撮影:松本隆
古西穂波 Honami Konishi |
ーものづくりを始めたのはいつ頃ですか?きっかけはありましたか?
幼少期から自然の中で遊んだり、様々なメディウムに触れ、作る感触で癒されたり、発見をしていくことが楽しく、高校では美術科に入りました。
そこで初めて水粘土でアバタのヴィーナスの模刻をして、彫刻に興味を持ちました。
ーアーティストを目指そうと思ったのはいつ頃ですか?きっかけはなんですか?
美術館やギャラリーによく行っていたことで、 立体作品に惹かれていきました。
そして実際に大学で彫刻を学び、美術の歴史の流れと共に捉えられ方が変容してきた素材である木に魅力を感じ、木を素材として作品を作り続けたいと感じるようになりました。
撮影:松本隆
ー作風が確立するまでの経緯を教えてください。
24hoursシリーズは学部3年生のころから制作している作品であり、他者と自分の関係や、通りすがりのもう会えない人のことを考え、その日のうちに形に留めておきたいというコンセプトで制作を始めました。
そこから最近では、マスクをしている人が増え、表情が読み取れないことからドローイング的にその人の雰囲気や、印象を形にするという展開の仕方に変化してきています。
同じ対象の人物を見ていても視点は異なっているため、自分の意識の中にある他者は第三者にとっては違うという印象のズレが起きていたりします。
記憶の底にあるような形を木を彫っていく中で発見し、取り入れて制作しています。
「24hours」 シリーズ
ー 作品を発表し始めたのは何時頃ですか?発表するまでにどういった経緯がありましたか?
初めて学外の展示をしたのは小平アートサイトという野外展で、東京都の小平中央公園で展示しました。
居住空間をコンセプトとした作品を展示し、子供からお年寄りまで幅広い年代の方に見ていただけました。
自身の作品の出展だけではなく企画、運営まで担当し、大学内だけでなく、外部からも出展者を募り、大規模な展示になりました。
ーアーティストステートメントについて語ってください。
都市から建造物、人、その人の内面というように、日常でのある存在の解像度が上がっていくような感覚を取り入れ、彫刻を制作しています。
また、素材としている木は日本ではアニミズムが古くから広く信じられ、仏像が作られて信仰の対象となりました。その後明治になると廃仏毀釈運動が起こり、衰退していきます。以後、木彫作品の展覧会への出品が盛んになり、信仰の対象から鑑賞の対象へ大きく転換しました。このように美術史において木は時間の流れから捉えられ方が変容してきた歴史があります。
木が様々なイメージを潜在し重層的なレイヤーとなっている事と、匿名の存在をモチーフとして視点をずらしていくと、人物像や風景の見え方が変わり変化していくことが相互に関係し合うと考えます。
人に出会い、その人の内面を知って見え方が変化していくようなミクロの視点からマクロへの拡張、または相互転換を模索しています。
SICFでの展示の様子
ー作品はどうやって作っていますか?技法について教えてください。
製材したブロック状の木から色味、硬さなど、対象に合わせ選んでいます。
その後、チェーンソーで大きく落としていき、鑿や彫刻刀を使い、細かい部分を彫っていきます。
ひとつの木材から像を丸彫りする一木造りで作っています。
ー作品制作で困難な点や苦労する点を教えてください。
無垢材なので割れが入ってしまったり、思わぬところに節があったりします。そのように彫るのが難しい木の場合、時間がかかってしまうこともあります。
また着彩では様々な研究を重ねて、混色しています。混ぜ合わせるオイルと絵の具の種類や量の配合を考えたり、色を重ねて塗ることの工夫をしています。
Bit,She
Bit,Twin
ー今後の制作において挑戦したいことや意識していきたいことを教えてください。
今後は様々な場所で発表を続け、多くの方に作品を見ていただきたいです。
いつか「24hours」シリーズの点数を増やしてギャラリーの壁一面に展示したいと思っています。
作品を作ること以外では、本を読んだり様々な場所に出かけてインプットを増やしたいです。
今後も、何気なく過ぎる日常の背景に流れる思いや人々の関わりを形にし、日々の営みとしての作品を制作していきたいです。
古西穂波 Honami Konishi |
1996兵庫県神戸市生まれ
2020武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒業
2021武蔵野美術大学大学院 美術専攻修士課程彫刻コース 在籍
展示歴
2018 「二彫展」武野美術大学、東京
「武蔵野美術大学オープンキャンパス」武蔵野美術大学、東京
2019「くうかんとりっこ」武蔵野美術大学、東京
「小平アートサイト:よりみち芸術」 小市中央公園、東京
2020「逸脱展」武野美術大学、東京
2021 「PEACEFUL展」石川画廊、銀座 東京
「コンシン展」gallery UG、馬喰町 東京
「SICF22」スパイラル、南青山 東京
「through me,through you」 Gallery T-space、品川 東京
「Any Kobe with Arts 」ダルビッシュコート、神戸 兵庫
受賞歴
第56回神奈川県美術展 奨励賞
Any kobe with Arts 2021 入選