
月乃カエル

プロフィール
月乃カエルの世界は「見えない階層」でできている。
作品には人間の文化から生まれた記号や模様、建物が立ち並び、そこではゾウやイルカや人、様々な生き物が
共に生命を営んでいる。
光を通す透明樹脂や、光を集めるラメやラインストーンが散りばめられ、生き物の多様性を保つ理想郷のように、
バラバラな素材たちが個々の魅力を発揮して一つの世界を創り上げている。
そんな月乃カエルが描き出す世界は、生き物たちが個々に「見る」世界の集合なのだ。
ゾウは人間より遥か高いところから世界を見渡し、イルカは深い海の中で音波を使って周囲を認識する。
同じ大地で生きていても、あらゆる生き物はそれぞれ違った見え方で世界を捉えている。
月乃カエルは、そんな生き物の意識や感情の重なりを描き出し、
光を透かして人間には「見えない」世界を覗かせてくれる。

作品を作り始めたのはいつ頃ですか?
高校の頃、市内の西側に住んでいた私は、東側にある高校に通っていました。
一年のときにクラスメイトに誘われて入った美術部には、卒業まで、ほとんど顔を出すことはありませんでした。
小さい頃から絵を褒められるのが嬉しくて絵が好きになったのに、年を経ると「褒められる」ことよりも、
成績のほうが価値が高く思うようになり、美術部に入ったものの知識や技術に長けた同級生の中で、
なんとなく気後れして、自分にはそれほど才能がないのかも、と、思うようになりました。
結局、美術と関わったのはそこまでで、大学を卒業して会社員となり中間管理職になって、
40代なかばで体調を崩し半年間休職するまでまともに絵を描くことはありませんでした。
休職中に突然絵を描き始めたのは、かねてから時間ができたら絵を描きたいと思っていたのが前倒しになっただけで
特別な意味はありませんでした。
なので、ここで描いた絵をキッカケに作家活動が始まるとは、この時は全く想像していませんでした。

現在の作風に至るまで、どのような試行錯誤を重ねてきましたか?
40代なかばで最初に描いた作品は、モノクロのペン画でした。
後から彩色しようとしたところ細かくて塗り切れず、またやり直しがきかないところから、
デジタルイラストに切り替え、カラフルなポストカードやポスターを作っていました。
しかしながらデジタルイラストだと一点物の作品になりにくいのと、
子供のころにもっと紙工作を作りたかったという想いから、シャドーボックスのような半立体を作り始めました。
レジンという素材に出会ったのはその二年後。
レジンを階層化して水の中で泳ぐ金魚を立体的に描く作家さんの動画を見て、自身の作品に応用できると考えました。
そこから、現在のデジタルで描いたイメージをプリントし、カットし、
異素材も含めてレジンによって何層にも重ねることで構成する作風が確立していきます。
レジンで作品を覆うのは、作品に込めた記憶や感情を留める行為でもあります。
目に見える物質の層、その奥に沈殿する記憶や感情、さらにデジタルデータや情報として存在する不可視の層。
それらは互いに重なり合い、私たちの現実を形作っています。
レジンという透明な素材を、記憶や感情を保存するための媒体として捉え
固めるという行為は、時間の中で流れ去るはずの感情を留め、可視化する試みです。

作品に共通するテーマやコンセプト(アーティストステートメント)について教えてください。
月乃カエルは、デジタルイラストを起点に、透明樹脂や異素材を物理的に重ねることで、
多層的な視覚と感覚の体験を生み出す作品を制作しています。
デジタルとアナログ、平面と立体、現実と空想といった相反する要素を融合させながら、
ひとつの視点では捉えきれない曖昧で豊かな世界を立ち上げていきます。
作品における「層」は、単なる視覚効果ではなく、記憶や感情、時間の重なりを象徴するものです。
作家名としての「カエル」は、水と陸という異なる世界を行き来する存在に由来しています。
それは、現実と想像、内面と外界、過去と現在といった境界を自由に往還する視点であり、
私自身の制作における立ち位置そのものです。
「月乃カエル」という名前は、異なる領域をつなぎ、重ね、
響き合わせる媒介となる存在でありたいという思いを示しています。
月乃カエルの作品は、社会批評やアイロニーを前面に押し出すのではなく、
感覚や記憶といった普遍的な領域に立ち返ることで、世界を肯定的に捉え直そうとする試みです。
明確な答えや物語を提示するのではなく、鑑賞者がそれぞれの経験や感情を重ねるための「余白」を大切にしています。
変化と多様性に満ちた現代において、層を重ね異なる要素を響き合わせることで、
やさしく、明るく、少し不思議な未来の風景を描き続けていきたいと考えています。
今回、「tagboat Art Fair 2026」に出展される作品について教えてください。
背景に金属箔を使うことで余白上のレジンの美しさを、よくご覧いただけるかと思います。
また、市販のデコパーツやネイルパーツを配置している作品もあります。
これらの異素材と月乃カエルオリジナルのデジタルイラストがレジンによって一体となった、
見たことのない世界観をお届けします。

作品を見る人に、「これを感じてもらえたら嬉しい」というポイントがあれば教えてください。
月乃カエルの作品は、画像だけでは伝わらない、是非肉眼でご覧いただくべき作品といえます。
見ていただく際には、全体をご覧いただいた後、近くからもご覧ください。様々な発見があります。
また、正面、斜め、真横からご覧いただくと、より一層楽しんでいただけると思います。
そして最後にまた、作品全体をご覧いただけると、最初に見た時とは違った感覚を抱いていただけると嬉しいです。

今後の制作において挑戦したいことや意識していきたいことを教えてください。
三年前に心臓の手術を受けました。
人工心肺に繋いでの手術になると伝えられた時には、
手術後に今まで通りに作家活動が続けられるかどうかと不安でしたが、
五時間半に及ぶ手術を終えて目が覚めた時には、アートの神様に「この仕事を続けていいよ」と言われた気がしました。
自分の命は、いただいている命だという感覚も芽生えました。
還暦過ぎにボーナスのように貰った命であるならば、尽きるまで作家でありたい。
それ以来、一日でも長く制作を続け、一人でも多くの方々に作品を届けたいと思っています。
4月24日(金)ー26日(日)開催:tagboat Art Fair 2026

「tagboat Art Fair 2026」
会期
2026年4月24日(金)ー26日(日)
詳細日時
・Preview -会場限定販売期間-
4/24 (fri) 16:00 – 20:00
・Public View -オンライン同時販売-
4/25 (sat) 11:00 – 19:00
4/26 (sun) 11:00 – 17:00
※3日間どなたでもご来場可能です
会場
東京都立産業業貿易センター浜松町館 展示場2階
〒105-7501 東京都港区海岸1-7-1 東京ポートシティ竹芝
JR/東京モノレール 浜松町駅(北口)から徒歩5分
ゆりかもめ 竹芝駅から徒歩2分
都営浅草線/都営大江戸線 大門駅から徒歩7分
チケット代
1500 円(会期中再入場可能)
※障害者手帳のご提示でご本人様、付添いの方1名まで無料
※学生証のご提示でご本人様無料
※小学生以下のお子様は無料