タグボート取り扱いアーティストの皆さんに、インタビューに答えていただきました。
作品制作にまつわるあれこれや、普段は聞けないようなお話などが満載です。
毎週更新していきますので、ぜひぜひご覧ください!
小さい頃から絵を描くのが好きでしたか?
絵を描くというより、物を作ること全般好きでした。
「砂場で立派な山を作る」ことから「秘密基地を作る」まで好奇心旺盛な子供時代でした。目の前は海、後ろは山に川、家にはたくさんの機械と車、という遊び場に事欠かない環境だったので、家で黙って絵を描くというより、外で遊ぶことの方が多かったように思います。
美術の道に進むことになったきっかけは?
「物を作ること以外、人より出来ることかなかった」からです。
子供の頃は、大人になったら得意なことを仕事にして生きていくものだ思っていて、だとしたら私は物を作ることしか他にないだろうと。
その後迷うことなく美術系の高校に進学し、デザインの専門学校でグラフィックを、大学でファインアート学び、現在に至ります。
人形町の旧tagboat Galleryにて 展覧会のトークショー (2018)
初めて作品を発表したのはいつ、どんなときですか?
19歳の時に福岡のギャラリーで個展を開いて頂きました。
当時は彩度の高い毛糸を隙間なくパネルに貼り付けていく作品を発表していましたが、その頃から現在にもつながる「集積」に強い関心があったのだと思います。
1ヶ月半という短期間で大きな作品を7点ほど作り上げたせいで、展示が終わった瞬間に倒れてしまったことも含めて、良くも悪くもいい経験になりました。
制作する日はどのようなスケジュールで進めていますか?
展示の予定日から逆算して制作スケジュールを組んでいきます。
日々の作業スケジュールは前日の夜にToDoリストを制作し、翌日はそれに沿って進めています。調子が出るまでは簡単な作業をしてテンションをあげていき、集中力を高めてます。作業場の近くに大きくて気持ちのいい川が流れているので、煮詰まると散歩をして気分転換したり、頭を整理したりしています。
作品の制作手順や方法などを教えてください。
・制作手順
コンセプトを軸に展示ごとにテーマを決め、情報を集めたり、取材に出かけたりして内容を固めていきます。大まかに構成を作ったら、現在の作品の大半を占めているボックス型の作品のための額の準備に入ります。簡単な図面を引き、職人さんと相談しながら発注をかけていきます。後はアクリル板の発注、塗装、描画、組み立てで作品の完成です。
・主な作品の構造
アクリル板への描画はリューターというペン型の機械を使用し、削っています。クリアのアクリル板に表と裏に描画して2層、それを3枚重ねて6層となり、更に奥にミラーを置くことで層は倍に、計12層のボリュームを感じることができます。
現在のボックス型のシリーズは主にこの構造で制作されています。
現在、力を入れて取り組んでいること
今までボックス型の作品を中心に制作を続けてきましたが、この形態が私のコンセプトに対して本当にベストなのか、他にも方法はあるはずだ、という気持ちが強くなり、毎日あれこれ試して続けています。昨年末の個展では、描画したアクリル板や様々なマテリアル、過去作に光を当て、反射させたり、陰を出しりして空間構成した作品を発表しました。組み立てていく中で、ふと「私は今、空間にドローイングをしている」と開放感を得ました。そこからボックス型の作品と並行して、ドローイングをする時間が増えています。ドローイングはほぼやらないタイプだったのですが、これは手で思考する手段なのだなとその重要性に気づき始めたという感じです。本当に今更です。
しばらくは描くことでじっくり頭の整理をし、次の表現を見つけて行こうと思っています。何が見つかるのか、楽しみです。
将来の夢、みんなに言いたいこと
「人と積極的に関わること」と「より良い表現方法を見つけ続けること」
3年前、Tagbort Awardで賞をいただいたことをきっかけに、作家としての本格的なキャリアがスタートしました。実制作を7年ほど離れて、復帰2年目くらいだったと思います。がむしゃら走っていく中で、どうにも自分の力では解決できない壁にぶつかる度に、たくさんの人に助けられてきました。それは困っていたから助けられたというだけではなく、作品を通して出会った方々とのやり取りによって、気づきが生まれ、作品がどんどん豊かになっていくことでした。それはちょっとどうかしら、、と思うアイデアも、一旦やってみると面白いほど良い違和感が生まれてきたり、自分の頭では解決しなかったことが瞬間で解決したり、発見と感動がたくさん生まれました。
一人黙々と制作することしか知らなかった私には、大きな力を手に入れたと思ったし、なんでもできるのではないかとすら思っています。人と関わることの面白さを知った数年でした。
自分が「見たい」作品を作りたい。
私の1番の原動力は「見たい」から「作る」というシンプルなことなのではないのか。
作品ができるたびに達成感とまだ良くできたのではないかという気持ちが押し寄せてきます。それでもベストを尽くし、一歩でも先の「見たい」作品に近づけるよう、これからも制作に邁進していきたいと思います。
そしてまた、たくさんの人と出会い、作品と私自身が変化していく未来を思い描いています。
1983 長崎県生まれ
2009 東京造形大学美術学部絵画科中退
東京在住
□ 個展
2002 -pre TOKAY GECKO AWARD-
「innocent」 GALERIE RECOLTE(福岡)
2007 「リトルカオス」 cafe NEUTRAL+(長崎)
2015 「永遠の中に一瞬があるのか、一瞬の中に永遠があるのか」PUBLICO(長崎)
□ グループ展
2004 cafe week 2004 「espace exhibition」 cafe espace(長崎)
2005 「DISCOVERY 2005」 KEY gallery(東京)
2007 「鬨の声-ときのこえ-」 喫茶 あちゃ(東京)
「絵画科大博覧会」東京造形大学内(東京)
2008 「LIFE WORK」東京造形大学内(東京)
「Futari.」吉野純粋蜂蜜店のギャラリー(東京)
2014 パレットクラブ卒業制作展(東京)
「journey」ペーターズギャラリー(東京)
「GOMOKU」cafe&gallery Patina(東京)
2016 11th TAGBOATAWARD(東京)
TAGBORT ART FES 2016 Independent(東京)
shonandai project “WILL” shonandai MY gallery(東京)
2017 12th TAGBOAT AWARD(東京)
□受賞
2001 アジアデジタルアート大賞展 カテゴリーB 大賞受賞
2016 11th TAGBOAT AWARD 審査員特別賞塩入敏治賞受賞
2017 12th TAGBORT AWARD グランプリ受賞