11月29日(金)より開催する3人展「New Eden」に出展する秋山あいれ。幼少期に画家の祖父から影響を受け、創作を始めた秋山は、人間の欲望や葛藤をテーマに、古典絵画の重厚感と現代的な解釈を融合した作品を展開しています。今回は、創作のきっかけや歴史的・現代的なモチーフの選び方などをお聞きしました。
秋山あいれ Aire Akiyama
1999年 神奈川県出身
2023年 多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業
【展示】
2019年
原宿デザインフェスタギャラリー『三人展』
2023年
THE BLANK GALLERY 『EPIC PAINTERS vol.12』
博多阪急『ART HAKATA by tagboat』
2024年
大丸東京店『tagboat ART SHOW』
― 作品をつくりはじめたのはいつ頃ですか?きっかけはありましたか?
父方の祖父が画家だった影響で、幼少期には玩具やゲーム機よりも大量に与えられた画材が遊び道具となりました。流行していたおもちゃにはあまり興味を示さず、常に何かを創り出していた記憶があります。さまざまな楽器やスポーツを経験する中でも、唯一飽きることなく続けてきたのが絵であり、これが今に至る原動力となっています。
― アーティストを志したきっかけは何でしたか?
幼少の頃から創作活動を続けていくうちに、何かを表現し後世に残すという行為は、世の中に存在する生物の中でも人間だけに与えられた唯一の特権なんだと強く感じるようになりました。
これがアーティストを志すきっかけです。
― 作風が確立するまでの経緯を教えてください。
数年前までは、グラフィック的な要素の強い絵を描いていましたが、そこから少しずつ変化を試みました。次第にグラフィック的な要素を残しつつも、あえて重厚な油絵を用いたり、題材を深層的なテーマにしたりと試行錯誤を重ねる中で、最終的に古典絵画に辿り着きました。ただ、現在の表現もまだ発展途上であり、もっと優れた表現方法があると考えています。
― 作品における伝統的な要素や現代的な解釈について、どのようなバランスを意識していますか?
私の作品においては、伝統的な要素と現代的な解釈が共存するようなバランスを意識しています。古典的なモチーフや技法を尊重しながらも、それを単なる再現にとどめず、現代の視点から新しい意味や感情を引き出すことを目指しています。
古典絵画の持つ重厚感を基調としながら、そこに現代的な表現を取り入れて緊張感を和らげ、伝統と軽やかさが共存する、独特なバランスを目指しています。
― アーティストステートメントについて教えてください。
18世紀以前の絵画を意識した重厚な描写と、エッジの効いた線描が織り交ぜています。この対照的な二つの要素が共存することで、温度差やわずかな違和感を感じさせ、表層と深層の乖離といった、人間の意識が抱える底知れない部分を浮かび上がらせることを目指しています。矛盾する要素の共存は、視点によって全く異なる風景を見せるものであり、どちらか一方に偏る危うさや、枠に収めようとする無意味さを、作品の中で暗示的に伝えています。
― 作品はどのように制作していますか?技法について教えてください。
モチーフは古典的ですが、技法は現代的かつ比較的新しいものを取り入れています。制作時間の制約もあり、速乾性と発色の良さからアクリルを主に使用しています。また、グリザイユ技法やグレージング技法を用いることで、微細な陰影を生み出し、複層的な質感を追求しています。
古典と現代の技法を融合させた表現を目指しています。
― 歴史的・文化的なモチーフを選ぶ際の考え方や、その背景について教えてください。
古典絵画は具象的な描写や空気感を通して、その時代のリアルを感じ取ることができます。私のコンセプトである人間の潜在意識に関わるテーマとも深く合致しており、古典絵画の持つ現実感が私の作品にも影響しています。とはいえ、歴史的・文化的なモチーフを意識して選ぶというわけではなく、視覚的に惹かれるものや好みに合う要素を基準に選んでいます。その結果として歴史的・文化的な背景を持つものが多くなっているだけで、直感や美的な感覚が基準となっています。
― 今後の制作において挑戦したいことや意識していきたいことを教えてください。
絵を描いていると、常に自分自身と向き合っている気持ちになります。見たくもない、認めたくもない今の自分が、ずっと脳裏にちらついているのです。その現実感を、作品にもっと表現していきたいと感じています。
― グループ展「New Eden」では、どのようなコンセプトで展示プランを構成されましたか?
『New Eden』では、自分自身の理想とする“都合のいい楽園”をテーマにしています。この楽園は、現実の複雑さや矛盾を排除した、理想的でありながらも自己中心的な空間を描いています。伝統的な典絵画のモチーフを再解釈し、そこに現代的な視点を加えることで、鑑賞者にとっても共感しつつ、どこか違和感を感じるような世界観を表現しています。この“都合のいい楽園”を通じて、理想と現実の間で揺れ動く人間の欲望や葛藤について考えるきっかけを提供できればと考えています。
秋山あいれ Aire Akiyama |
「New Eden」
2024年11月29日(金) ~ 12月21日(土)
営業時間:11:00-19:00 休廊:日月祝
※初日11月29日(金)は、17時オープンとなります。
※オープニングレセプション:11月29日(金)18:00-20:00
入場無料・予約不要
会場:tagboat
〒103-0006 東京都中央区日本橋富沢町7-1 ザ・パークレックス人形町 1F
tagboatのギャラリーにて、現代アーティスト秋山あいれ、岩岡純子、久木田大地によるグループ展「New Eden」を開催いたします。「New Eden」では、西洋絵画の伝統的な技法や具象的な表現を現代アートのコンテクストに落とし込みながら新しい表現を追求されているアーティスト3名の作品を展示いたします。